第8話 決意

アスカはベッドの上でうずくまっていた。
『なんで・・・なんであんな話聞かされなきゃならないのよ・・・・』
彼女の口から嗚咽が漏れていた。

 

アスカを追いかけ、ドアの前まで来ていたミサトにも、彼女の声が届いていた。
『このままじゃ、いつまでたっても同じことの繰り返しね・・・』
そう思ったミサトは、とっさに言葉をつむぎだしていた。
「アスカ・・・あなたはシンジ君に何を望むの・・・?」
しばしの沈黙。
「あなたはどう思ってるか知らないけど、私はあなたたちに幸せになって欲しいだけ。
・・・過去に縛られる必要はないのよ。」
ミサトはこう言うと、アスカの部屋から離れた。
『後はシンジ君ね・・・』

 

 

「ただいまぁ。」
シンジが買い物から帰ってきた。
「あれ?アスカはどうしたんですか?」
「うん、ちょっちね。そんなことより、早くご飯作ってよ。」
「ご飯はいいですけど、また日向さんに仕事押し付けてきたんですか?」
「・・・・ひどい。シンジ君までそういうこと言うのね。」
ミサトの言葉を聞き終えるよりも前に、シンジは台所へ消えていった。
『私が彼に言ってもあまり効果がないかもしれないわね・・・
加持にでも頼んでみるか。なんか加持もこういうのだけは得意だし・・・』

 

 

その後の食事は、とりあえずアスカも食べはしたが、
会話は一切なかった。

 

 

翌朝 ネルフ本部
「で、用ってのは何なんだい?葛城。」
「実は・・・・」
ミサトは今までの経緯を説明した。

「で、俺は何をすればいいんだ?」
「シンジ君に言ってあげて。まぁ、大体過去に縛られることはないってことを
言って欲しいけど、あんたに任せるわ。」
「りょーかい。で、ギャラは?」
冗談半分に言ったのだが、ミサトの目は厳しかった。
「わ・・・わかったよ。そんなに睨むな。」
「どうだか。あんたふざけたら殺すわよ。」

 

午後5時
「何か用ですか?加持さん。」
シンジが加持に呼ばれて、本部までやってきた。
「悪いな、シンジ君。時間とってもらって。」
「いえ。とんでもないです。」
「まぁ、そこにかけてくれ。」
シンジはおずおずと椅子に座る。

 

 

「シンジ君、俺がこれから言うことを聞いて欲しい。」
加持の目が真剣になった。
「シンジ君、正直なところアスカのことをどう思ってるんだい?」
「えっ・・・・?」
「えっ、じゃなくて、『好き』とか『嫌い』とかあるだろ?」
シンジは表情を一瞬曇らせたが、一気に吐き出すように言った。
「多分、アスカは僕の中で特別な存在になってると思うんです。
でも、僕は彼女にとてもひどいことをしてしまったんです。
僕は彼女のそばにいる資格なんてないんです・・・」
それを聞いて、加持はふかしていたタバコを消してシンジに言った。
「シンジ君、人間誰でも間違いはあるものさ。
問題は、過去をベースにしていかに生きていくかってことさ。
ただ、過去に縛られるってことじゃない。教訓にするってことだけさ。」
シンジは黙ってうつむいている。
「君が本気でアスカが好きなら、彼女に気持ちを伝えるべきじゃないのか?」
「でも僕は・・・」
「シンジ君、過去のことは気にするな。今を精一杯生きろ。」
シンジははっとした表情で加持を見た。

 

 

「今・・・をですか?」
「そうだ。過去に縛られるよりもそのほうがよっぽど前向きだろ?」
「はい。なんか気分が軽くなりました。僕、アスカに自分の気持ちを伝えてみます。」
「そうか。がんばれよ。」
加持はシンジの肩をたたいて微笑んだ。
「おっと・・・もうこんな時間だ。そろそろ帰らないといけないな。」
「ええ。今日はほんとにありがとうございました。」
「なぁに。気にしないでくれ。俺の老婆心がさせたことだから。」

 

シンジは、迷いを吹っ切ったように家路に着いた。

 


 

あとがき

すみません。かなり間が開いてしまいました。
曽祖父(享年 96)がなくなったもので(^^ゞ
葬式やらなんやらでバタバタして、書けませんでした。すみません。

この小説も佳境ですね~。がんばります。