新しい(新婚?)生活を始めて1週間が経った。
何事もなく平穏無事に過ごせたと言う感想を持ったのはシンジだけであった。
毎朝アスカと腕を組んで登校しているにも関わらずシンジの下駄箱には女子生徒からのラブレターであふれかえっていた。
そして、当然の事ながらアスカの下駄箱も一杯であった。
しかし、アスカにとってシンジがもてることが嬉しい反面、気が気でなかった。
そんな、アスカも家でシンジと二人きりで生活が出来るという強みがあればこそ我慢できたのだと思う。
そして、ケンスケが帰ってきた週末にトウジ・ヒカリ・ケンスケがシンジ達の新居を訪れていた。
が、トウジとケンスケは
「イヤ~んな感じ!」
とか言って変なポーズを取って固まるし、ヒカリはヒカリで
「ちょっと羨ましいけど、不潔よ!!」
なんて言い出して泣き出すし、事態の収拾にシンジとアスカが1時間を有したのは言うまでもない。
事実上同棲なのだから、弁解のしようのない二人がどう説得したかは定かではない。
シンジにとってこの新居は以前の軍宿舎と比べて若干通学に時間がかかるものの、通学路の途中から街並みも見渡せるし、緑の綺麗な公園もあり気に入っていた。
そしてアスカもシンジと甘い生活が送れると喜んでいた。
少なくとも級友の近遙トモコに合うまでは・・・。
「ちょっと! あんた達、中学生のくせに何朝から腕組んでいちゃついてるのよ! 非常識よ!」
近遙トモコは腕を組んで歩くシンジとアスカを見つける否やそう叫んでいた。
「おはよう、近遙さん。 近遙さんもこの近所なの?」
シンジは場違いな感じの口調で言っていた。
「ああっ、碇君おはよう。其処の角を曲がった所よ。」
近遙も近遙でシンジのそんな問い掛けにまじめに返答していた。 ただ、後半は少し嫌みが入っていた。
無論シンジとアスカが同居してることは噂と言うモノで知っていた近遙ではあるが、自分自身で確認してない限り認めない堅物であった為、そんな噂を半分信じていなかった。
しかし、噂を確認してしまった以上堅物の近遙はいてもたってもいられずアスカに喰ってかかっていた。
「それよりも何であなた達は朝から腕組んで登校してるの? ちょっとおかしいんじゃない?」
その近遙の発言にシンジと腕を組んでラブラブで登校する事が当然の事のように考えていたアスカはカチンとくるし、アスカのやりたい様にさせてるシンジは何とも思わないし、3者3様の顔つきで立っていた。 俗に言う何とかの三竦み状態・・・。
「ちょっと! 言いがかりは辞めてよね。 大体私とシンジが腕組んで歩いたらいけないの? そんな法律でもあるの?」
アスカは言いがかりを付けられた事とシンジとの楽しい登校の一刻を邪魔された事で相当頭にきているのか近遙トモコに喰ってかかっていった。
「いいも悪いも、あんた達中学生でしょ。 中学生がそんなことして良いと思ってるの? イヤらしい。」
近遙は委員長らしいごもっともな意見を言っていた。
が、口の悪さでは右に出るモノがいなかったアスカはとどめを刺そうと言った。
「あのね~ぇ。腕組んだ位で何処がイヤらしいの? 私とシンジはあんたがとやかく言えるような中途半端な関係じゃないの。 家族も同然なの? 判る? 私の言ってる意味が。 判るわけないわよね。 堅物の頭でっかち女には。 ハッキリ言ってあげましょうか。 私とシンジはね、一緒に住んでるの。 同じ家に住んでるのよ。 ここまで言ったら言ってる意味判るでしょ。 私とシンジは切っても切れない絆で結ばれてるの!」
アスカは得意げに言った。 本来ならこのアスカの強気に負けてノーマルな相手なら引くのだが今回ばかりは相手が悪かった。 超堅物化した近遙はそれを聞いて赤面しつつも急に保護者っぽい口調で言い放った。
「な・・・なんですって!!!! 中学生の分際でどどどお同棲!!! あなた達絶対変よ!け、結婚もしてない男女が・・・それも中学生でどど同棲なんて・・。 間違ってるわ。 絶対間違ってる! 良いわ。 私が惣流さんの間違いを修正してあげる。 惣流さんは無駄足になるけど碇君はまだ救えそうだから・・・私が責任を持って惣流さんの手から碇君を助けてあげる!!」
確信的に言い放ったトモコの目には自信が満ち溢れていた。 アスカはそんなトモコの展開についていけず思わず口癖を言ってしまった。
「あ、あんたバカァ~! なんでそうなるのよ? あんたみたにな子にシンジが気移りするわけないでしょ。 結局何だかんだ言ってもあんたもシンジ目当てなんでしょ! どうせふられるのにいやらしい女ね!」
この一言が近遙のプライドをいたく傷つけた。
「誰がバカですって!! 聞き捨てならないわね。 ちょっと綺麗だからってちやほやされて図に乗ってるじゃないのあなたは! 良いわ! 女のプライドにかけても碇君を私のモノにしてみせるから! 今言った台詞覚えておきなさいよ。 きっと後悔させてやるから!!」
「やれるもんならやってみなさいよ。 私だって絶対シンジを渡さないから。」
アスカと近遙の視線のぶつかってる所で火花が飛び散ってるのがシンジには見えたらしい。
確かにほんの数カ月前のアスカならこんな元気はなかったろう。
シンジは言い合いしているアスカを見て少し嬉しくなった。
ただ、その内とばっちりが来ることも想像できたし、今の二人に幾ら時間の事を言っても無駄だと思ったシンジは二人を残して学校に行くことに決めた。
「あ、あのさ・・・。 このままじゃ学校遅れるから。 先行くね・・・。 二人とも遅刻しないようにね・・。 それじゃ・・・。」
そう、シンジは言い残して走り去って行った。
取り残された二人はまだ火花を散らしていた。 そして彼女たちの頭の上をカラスがアホ~と言って飛んで行ったかどうかは判らない。
「ハァ~・・・。」
アスカは2時間目の3時間目の間の休み時間ににヒカリの前で大きな溜息を付いていた。
「どうしたのアスカ。 何か落ち込んでるみたいだけど・・・。 碇君と喧嘩でもしたの?」
ヒカリがアスカに聞いていた。 以前からアスカが溜息を付くときは必ずと言って良いほどシンジが絡んでいた。
「ねぇ、ヒカリ。 ヒカリから見てシンジってもてるタイプかな?」
アスカは何気なくヒカリに聞いた。 あまりにも突拍子もない質問に当のヒカリも?となっていた。
「どう、思う? ヒカリの目から見てシンジっていい男?」
「ねぇ、アスカ。 碇君がもてるかどうかって事がどうかしたの?」
ヒカリはふさぎ込みだしたアスカを元気付けようと話しかけた。
「そおね・・・。確かに前の学校でも碇君のファンは多かったわよ。 実際何人かは告白したみたいだし・・・。」
アスカにとっては初耳の事であった。 確かにシンジは男っぽさの点ではいまいちだが、優しさと言う点では抜群で、優しい繊細な少年って言う形容詞が最も似合う少年であった。
それよりもまして、告白されたという事実がアスカの不安を増長させていた。
「ねえ、ヒカリっ!シンジが告白されたってホント? あいつそんなに・・・。」
最後の方は不安を隠しきれないのか言葉が震えていた。
「そうね。 確かに告白されたけど断っていたみたいよ。 好きな子がいるからって。 それに、告白したくても碇君の側にいつもアスカがいたらね・・・。 碇くんに近づく女の子をあんな目でアスカが睨んでたら誰も近づけないわよ。 それに、みんなアスカには勝てないって告白するの諦めていたみたいよ。」
アスカはそんなヒカリの言葉を聞いて大分心が軽くなった。 しかし、シンジが好きな子がいると言って断っていた事に一抹の不安がよぎった。
『シンジの好きな子って・・・。 もしかして、私? うぬぼれかな? そうよね、うぬぼれよね。 やっぱり、ファーストかな・・・。 』
期待と不安が交錯しているアスカの表情がだんだん曇ってきた。
アスカのそんな気持ちを悟ったのかヒカリが更に話し続けた。
「アスカも幸せよね。 あんなにアスカの事大事にしてくれる碇君がいつも側にいるから・・・。 大丈夫。 自信持ちなさいよ。 碇君は何があってもアスカの側からいなくなったりしないから・・・。」
「えっ!? 私? ・・・・・・・。」
アスカはヒカリのそんな言葉を聞いて嬉しくなってきた。
今まで泣いていた何とかがもう笑った状態であった。
「そうよね。 あのバカシンジが私以外の女に気を回すほど起用じゃないもんね。 そうよね。 うん! きっとそうよ! あぁ、バカみたい。 シンジの事でいちいち落ち込んで・・・」
アスカは自分に言い聞かせるように言った。 そして、勇気を出してシンジの方を見た。
「あああああああああ!! ちょ、ちょっとあんた私のシンジに何ちょっかいかけてるのよ! 離れなさいよ!」
アスカが見たその先にはシンジに話しかけてる近遙がいた。 そして、思わず叫んでいた。
そんな、アスカの台詞にシンジは照れくさいのか顔を真っ赤にして俯いてるし、近遙はただでさえつり上がってる目尻を更につり上げて言った。
「ちょっと、誰の碇君だって。 聞き捨てならないわね。」
アスカは脱兎のごとくシンジの前に飛び出していった。
そして、近遙の目前に立った。
「あんたの耳は飾り? 朝も言ったけどシンジは私だけのシンジなの。 気安く話しかけないでちょうだい。 良い、シンジにとって私が最初で最後の女なの。 そして、私の心も体もシンジの為だけにあるの。 私とシンジの関係はそれ程強固なの。」
アスカは相当頭に血が上ったのか恥ずかしい台詞を連発していた。
そんなアスカの台詞を聞いてシンジの側にいたトウジまでが
「恥ずかしいやっちゃで・・・」
と言って、耳まで真っ赤にしていた。
そして、当のシンジは恥ずかしさのあまり自問自答していた。
『逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ・・・、逃げちゃダメかな? 逃げちゃおかな・・・』
しかし、そんなことでは引き下がらないのが近遙である。
「あのね・・・。 私はあなたの間違いを碇君に教えていたの。 あなたみたいな子が碇君を束縛してたら一生を台無しにするわよって。 だから、手始めに私と付き合わないかって。 そうしたら、惣流さんの間違いに気付くわよって。 何か文句ある?」
ここまで言われて引き下がれないアスカは思わず口走ってしまった。
「だれがあんたなんかに大事なシンジを渡すもんですか。 良いわ。 こうなったら勝負しましょ。 私とあなたのどっちがシンジに相応しいか。 言っておくけどあなたに勝ち目はないわよ。 この世でシンジに相応しい女は私だけって決まってるから!」
自信たっぷりのアスカに対して近遙も自信満々で答えた。
「そうね。 碇君を勝利品扱いにするのは心苦しいけど、あなたの側に放置しておくよりかはましだわ。 いいでしょ。 その勝負承けてたつわ。 で? 何の勝負?」
アスカは行き当たりばたりで口走った為に勝負の内容までは考えていなかったようだ。
急に額に冷や汗をたらしながらどもってしまっていた。
「え~っと、しょ、勝負の方法は・・・」
急に自信をなくしてしどろもどろになるアスカに対して近遙は逆に自信を深めて行った。
恐らく勝利の方程式が頭の中で成立したのだろう。
「そうね・・・。 今日の調理実習で作るクッキーの味比べって言うのはどう? 碇君だけじゃなくて、クラスのみんなにも味見してもらって勝敗を付けましょ? それとも、惣流さんは自信がないのかなぁ~」
近遙は挑戦的に言った。 アスカの性格を見事に見抜いた作戦である。
「良いわ。 それで勝負しましょ。」
思わず了承していまうアスカを不安そうにヒカリが見つめていた。
「アスカ大丈夫なの? クッキーだよ・・・。」
「だ、大丈夫に決まってるでしょ。 私は天才美少女の惣流アスカラングレーよ!」
そう、言い放つアスカのこめかみには縦線が何本か入っていた。
『ダメだこりゃ』
そう思ったのはその場に居合わせた全員だった。
そして、一人蚊帳の外にいた当事者(勝利者賞)のシンジが
「あ、あの僕の立場は・・・・」
と呟いていたのを知る者はいなかった。
そして、勝負の昼休みがやってきた。 ざわめく教室の中でケンスケが教科書を丸めて何やら言い始めた。
「さてさて、みなさんお待ちかねのクッキー対決の時間がやってまいりました。 それではみなさんご一緒に! クッキング・ファイト! レディー・ゴー!!」
某TV局でやってる料理番組とアニメ番組の司会のような口調でケンスケが実況中継を始めた。
3・4時間目の調理実習でアスカと近遙がシンジを賭けての勝負で焼き上げたクッキーをクラス全員で試食するという事になり、何故かケンスケが司会を買ってでていた。
クラスは悪のりをした男子と勝負の行方が気になる女子とで妙に盛り上がっていた。
「司会は私相田ケンスケ、相田ケンスケがいたします。また、ゲスト解説者は鈴原トウジでお送りいたします。 それでは鈴原さん二人の作品を見て一言コメントを御願いします。」
完全にはまってるケンスケがトウジに意見を求めた。
「そうでんなぁ。 近遙の作品はオーソドックスながら気品があるちゅうか、見た目が美しいでんな。 一方、惣流の作品はチョコクッキーですか? それとも何かのブロックですか? 真っ黒ですなぁ。 まあ、惣流の腕からしたらあんなもんでんな。」
トウジはいかにもゲスト解説者風にしゃべっていた。 ちょっと悪のりが過ぎていた。
無論、その直後にトウジには神罰がくだった。
「鈴原なんて事言うのよ!」
とヒカリがトウジの耳を引ぱって説教を始めるのと同時にアスカが投げたごみ箱がトウジの顔面をクリーンヒットしていた。 キジも鳴かずば撃たれまい・・・。
「外野が大分騒がしいけど。 始めても良いかしら、惣流さん。」
近遙は自信たっぷりに言った。
「いつでも良いわよ。」
アスカも表面上は冷静を装っていた。 が、内心はそれどころじゃなかった。
実際、普通のバタークッキーを焼くつもりができあがってみたら真っ黒に焦げていたし、味見したら舌がピリピリと痺れだす始末、かめば歯が折れそうな位硬く、ハッキリ言って負けは確実だった。
しかし、戦う前から負けを認めるのはアスカのプライドが許さなかった。
「そう。それじゃ、始めるわ。 みんな両方のクッキーを食べてみて美味しかった方の皿を前の教壇に置いて。 それじゃ、スタート!!」
近遙が開始の合図を送った。 クラスメートは一斉に試食に掛かった。
勝手に仕切られたケンスケは教室の隅でいじけていた。
(どうせ僕は存在感ないよっだ・・・)
ケンスケがそう心の中で愚痴ってる間にも試食は進んでいた。
開始早々アスカのクッキーを食べた生徒が意味不明の言葉を発して教室を出ていった事は言うまでもない。 そんな、状況を見て近遙は勝利を確信していた。
「男もクッキーも見た目と肩書きが大事よね!!」
そう言ったのは近遙の取り巻きの末尾メグだった。
どうやらサクラとして近遙が出してきた手駒だったようだ。
その発言が耳に入ったアスカは不安になって側にいた洞木ヒカリに聞いた。
「ねえ、ヒカリはどっちが美味しかった?」
「ゴメンねアスカ。 おいしさだけなら近遙さんの方が・・・。」
そんなアスカにヒカリはすまなそうに言った。
「そやな。 味も見た目も近遙の方がええなぁ。」
トウジもそう言っていた。 そう言ったトウジの鳩尾にヒカリの肘がのめり込んでいた。
「どうせわいはこんな役しか回ってこんのや・・・」
トウジはそう言い残して床の上のオブジェと化していた。
すっかりアスカは自信をなくしていた。 それもそのはずで、前の机には近遙の皿しかなかった。 当てにしていたヒカリとトウジの意見も近遙だからこれ程絶望的な戦いは無かった。
「ほら、ご覧なさい。 クッキーひとつ満足に焼けないあなたが碇君の彼女なんてちゃんちゃらおかしいわ。 さっさと敗北宣言でもして、荷物まとめてこの世からおさらばしたら。」
近遙が勝利を確信してアスカにそう言った。
アスカは負けを認めるしかなかった。 どう足掻いても勝ち目はなかった。
悔しくて涙が出てきそうだった。 近遙に負けたからではなくシンジの彼女に相応しくないと言われたからだ。
(やっぱり、私はシンジに相応しくないんだ・・・。 クッキーひとつ満足に焼けないいから・・・)
アスカが心の中でそう呟いていてブルーサファイアの瞳から真珠の涙を一滴落としたときクラスにざわめきが起こった。
アスカが何事かと顔を上げると教壇にアスカの皿が1枚乗っていた。
お世辞にも美味しいとは言えないアスカのクッキーを美味しいと判断した人がいる。
一体誰がと思いアスカはその皿を置いた人物をさがした。
「シ、シンジ!?」
アスカの料理の不味さはシンジが一番知っていた。
それなのに、シンジがアスカのクッキーを美味しいと評価した。
アスカは何故シンジが美味しいと思ったのか知りたくなった。
「なんでシンジが私なんかのクッキーを・・・。 あんな不味いものを・・・。 同情なら良いのよ。 同情されたら後でもっと辛くなるから・・・。」
アスカは自分のクッキーの不出来を認めつつシンジの返事を待った。
シンジは爽やかな笑顔でアスカのそんな問いに答えていた。
「そうだね。 確かに味も見た目も近遙さんのと比べて悪いよね。」
「べ、別に其処まで言わなくても・・・。」
アスカはそう言われてちょっと不機嫌になった。 幾ら事実とは言え好きな人に其処まで言われて気にしない子はいないだろう。
しかし、シンジはそんなアスカを気にせず続けた。
「でもね。 近遙さんのクッキーには一番大切なものが欠けていたんだ。 なんだか判る。 近遙さん、それにアスカ。」
シンジは其処まで言って答を二人に求めた。
近遙はちょっと怪訝な表情をして答えた。
「わ、判らないわ。 なんで、私のが惣流さんのより劣るって言うの。 見た目も味も惣流さんのと比べものにならないくらい完璧なのに・・・。 なんで?」
そして、アスカもシンジに言っていた。
「そうよ、私はちゃんと作れなかったのよ。 シンジに美味しいって言ってもらいたから頑張ったけど、でも焦げるし、味も変だし・・・。 味も見た目も近遙さんに勝ってないのよ。なんで・・・?」
シンジは二人の答を聞いて話し始めた。
「そうだね。 近遙さんは勝つことだけ・・・見た目と味ばかりを考えてクッキーを焼いていたんだよね。 でも、アスカは料理が苦手なのに僕に美味しいって言って欲しくて一生懸命作ったんだよね。 つまり、アスカのクッキーには気持ちがこもっていたんだよ。 美味しく食べて欲しいって想いがね。 それだけで十分だと思うよ。 料理ってのは食べる人の心を暖める事が出来て始めて美味しい料理って言えると思うよ。 味が幾ら良くても気持ちがこもって無かったら美味しい料理じゃないよ。 だから、僕は今回の勝負はアスカの勝ちだと思う。」
シンジは微笑んでそう答えた。 シンジの微笑みには反論を許さないモノがこもっていた。
アスカはシンジの言葉を聞いて泣き出してしまった。 そんな、アスカにヒカリが寄り添って涙を拭いていた。
勝負は着いた。
クラスの判定よりも当事者のシンジが判定を下しては文句も言えまい。
近遙は渋々敗北を認めた。
(覚えていなさい惣流さん。 いつかこの屈辱を1万倍にして返してあげるわ。)
近遙の瞳は復讐に燃えていた。
翌日腹痛でシンジが学校を休んだ事は言うまでもない。
さらにつけ加えるとシンジの微笑みと優しさにノックダウンされた女子生徒達がシンジのファンになり、アスカのイライラが増したことは言うまでもない。