VOL.2 ~アスカの心~

NEON GENESIS EVANGELION

ANOTHER STORY

 

SAVE THE LOVE !!

 

VOL.2 ~アスカの心~

 

written by とみゅー

 

あの時から、アタシは心を再び閉ざした...

アイツと引き離されてから....

使途との戦いに敗れたアタシは、全てのものを拒絶した...

なにもかも....

特にアイツを....

そして....

サードインパクト....

アタシはママと一緒に戦った...

ママさえ居れば、もうそれで十分だった...

でも....

アタシとママはエヴァシリーズの前に敗れた...

身も心もズタズタにされるアタシ達...

『殺してやる...殺してやる...殺してやる...殺してやる...殺してやる...殺してやる...殺してやる...殺してやる...』

最後に見た光景...それは、自分の右手が両断されるものだった...

気がついた時、アタシはアイツと二人だけになっていた...

遠くに石像のような、ファーストの欠片...

アタシが見た光景....

それは、まるでアイツの心の中....

なんて、寂しい景色なの...

人がいない....

アタシ以外....

『アタシだけを...望んでたの?』

アタシの首を締め上げるアイツ....

『自分の心の中を....見透かされたから...?』

使徒に心の中を覗かれた時...アタシもまた、覗いた使徒を殺したいと思った...

『アタシと......一緒なの...?...』

不思議な事にアタシは安心感を覚えた....

アタシはアタシ....

アイツはアイツ....

一つになんてなりたくない....

そんな事したら、アタシは居る意味が無い...

何も無い所に、進歩はないから....

どうして安心してるの....?

殺されそうになっているのに....

アイツの手に力がこもる...

『それなら...あんたを楽にしてあげる...アタシもあんたと同じだから....』

アタシはアイツの頬を撫でた...

その瞬間、アイツの手の力が急激に弱まって行く....

アタシの身体に滴り落ちる涙....

『アタシがいても....いいの....?』

『また...あんたを傷つけるわよ....』

泣き崩れるアイツ....

全てが一つになる『気持ち良い』世界は...無いのに...

アタシが此処に居て、二人で居れば、必ずまた衝突するのに....

アタシの上に突っ伏して泣きじゃくるアイツ...

「キモチワルイ....」

ようやくアタシは言葉を発した。

《アスカ....》

聞き覚えのある声...

その声はアイツにも届いた...アタシの身体から離れ、振り向いて呆然としている...

身体を起きあがらせ、アタシは声のする方へ顔を向けた...

「ママ....!!」

紅い海に浮かぶママの姿...

アタシは身を起こし、そっちへ向おうとした。

《来てはダメよ!アスカ!》

「.....!!.......」

《あなたはまだ、こちらへ来てはいけない...あなた自身...生き続けていたいって願っているのだから...》

どうして...アタシは生き続けていたいって願ってるの....?

判らない....

ママは、視線をアイツに移した...

《シンジ君...私はキョウコ...アスカの母親なの...》

アイツ...シンジ...は、何かを口に出そうと口をパクパクさせている...

《私は弐号機の中で、アスカとあなたの戦い様を見てきた....いろいろ助けてくれてありがとう...娘に代わって礼を言うわ...》

「そ、そんなことありません!!」

シンジは、両膝をつき地面に頭をこすりつけるように、アタシとママに平伏した。

「僕は...僕は卑怯で...臆病で...ずるくて...弱虫で...いつも傷付くのを恐れてた...だから、誰にも心を開けなかった...裏切られるのが恐かった...そして、結果はこの通りです...これが僕の望んだ世界なんです...こんなモノに...アスカを巻き込んでしまった...身勝手で...最低です...申し訳ありません!!」

口下手なシンジが、搾り出す懺悔の言葉...

アタシは心が掻き乱された....

何を言えばいいのか、判らない...

《自分を責めるのは、もうお止しなさい...》

ママの声が、シンジに掛けられた。

《シンジ君...あなたは精一杯の事をやってくれたわ...自分がボロボロになっても...だから、誰もあなたを責めることはできない...そして...アスカは...娘は自分の強い意思でこの世界にやってきたの...決して巻き込まれた訳じゃないわ...》

「えっ?」

アタシは、混乱した...

《アスカ...私の可愛い娘...母親らしいことは何一つしてあげられなかった...悪いママを赦して頂戴...》

「ママッ!」

アタシはママの所へ駆け寄りたい衝動に駆られた...

でも、身体が金縛りに遇ったように、動くことを拒否した...

《来てはダメよ...アスカ...あなたはそちらの世界の人よ...》

「でも....」

《あなたは、自分自身でそちらの世界に居ることを望んだのよ...シンジ君の呼びかけに応じて...》

「...........」

《シンジ君...どうして、アスカを...望んだの?》

「.....アスカが...必要だったんです....一人の人間として...」

アタシはショックを受けた...

アタシはあんたを傷つけるわよ....

あんたはアタシを傷つけるわ...

それでもあんたはこのアタシの事が必要だって言ってくれるの....?

もう、エヴァに乗れないアタシを....

一人の人間として....

《アスカ...あなたは自分の気付かない所で、いつも誰かに見守られてるの...そして、あなたは心の奥底でシンジ君を求めてる....弐号機の中で、あなたとシンクロしてた私には判る....私の魂はいつも此処に居るわ...逢いたくなったら何時でもいらっしゃい...》

ママがアタシに近づいてくる。

アタシの眼帯をされた左目を、優しく癒すように撫でてくれる...

そっと、外される眼帯...

視界がハッキリしてくる...

「ママ....」

同時に溢れる涙...

もう、泣かないって決めてたのに...

どうして、こんなに涙が出てくるの....?

シンジはアタシ達に背を向けて、空を見上げてる...

その肩は小さく震えてる....

今度こそシンジと一緒に生きて行きたい....

もう一度始めからやり直したい...って思った...

そして、二人だけの生活が始まった...

誰も居ない世界...

でも、アタシは頑張る...生きてる限り...

アイツ...シンジ...と一緒なら....

そんな時、誰もいないハズの世界に、奴等が来たわ...

“ゼーレ”...

奴等は、サードインパクトの混乱に乗じて、エヴァのパイロットだったアタシ達を連れていこうとしたの...

そこへ、ミサト達が助けに来てくれて、銃撃戦になった....

『どうして...また、戦ってるのよ....!?』

「危ないっ!アスカッ!!」

呆然とするアタシを庇って、シンジは撃たれた....

「ぐぁぁぁぁっ!!」

「シンジ!!」

「...に...逃げろ!!...アスカ!!」

口から血を噴出しながら、シンジはアタシに逃げるように言った。

「イヤッ!もう、独りぼっちはイヤッ!あんたと一緒にいる!!」

「バカ!ここにいたら、殺されるぞ!!」

「ええ、バカよアタシは!!ぶってもいいわよ!

あんたと一緒に居ることが出来なくらいなら、死んだほうがマシよ!!

....あんたがいない世界なんてアタシにはもう考えられない!!独りはもうイヤなの!!」

アタシの想いは言葉となって、シンジに伝わっていた....

アタシはアイツがアタシのために撃たれたことで、ショックを受けていた...

アイツの背中には数発の銃弾が飛び込み、白いシャツを真っ赤に染めていた...

アタシは自分の手が、アイツの赤い血で染められるのも構わず、アイツを抱きしめていた...

もう、独りじゃ生きていけない...

アタシは、シンジと一緒に生きていくって決めたから...

ゼーレの連中がアタシを引き剥がすまでアイツの上に被さっていた....

「アスカァーーーーーー!!」

「シンジィーーーーーー!!」

アタシは羽交い締めにされ、シンジから引き離された...

「セカンド確保!引き続き、サードの回収を行います!」

響く銃声....

「!!」

ミサトの放った自動小銃がシンジを運ぼうとしたゼーレの工作員達を貫く....

「作戦失敗、サードは放棄!これより撤収する!!」

「離してよぉ!!」

アタシは必死にもがいて、シンジの所へ行こうとした。

でも、数人の男達に取り押さえられ、輸送機の機内に押し込まれてしまった...

「シンジ...シンジ...シンジ...シンジ...シンジ...シンジ...」

アタシはうわ言のようにアイツの名前を口にしていた...

アタシを乗せた飛行機はどんどん上昇していった....

アタシの大切なものが遠ざかっていく....

アタシの中から止めどなくあふれる涙.....

涙が枯れた時....アタシは再び心を閉ざした....

アスカの前に一人の男が現れた。

その痩身の男は銀色の髪をしており、黒いスーツを着ていた。

アスカを一瞥すると話しかけた。

「惣流・アスカ・ラングレーだね?」

「........」

アスカからの返事はなかった。

瑠璃色の瞳は虚ろで、聞いているのかどうかも判らなかった。

「私はハンス・シュタインバウアー...NERVドイツ支部の支部長だ....」

「........」

ハンスは構わず続ける。

「君たちを手荒な方法でご招待したことはお詫び申しあげる。もっとも、一人ご欠席されたようだが...」

「........」

アスカの反応は全くない。

「我々はゼーレと深いコネクションを持っている。本部が壊滅した今、最大の規模を有するのが我々の施設だ。」

サードインパクトの影響も他程ではない。

最も被害の少ないNERV施設と言えた。

「我々は、『ゼーレ』の崇高なる使命、すなわち『人類補完計画』を改めて実行するのだ!

碇ゲンドウのような愚か者とは違う!

人と人が完全に調和できる完璧な世界を作るため、前回の呼びかけには応じなかったのだ!判るかね?」

「........」

熱弁を揮うハンスの言葉はアスカには全く届いていなかった。

もし、アスカが耳を傾けたとしても聞くに耐えないことであった。

「そのためには、君にも協力してもらわねばならない....そう、君のエヴァパイロットとしての能力だ!」

「........」

「惣流・アスカ・ラングレー...君に命令する。エヴァに乗りたまえ!」

ハンスのかけた眼鏡の奥から冷徹な響きが放たれる。

「........」

アスカの反応はなく、沈黙の世界が広がる。

「.....やよ.....」

やがて、アスカから小さく出る言葉。

「ん?...なんと言ったのかね?」

「イヤよ...もうアタシ達に構わないで...そっとしておいて....」

アスカからの心の叫びは言葉となったが、それは極めて無機的なトーンのないものであった。

「残念だがそうは行かない....君は選ばれた人間なのだから...」

そう言うと、ハンスはプロジェクターのスイッチをいれた。

映し出される映像にアスカは初めて人間らしい反応を示した.....

『.....シンジ....!!』

映像の中のシンジは病院のベットに横たわり、酸素マスクを付けられて眠っていた。

「さよう、君の最も信頼するパートナー...サードチルドレンの碇シンジだ。

ご覧のように彼は銃撃で負傷し、今も生死の境をさまよっている。

今、彼の命を奪うことはどんな人間にでも出来るということだ。

生命維持装置の電源を切るか、それとも停電させるかだ...君のような聡明な女性なら何が言いたいかは判るはずだ。」

ハンスは不気味な笑みを浮かべて、アスカを見つめた。

「シンジに危害を加えたら....ただじゃおかないわ!」

アスカの瞳に怒りの炎が揺れる。

「....そう...だから、君の力がいるのだよ....」

そういうとハンスは冷酷な薄笑いを浮かべ、アスカをみる。

「サードを生かすも殺すも君の自由だ。好きな方を選ぶといい。」

高笑いを残しつつ、ハンスはその場を立ち去った。

「クッ....」

全身に屈辱感を感じながら、アスカはがっくりうなだれた。

惣流・アスカ・ラングレー.....15歳....

世界は、再び破滅への秒読みを開始しつつあった...


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1999-3/22作成
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どうも、こんにちは! VOL.2をお届けしました。

当SSは、シリアスLASストーリーです。

ようやく解かり合えた二人を引き裂くゼーレ...

ここからストーリーが始まります。

EOEの弱々シンジが、どう立ち向かっていくのか...

次話以降、この辺が表現できればと考えてます。

それでは、またお会いしましょう。