シンジは非常灯の赤い光の中で静かに目を閉じた。このまま黙っていたら、あと一時間弱で自分の命は終わってしまう。
「だけどここで終わるわけにはいかないんだ」
シンジはそう呟くと、再び目を開き各計器のチェックを始めた。まず自分にどれだけの時間が残されているか。そしてエヴァを再起動できるか。
「ロックの状態は変わらないか」
ディスプレーに映し出された文字に明らかに落胆して、シンジは残り時間のチェックをした。
「あと40分……」
シンジは再びコンソールに腰をかけると、目を閉じて神経を集中した。
「思い出せ、何か方法があるはずだ」
シンジはリツコから受けたレクチャーの一つ一つを思い出そうとした。その中に現状を打破する鍵があるはずだと。
パイロットに復帰した時、シンジはリツコに呼び出され、マンツーマンで指導を受けていた。彼の居ない2年の間で、テクノロジーそのものは進歩していた。それはシンクロ率の低いパイロットを使いこなすための苦肉の策でもあったのだが。
『量産機はね、各種のセーフティーを備えているのよ』
「確かリツコさんはそんなことを言っていたな」
『エヴァはね、大きすぎる力なの。
エヴァに潜在的恐怖を感じている首脳達も沢山いるわ。
だからいろいろな止め方が組み込まれているわ』
その時リツコはいたずらな笑みをシンジに向けていた。あなたにも前科はあったわねと。シンジは、恐縮するしかなかった。
『パイロットの反乱対策、エヴァを奪われた時の対策。
まあ、そう簡単にエヴァが動かせるわけはないから、盗られることはないと思うけどね。
チルドレンを保護するほうが重要ね』
それが冗談ではないことは、アメリカで紹介された人たちが示していた。
『ここを攻撃するとしたらエヴァを無効化しようと想定するでしょうね。
直接パイロットを押さえるとか、本部との間の通信を妨害するとか。
だからパイロットは複数人選出されているし、3重の通信方式が用意されている』
今の量産機は、使徒の居ない世界を基準に考えられていたのだから。戦うのは使徒ではなく、人を相手に。
『そしてシンジ君だけに教えるのだけど、隠しコマンドがあるの。
いざという時……無いことを願うのだけど。
MAGIの制御を強制的に切り離す方法がある……』
シンジは求める物を見つけた気がした。
『本当は、教えてはいけないことになっているんだけどね。
帰ってきてくれたあなたのために、そして世界から注目を集めているあなたに……
ごめんなさい、私達はあなたから平穏な日々を奪ってしまって……』
シンジはシートの後ろに回り、自爆用のコンソールを開いた。
『
エヴァには、2種類の自爆起動方法が用意されているわ。
一つが、コマンドによる方法。もう一つが、機械的操作による方法。
その機械的操作による方法で、システムを完全にリセットが出来るの。
この時、コマンドの優先権はパイロットに移るわ』
そのままレバーを引き、同時に指定されたボタンを押していく。タービンの軽い回転音と共に自爆へのカウントダウンが始まった。
『間違えないようにね。それに時間を掛けすぎないように……失敗したらドカンだから』
澱むことなくボタンが押され、引かれていたレバーが元に戻される。それに従って回転を始めていたタービンが停止した。
『リセットが上手くいったら10秒間全てのシステムが停止するから分かるわ』
その瞬間インテリアを照らしていた赤い光も消え、暗闇がプラグの中を包んだ。その中でシンジは10秒という時間が過ぎ去るのを待った。多分今までで一番長い10秒という時間を。
『リセットが完了すれば、コントロールはパイロットに戻るわ』
シンジは再びコンソールに戻ると、再起動したシステムに自閉モード移行への指示を出した。これでしばらく時間が稼げるとシンジは安堵した。しかし、期待に反してシステムは何の応答も返さなかった。
さすがにこれにはシンジが慌てた。ディスプレーから「LOCKED」の表示が消えているのにも関わらず、システムが反応しないのだ。幸い息苦しくならないので、生命維持モードは動作しているようだ。だがこのままではバッテリーが尽きるのも時間の問題である。シンジは何か考え落としが無いかを必死に思い出そうとした。
「落ち着け、落ち着くんだ。
何か忘れていることがあるはずだ。
もう一度手順を思い出すんだ」
シンジは自分にそう言い聞かせると、リツコに説明された手順をもう一度頭の中に思い浮かべてみた。しかし何度思い返してみても、新しい発見は何もなかった。プラグスーツで時間を確認してみると残りは後15分しかない。シンジは自分が焦り始めているのを自覚した。
「システムは確かに再起動しているんだ。
何か忘れていること、何か本部と違うところがあるはずだ。
考えろ、冷静に考えるんだ」
シンジは焦る気持ちを抑えるために、自分にそう言い聞かせた。まだ時間は十分にあるのだと。しかし、時計は非情にも時間を刻んでいく。そして時間を確認する行為自体が自分を追いつめていった。そして運命の時間まで後5分と言うところで、急にインテリアを照らす照明が暗くなった。この明かりが完全に消えたとき、内蔵コンピュータを駆動する電源も切れる。そうなると2度と自律での再起動が出来なくなる。
「予定より早い!」
焦りと同時に息苦しさもシンジは感じていた。LCLの循環もいつの間にか停止している。
ここまでなのかと、シンジはシートに身を投げ出した。そして、このまま酸欠で窒息死するのと自分で命を絶つのとどちらが苦しいのか、そんなことを考え始めた自分に気づき、シンジは苦笑いを浮かべた。
「いよいよここまでか……」
いざとなったら、5号機を自爆させる。シンジは、自分でそう言ったことを思い出した。
「怖いな……アスカは、こんな恐怖を感じたのか」
新第三使徒を相手に、アスカは自爆をして見せたのだ。しかも、その理由はシンジにあったという。
「……僕では、やっぱりだめだったんだね」
結局苦しめることしか出来なかった。それが、シンジにとって唯一の心残りだった。
「僕は、初めて出会った時から君に惹かれていたんだ……」
今なら分かる。そんな気持ちがあったことを。
「君は、あのころの僕に失望を感じていたんだろうね……
競い合おうにも、ちっとも手応えがないんだから」
(情けないわね。それでもサードチルドレンなの!)
「本当に、アスカの言うとおり情けない男だよ。
僕は、あのころから何も変わっていない。
アスカの嘘を知りながら、結局なんにも僕にはすることが出来なかった……」
(あんたたちは、シンジを苦しめる……)
「僕は、アスカを苦しめた……
僕はね、アスカに守って貰うほど価値のある男じゃないんだよ。
でも、アスカには守られるだけの価値がある……
こいつだけは、なんとしても僕の手で仕留めてやるから」
シンジは立ち上がると、もう一度自爆装置の所へと移動した。今度の作業は、途中で解除は行わない作業だった。
「これで、みんな自爆を経験するんだな……」
ファースト、セカンド、サード。実質使徒を倒してきた3人のチルドレンなのだ。
「……綾波。僕は、こんな世界を望まなかった。
でも、勘違いしないで欲しいんだ。
こうやって死ぬことに文句を言っているんじゃないんだ。
僕が望んだ世界。そこにはエヴァも使徒も必要なかったんだよ。
綾波は、それぐらいのことは分かってくれていると思っていたよ。
使徒もエヴァも無ければ、僕はアスカと再会することはなかったはずだ」
シンジはもう一度シートに戻ると、静かに最後の命令を呟いた。
「Self destraction mode start. Destraction mode sets to Explosion. Timer sets 30 seconds.」
「Timer sets 30 seconds. Please input last keywords. If you sets the keywords, you cannot cancel this command. Do you input keywords?」
イエス。そう言いかけたシンジは、自分のしていたことに気づいた。
「Conmputer?」
「Yes!」
ようやく、シンジは自分の失敗に気が付いた。
「computer, basic language change to Japanese!」
「基本言語を日本語に切り替えました」
「エヴァンゲリオン起動シーケンス開始!」
「自爆設定が解除されていません。自爆設定を継続しますか?」
「自爆設定解除!」
「自爆設定を解除しました。
エヴァンゲリオン5号機、起動します」
コンピュータがそう応答したとたん。プラグの中は明るさを取り戻した。そして、感じていた息苦しさが薄れていくのをシンジは感じていた。
「……笑えない冗談だな」
ちゃんと多言語仕様にして欲しい。命拾いしたシンジは、そんなつまらないことを考えていた。
赤木リツコは司令である冬月の急な呼び出しに、司令室への通路を急いでいた。リツコにとって時間は一分一秒たりとて惜しい。それを冬月も分かっているはずだ、それをおして自分を呼び出すのだからよほどのことだろう……リツコは何事かと思いながらも先を急いだ。
「はあ、ブラッドリー・クリフォードですか……」
司令室に入るなり聞かされた名前にリツコは面食らった。いや正確には向こうが協力を申し入れているという事実に驚いた。確かにリツコにとっては願ってもない分野のエキスパートである。しかし彼がどうしてこの出来事を耳にし、どうして自分の研究と結び付けたのかにふと関心が向いた。
そんなリツコの心の内が分かったのだろうか、冬月は少し肩をすくめてみせた。
「昔からそうだが、極秘情報に関する抜け道があるようだ」
何らかの形の内通があったと冬月の目は語っていた。
「国連からではないのですか」
「ああ、確かに形は国連を通っている。
しかしだ、この件の報告はまだ行っていない。
それに行動が迅速すぎる。
形骸化した彼らの仕事とはとても思えん」
確かにとリツコは思った。今まで政治的綱引きには熱心だったが、こんなことに国連が首を突っ込んできたことなど一度もない。足を引っ張られた覚えはあっても手伝ってもらった覚えはないのだ。やはり何か裏があるのでは無いか、と勘繰ってしまうのもしかたが無いだろう。
「何か交換条件とかがあるのでしょうか」
少なくともそれなら納得がいく。リツコの顔はそう物語っていた。
「残念ながら無いのだよ。
だから余計に胡散臭い」
本来交換条件など無いほうが言いのだが、これまでの経緯がある。『ただより高いものはない』それはこの世界では真理なのである。
「いずれにしても我々には選択の余地など無いのですね」
そうでなくても喉から手が出るほど欲しかった人材である。本来なら、こちらから頭を下げてでも頼んでいるはずだ。
「そういうことだ。
後から何が起こるか分からんが、とにかく今のままでは我々には後が無い。
この先さえあれば挽回の機会もある。
まず次へとつなげるべきだと私は考える」
冬月の言葉にリツコは肯いた。事はシンジだけで済むとは思えないのだ。
「それでブラッドリー・クリフォードはいつこちらに来るのでしょうか」
「何と明日の朝……いや、もう今朝か……到着するそうだ……
もう一人、神経生物学者のクリストファー・ダンチェッカー博士とともに」
リツコはその行動の素早さに驚くとともに、あげられた名前に何か引っ掛かるものを感じていた。
アスカが目を覚ましたのと同じ時刻、早朝の第二新東京空港にその二人は居た。
「遠路はるばると来たのにお迎えもなしか」
閑散とした空港ロビーでクリフォードは呟いた。その声には『VIP待遇じゃないのか』と暗にダンチェッカーに対する非難の色が籠もっていた。
「仕方ないさ、我々が早すぎたのだよ。
彼らだって忙しいのだからね」
クリフォードの込めた皮肉もさらりと受け流し、ダンチェッカーはソファーに腰を掛けながら空港の車寄せを見た。そこに大型の車が滑り込んでくるのが見えた。
「ようやくお出迎えの到着だ。
……おやおや、VIP待遇というのもまんざら嘘ではなさそうだぞ。
司令じきじきのお出迎えだ」
「嘘じゃないって……お前な……
ところで隣にいる美人は誰だ」
ダンチェッカーは、クリフォードの目のつけどころに小さくため息をついた。
「大方秘書か何かだろう……
しかしすぐそこに目がいくか……」
「しかた無いだろう、こちらは毎日地中深く潜っているんだから。
女性研究員なんぞ、化粧気どころか色気すらない。
ひょっとしたらあいつらは、女であることを忘れているかもしれんのだぞ」
「それを、彼女達の前で言える勇気があればたいしたものだがな」
「馬鹿言え、そんなことを言ったらテムズ川に浮かぶことになる」
「大英博物館のミイラの隣じゃないのか……
まあいい、お見えだぞ」
ダンチェッカーはクリフォードを軽く肘でつつくと、向かってくる男女に向けて会釈をした。
「ブラッドリー・クリフォード氏とクリストファー・ダンチェッカー氏ですか。
私はネルフの司令をしている冬月です。
お会いできて光栄です」
クリフォードとダンチェッカーと固い握手をした冬月は傍らに立つ、リツコを彼らの前に引出た。
「こちらが技術部長をしている、赤木リツコです。
実際の技術的検討は彼女と行ってもらうことになります」
技術部長と紹介されたリツコの姿に、ダンチェッカーとクリフォードは軽く目を見張った。噂には聞いていたが、こんなに若いとは想像してはいなかった。二人の様子に気付いたリツコは、少し苦笑いを浮かべながら二人と握手を交わした。
「お二方に比べると経験不足ですが、よろしくお願いします」
多分に皮肉を込めてリツコは二人に手をさし出した。
「・・・いや、そんなことはありませんよ。
あなたのお噂は常々耳に入ってきますから。
いや、何、実は今回新鮮な発見をしましてね。
うちの女性研究者が、常々主張していることに大きな嘘があることがわかりましたよ」
「お誉めの言葉と受け取ってもよろしい?」
「これ以上はディナーの時にでも」
いつもと違い冗舌なクリフォードを横目に、ダンチェッカーはリツコの様子に注意を払った。こちらを探るような視線、そして疲れの出た目許……無理も無いかとダンチェッカーは思っていた。何しろサードチルドレンの件は、外部からの干渉があったのは明らかである。そして迅速すぎる我々の行動……疑われてもしかたの無い要素が満載である。それにも増してエースパイロットの危機である。彼女たちの心労は如何ほどのことだろうか。
ダンチェッカーは、冗舌に話すクリフォードに肘を入れると、直に移動することを提案した。時間はいくらあってもありすぎることはないのだからと。自分達に残された時間がどれだけあるのか分からない今は……
用意された車に乗り込むと、ダンチェッカーは向かい側に座ったリツコに向かってこれまでの経緯を話すことにした。すべてを話すわけではない、問題の無いところだけではあるが、そのことに嘘も言わない。ダンチェッカーは北米支部でシンジと親交があり、ディナーの約束をしていたことを話した。そして目の前でシンジの乗った5号機が消えたことも。そしてその解決策を求める為、友人であるクリフォード博士に助力を求めたこと。
「納得がいかない顔をしておられますね」
ダンチェッカーは、ありありと警戒の色が浮かんだリツコの瞳を覗き込んだ。
「ええ、この場合人の好意ほど信じられないものはありませんから」
なるほど、とダンチェッカーはにが笑いを浮かべた。確かにこの世界、無償の好意を期待できるほど甘くはないし、そんな幻想を抱けば手痛いしっぺ返しを食う。
「赤木博士のおっしゃりたい事はよく分かります。
一応私にもブラッドにも下心はあります。
ただそれが、あなたの満足いく回答になるかは分かりませんけどね」
「お聞かせいただけると幸いですわね」
リツコの挑むような目つきに、ダンチェッカーは小さく肩をすくめた。
「まずブラッドですが、彼の場合は分かりやすいでしょう。
彼の行っている研究を進めるのに、最も都合が良いと考えたからです。
そうでしょう。生きたサンプルが目の前に現れるのですから。
しかもパワーのあるコンピュータを使用する事が出来る。
彼の研究にとって、これほど有意義な事はない。
ブラッドは放っておいても飛びついていたと思いますよ」
うんうん、と横でクリフォードは肯いた。
「クリス、もう一つ付け加えてくれないか。
ここに来てもう一つ下心が加わった。
やはり世の中には男性と女性が要るのだよ」
そんなクリフォードの言葉をダンチェッカーは無視した。
「それから私の下心。
これはなかなかご理解いただけないと思います。
私は使徒とやらに、彼と彼の彼女とのディナーを邪魔された。
私は友人とのディナーを大切にする質でね。これはゆゆしき事態なのですよ。
それからもう一つ。
私は生物学者なのでね。貴方たちに関わっていると、貴重な体験が出来る。
これもまた大きな理由ですよ」
ダンチェッカーの横でクリフォードは小さなため息を付いた。ある意味予想はしていたのだが、友人の行動力とその理由に半ばあきれているというのが正解だろう。リツコもまたそんな理由を出してくるダンチェッカーに半ばあきれていた。
「嘘ならもっとまともなものを吐きますよ」
そのダンチェッカーの言葉に、何か煙に巻かれている錯覚をリツコは感じていた。
「…後悔される事が起きませんように」
何を聞いても無駄でしょうね、リツコは追求をあきらめた。とにかく今は猫の手も借りたいのだ。
「人生は後悔の連続ですよ……それを恐れていては何も出来ません」
ニヤリとダンチェッカーは口の端を歪めた。それは決してリツコを嘲笑したものでなく、自分自身の在り方を笑ったものだった。
「ひとつ……これは手土産代わりなのですが、サードチルドレン、霧島シンジ君の安否。
現時点でのと言う断りがきはつきますが、確認できたと思います。
彼は無事……だと言う線が濃厚です。
これは観測データによって推測したものなので、権威であるあなたに確認いただきたい」
この言葉にはそれまで黙って観察を続けていた冬月も腰を浮かせた。リツコの顔にも『どうやって』と言う疑問がありありと現れていた。ダンチェッカーは、自分が投げた爆弾の効果に満足すると、かねてよりの打ちあわせの通り、説明をクリフォードへと振った。
「私の研究は高次空間論の構築にあります。
理論の構築の方は何とか形になりました。
現在証明のため、検証方法を構築しています。
その中でいろいろと興味深い現象が観測されているのですが、今回の件はその一つというわけです。
高次空間理論の関数より導かれる高次放射と言う現象があるのですが、
これは物質の消滅が行われるときに放射されることが予測されています。
そしてすべての物質が安定でなく、常に消滅・生成が行われている。
これも予測されています。
ただ物質の消滅から生成される高次放射は、あまりにもそのレベルが小さいこと。
それに、検出方法……御存じの通り高次空間というものはわれわれには知覚することはできません。
ですからそこでの放射についても、新しい測定方法を探し出さなくてはならなかったわけです。
詳しい方法についての講釈は別の機会に譲るとして、
その測定器に昨日……えっと時間の感覚がおかしくなっているのですが、
まあそれくらいから急に大きなノイズが混じるようになったわけです。
ようやく測定器が完成し、これからデータ取りだと思っていた矢先のことです。
洒落にならない混乱がもたらされました」
わかりますよね、とクリフォードはリツコと冬月の顔を見た。そして二人が何も口を挟んでこないことを確認すると、自分の話を続けた。
「理論的に問題ない、そうなるとソフトに何か問題があることになる。
膨大なソースを、また見直すのかとうんざりしていた所にクリスが情報を持ってきたわけです。
双方のデータを検証したところ、見事に一致しました。
例の使徒とか呼ばれる敵性体とエヴァンゲリオン、彼らの活動とノイズの関連が。
その中で、エヴァンゲリオンが消えてから50分ほど経ってから、
レベルの落ちていたノイズが再度上昇しました。
クリスが言うには、これがエヴァンゲリオンの活動と何らかの関係があるのだろうということです。
これ以上は推論に推論を重ねることになるので申し上げませんが、何かのお役には立つでしょう」
まあそんなところです、とクリフォードは話をまとめた。その話にリツコはしばらく考え込んでいたが、確認するように口を開いた。
「そのノイズは現在も観測されているのですか」
「もちろんです。
ただもうノイズではなく、立派な観測データとなっていますがね」
丁度その時、鳴り出した携帯の音に、一同は虚を付かれたように驚いた。クリフォードは自分のポケットから携帯を取り出すと、ふた言三言何か確認を行った。
「何かデータに変化があったときは、私に連絡がくるようになっていたのですが……
観測データに新たなノイズが重畳されたということです。
これがどういうことを指しているのか私には判断しかねますが……」
クリフォードの言葉に思い当たるリツコは、本部へ電話をした。自分に報告なく、エヴァの起動試験が行われなかったと。そしてそれが無いことを確認すると、ミサトを呼び出した。そして新たな使徒出現の可能性が高いことを告げ、電話を切った。
「これで使徒の出現が確認されたら、今回の件を除いても欲しいですわね……その測定器」
スタッフごと。そう言ったリツコに、クリフォードは光栄だと笑った。
新第六使徒が太平洋上で発見されたのは、この会話より30分ほど後のことだった。
続く