第弐拾壱話 雷鳴

「大丈夫か渚!?」

「ああ少々疲れたけどね」

トウジはカヲルの側に辿り着くと同調してATフィールドを展開した。

先刻アスカの伍号機をしとめた技はどこへやら相手はひたすらATフィールドの押し合いをしている。

「しかしこりゃ埒があかんで」

「そろそろ相手も戦法を変えると思うよ」

「? どんな風にや?」

二人の前で3体のエヴァは両刃剣を抱え直した。

その形が変わっていく。

「…やはりロンギヌスの槍か」

「なんやそりゃ?」

(…無知とは幸いなことだね)

カヲルは自分の生命に深刻な危機が迫っていることを認識していた。

 

 

 

「敵エヴァ各機、ロンギヌスの槍投擲体勢!!」

「…まずいわね」

発令所に戻ってきた所で報告を聞くリツコ。

ミサトは槍を構えた敵エヴァを睨んでいる。

「アスカは?」

「弐号機は現在移動中です。到着まであと170秒」

ミサトは弐号機に通信を入れた。

「アスカ」

『何よ! こっちだって急いでるわよ!』

 

実際アスカはビルを飛び越え丘を越え懸命に弐号機を走らせていた。

だが、それでも間に合いそうにない。

(…ちっ、あいつらだけじゃ!)

槍に貫かれた記憶を思い出し苛立つアスカ。

そこへミサトの冷静な声が響く。

 

「後のことはいいわ。ATフィールド全開で突っ走って」

しばしミサトの指示をかみ砕くアスカ。

『………知らないわよ』

プツンと切れる通信。

「エヴァ弐号機加速!」

「………後処理が大変ね」

「それは上の人に任せましょう」

ミサトは微笑んだ。

弐号機はATフィールド全開で突っ走っていった。

その背後に瓦礫の山を残し、まさに走った後に道を作りながら疾走する。

 

 

 

「な、なんやこりゃ!?」

三本の槍はゆっくりとATフィールドを浸食していく。

二体でATフィールドを構成しそれにカヲル自身のATフィールドを上乗せしているからかろうじて受け止めているのだ。さもなくば槍が放たれた瞬間に二人は消滅していただろう。

「くっ、コピーとはいえさすがはロンギヌスの槍と言ったところか…」

…このままではいずれATフィールドを突破される。その前にATフィールドを攻撃に転じ一体だけでも仕留めて彼女の負担を減らすべきか?

「鈴原君…」

カヲルが口を開いたとき真紅の閃光が二人の間を通り抜けた。

 

 

「どおりゃぁぁぁぁ~~~~~!!」

拾参号機に体当たりする弐号機。そのまま左腕をふるい同時に放ったATフィールドが正面から拾参号機を直撃する。その威力は全力疾走の真っ最中進行方向に突然鋼鉄製の壁を立てられたようなものだ。

ゆっくりと倒れる拾参号機にすかさずロンギヌスの槍を突き立てるエヴァ弐号機。

チュドーーーーーーーーン!!

拾参号機の爆発に包まれる弐号機。

 

 

「エヴァ拾参号機沈黙!!!」

「…勝ったわね」

リツコが呟いた。

 

 

おさまる爆煙の中から姿を現す弐号機。

「いけない!」

襲いかかる残り二機を見て叫ぶカヲル。

「こんのぉ!!」

弐号機は両腕を突き出しATフィールドを展開する。

バキィィィィン!!

突如生じた壁に弾き飛ばされる拾壱号機と拾弐号機。そのまま土煙を上げて仰向けに地面に倒れる。

「おぉーやりおる!」

「やれやれ…」

弐号機は続けて槍を振り下ろした。オリジナルのロンギヌスの槍がATフィールドの壁を半ば貫通しかけていたコピーの槍を打ち据えて進行方向を変える。結果的に上向きになった槍はそのまま上空に昇っていった。

アスカは回線を開くと二人に指示を出す。

「いい? 鈴原はとにかく撃ちまくって弾幕を張って! 別に効かなくたって足が止まれば十分よ!」

「おっしゃあまかしとき!」

六号機が地面に転がるパレットライフルを拾い上げ両手に構える。

「渚はあたしのATフィールドを強化して防御して! 相手のフィールドの中和は必要ないわ!」

「了解したよ」

八号機がすっと後退する。

「さぁ! いくわよあんたたち! これで負けたらシンジに会わせる顔がないわ!」

腰だめにロンギヌスの槍を構える弐号機。その背後に六号機、八号機がつく。

「同感だね」

「まったくや」

「行くわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

<発令所>

 

「…反応消失、目標を完全に殲滅しました」

「弐号機ならびに六号機、八号機。損傷軽微、問題ありません」

振り返ってミサトの指示を待つ青葉と日向。オペレータ達も同じようにミサトを見つめる。

最後にリツコが視線を向けた。

「現時点をもって本作戦の終了を宣言します!

…みんなお疲れさま」

次の瞬間、発令所は割れんばかりの歓声に包まれた。

飛び上がって喜ぶ者、抱き合って泣く者などいろいろあったが、皆、本当の意味での最後の戦いが終わったことを、その喜びを分かち合っていた。

「アスカ、鈴原君、渚君、帰投して。伍号機の回収も忘れずにね」

マイクを引き寄せリツコが言った。

「「「了解」」」

主モニターに映し出された3人のチルドレンが笑顔で答えた。

「マヤ、総司令と副司令に作戦終了を連絡して」

「はい」

 

 

リツコはマイクを置くとミサトに話しかける。

「もっとも、とっくに知ってるでしょうけどね」

「………」

「どうしたの? 今度こそ本当にあなたが勝ったのよ?」

「………」

「ミサト?」

ミサトの顔をのぞき込むリツコ。

「…ふぅぅぅ~~~。あー怖かったぁ。たははははは…」

「ぷっ」

ほっとしたように笑いをもらすミサト。それを見てリツコも吹き出す。

「ははははははは」

「ふふふふふふふ」

二人はそのまま発令所の笑いの渦に加わった。


ドサッ

男達は静かに床に横たわった

かろうじて息はあるようだ

各々武装していたようだが使う間もなかったようだ

周囲を探って他に気配がないか確認する

辺りにはただ静寂だけが満ちている

懐の通信機を確認する

相方の警告も無いところを見ると問題ないようだ

彼はきびすを返すと歩き出した。

 

 

カツン、カツン、カツ…

響いていたブーツの足音がいつの間にか豪奢な赤い絨毯に変わった床に吸い込まれる

ゆっくりとした歩調で奥に向かう

やがて前方に荘厳な造りの前時代的な大扉が見えてきた

扉の前で一度立ち止まる

少し逡巡してから扉に手を掛ける

ギィ………

わずかに音を立てて内側に扉が開かれていった


予告

ネルフは勝利した

それは何を意味するのか

いずこともしれぬ闇の中

シンジは全ての終わりを告げる

旧き時が終わり

新しき時代が到来する

次回、新世界エヴァンゲリオン

第弐拾弐話 黎明