第九話 守る為の力

「うふっ、シ~ンジ♪」

「何、アスカ?」

「何でもない♪」

相変わらず幸せ絶頂の中にいるアスカ。過去のアスカを見る事が出来る人がいるとしたら、この変化には驚き絶句したことだろう。そのくらいシンジに向ける笑顔は眩しく輝いていたのだから。だが過去へと戻ってきた今、この二人が当たり前の景色の一部となった2年A組。

「あの二人は相変わらずやの~」

教室の片隅で、独自の世界に居る二人を見て、ケンスケ、カヲルやレイ、ヒカリと共に居るトウジが呟いた。

「まあ、しょうがないんじゃ無いのあの二人は」

カメラを弄くりながら、ケンスケが同意した。

「シンジ君と、惣流さんには色々あったらかね」

「うんうん、あの二人は他の人が考えられない位強い絆で結ばれてるから」

カヲル、レイも転生してきたのだ。二人の間に何があったか、そしてお互いがお互いを常に支え合って行くべきパートナーだと分かっている事を知っている数少ない人間だ。

「シンジ君が僕との愛に目覚める日を楽しみにしているんだけどね」

最もカヲルは自分に正直に生きる事を信条にしている為、シンジへのアタックを止めるつもりは無かったが・・・・

「おのれも相変わらずやの~」

「ホント、ホント」

幸せ絶頂の二人、いや、シンジに熱い視線を送るカヲルを見て、呆れ顔のトウジとケンスケだった。

 

その日の放課後・・・

「カヲル君、一緒に帰らないの?」

「シンジ君にそう言われると、一緒に帰らない訳には行かないんだけど、今日だけはどうしても駄目らしいのさ」

「えっ?どうして?」

カヲルはホントに悲しい顔をして、シンジの耳元に口を近づけると

ふ~・・・

息を吐いた。

「う、うわっ!カヲル君いきなり何するんだよ!」

「あははっ、シンジ君はホントに素直だね。好意に値するよ。でも、今日はネルフで参号機の再調整の為に松代に行かないといけないのさ」

「それって、参号機が新しくなるって事?」

「ううん、違うよ。次の使徒との接触の為さ」

笑顔で言うカヲルの言葉にシンジははっとして、カヲルを見る。そうだ、次の使徒はトウジの乗っていた参号機に乗り移った使徒がそのままでネルフに襲いかかってきて、シンジのトラウマの一つとなったあの使徒だった。

「カ、カヲル君・・・・」

「大丈夫だよ、シンジ君。使徒としての力の大半を失った僕でも、使徒との接触は出来るからね。こちらから制御出来れば、これ以上の力は無いと思うよ。もしもの時はシンジ君や惣流さんに迷惑を掛けるかもしれないけどね」

それだけ言うと、クラスの女の子達の”渚く~ん”の声に軽く手を挙げ答えながら教室から出ていった。

シンジはそんなカヲルを何とも言えない表情で見ていた。

 

「あっ、そうか。次はとうとうあの使徒が来るのね。前の時は私とファーストで足止めしてシンジが殲滅したのよね。シンジあの後、凄く落ち込んでいたから私も悲しかったわ」

二人は家路につきながら昔の戦いの事を思い出していた。

「そうだね。あの時はダミープラグが勝手にトウジの乗った参号機を殲滅しちゃって・・・・・僕は一生懸命止めようとしたのに止まんなくって・・・・そんなものを載せた父さんが憎くてしょうがなくて・・・・・・・」

昔を思い出したシンジは握り拳を作る。

アスカは悲壮な顔のシンジがまた、前の時みたいに落ち込むのでは無いかと心配し、シンジの握り拳をそっと両手で包み込んだ。

「シンジ、あの戦いはもう終わったのよ。今回はあの時みたいにしなければ良いのよ。カヲルだって制御してみせるって言ってるんでしょ。だったら絶対に大丈夫よ!」

シンジを励まし、そして、トラウマを一つ一つを乗り越えて貰いたいアスカは笑顔を向ける。

シンジもアスカの言葉に頷く。

「そうだよね。みんなが幸せになる為に僕達は帰ってきたんだよね。例えカヲル君が失敗したとしても今回は絶対に守ってみせる。カヲル君も、綾波も、そしてアスカ、君も」

「そうよ。それでこそシンジよ。私だって何時までもシンジに頼ってばっかりじゃ無いところを見せてあげるわ」

二人は改めて、自分たちの目的、そうみんなの幸せを守り、自分たちが目指した世界を作る事を誓い合った。

 

「エヴァンゲリオン参号機、S2機関起動まで後20」

「参号機パイロットはすでに搭乗済みです」

「1番~1568番までチェック済み」

「硬化ベークライト何時でも使用可能です」

次々のもたらされる報告に頷くリツコ、彼女は今参号機によるS2機関のテストの為、カヲルと共に松代にあるネルフ施設に来ていた。

『この実験が上手く行けば、初号機、弐号機のあの凄まじいパワーの源についても分かるかも知れない・・・』

ゲンドウからは、初号機、弐号機及び、今は検査の必要さえ無くなったレイの事に関与するなと言われていたが、科学者としての彼女には認知出来るモノでは無かった。

だから、S2機関のテストを通じて、少しでもエヴァ、初号機、弐号機について分かれば良いと考えていた。

「了解、関係者各位はその場にて待機、参号機に依るS2機関起動まで監視、その後は各位決められた通りに行動する事」

 

『それにしてもSEELEから送られて来たフォースチルドレン・・・・

参号機・・・

それにシンジ君やアスカ・・・・レイ・・・

私の予想範囲からは大きくずれている・・・・これでもシナリオ通りなんですか?碇司令・・・』

実験開始までの短い時間リツコは、自分の中でゲンドウと対話していた。

 

リツコ達からはただ目を瞑って参号機の中に居る様に見えるカヲル・・・・彼の戦いはすでに始まっていた。

『君も希望の一形態なんだね。S2機関が働く事によって自己進化するつもりだね』

・・・・・・・・・・・

『駄目だよ。君は希望にはなり得ない・・・・本当の希望はシンジ君と惣流さんだよ』

・・・・・・・・・・・

『戦っても良いけどまだ成長しきっていない君に勝ち目は無いよ。どうしても希望になりたいと願うのであればこちらから行くよ』

・・・・・・・・・・・

『理解仕切れないんだね。分かったよ、僕の中にあるすべてのイメージをそちらに転送する。それを見てから戦うか決めると良いよ』

・・・・・・・・・・・

『・・・・・・・・・・・・どうだい彼らは?』

・・・・・・・・・・・

『勿論僕だって今の人類が駄目な事くらい分かっているよ。けど、あの二人なら大丈夫。

ホンの一握りかもしれないだが、本当の幸せを掴むために一生懸命努力する二人は僕達にとっても希望に見えないかい?』

・・・・・・・・・・・

『良かったよ、理解してくれて。くだらない事に命を懸けるよりは、遙かに良いと思うよ』

・・・・・・・・・・・

『僕達はあの二人の盾になれば良いのさ。希望の盾・・・・良い名前だね』

その後、S2機関は正常に起動した。

リツコにも理解しきれぬまま・・・・

 

 

ネルフ本部・・・

「良かったね、カヲル君」

「まあ、あんたにしちゃ良くやってって誉めといてあげるわ」

「良いな~、これで参号機もパワーアップしたし・・・零号機なんてそのまんまだし・・・」

カヲルが松代から帰ってくると、使徒の事を皆に話していた。

シンジは笑顔、アスカやレイは何とも言えない顔でカヲルの苦労を労っていた。

 

ビーッ、ビーッ・・・・・

 

突然鳴り出す警告音・・

「えっ?な、何・・?」

「何か緊急の事が発生したみたいだね」

「もしかして、次の使徒!?」

「急いで司令本部に行こう!」

笑顔だった顔がいきなり真剣になり、四人は司令本部に向けて走り出した。

その時、闇を引き裂いて飛来する鉄の塊、それは一直線にシンジの腹部に突き刺さった。

「ぐ、ぐふっ・・・・」

自分の身に何が起こったか判らないが腹部から強烈な痛みと共に、床に向かった真っ赤な血が溢れ出し、

体が言う事を聞かなくなると、自らが作り出した真っ赤な海に体を沈めた。

「い、いや~~~~~~!!!!」

ネルフ内に響き渡るアスカの悲鳴・・・

 

使徒はゆっくりと第三新東京市に向けて歩いていた。

「使徒、なおも進行中」

すでにUN軍が足止めの為に使徒を攻撃していた。だが、使徒の強力なATフィールドに阻まれて、本体まで攻撃は届かない。

「化け物め~!我々の通常兵器では太刀打ちできんと言う事か・・・」

幕僚の一人が呟く。自分たちの兵器に対して絶対に自信があったが、使徒が現れてからというモノ、ネルフのエヴァンゲリオンでしか使徒に太刀打ち出来ない事を再確認していた。

「ネルフの連中はどうしたのだ!!」

「現在連絡中ですが・・・・」

「ええ~い、何の為のネルフだ!!」

いらだちを机に叩きつける。その目は惨劇とも言える軍を移しだしたスクリーンを見つめていた。

 

「シンジ!!シンジ~!!」

ネルフ内にある総合中央病院、そこに重傷のシンジは運ばれる事になった。

「惣流さん、落ち着いた方が良いよ。シンジ君は命に別状はないって言っているんだし」

「そうよアスカ、アスカがそんな状態じゃ碇君だって落ち着いて傷を治せないわ」

「いやいやいやいやいやいやいやいやいやっ・・・・

いや~!!!シンジ~目を開けてよ!開けてってば!!

半狂乱になり、周りを気にする事無く、涙でぐちゃぐちゃな顔のアスカをなだめようとするが、アスカの耳にはその声が届いていない。

シンジを揺らそうとする所を看護婦に止められると首筋に無針注射器で鎮静剤を打たれた。

「いや、いや、い・・・や、シ・・・・・・ンジ・・・・・シ・・・・・・・」

薬のせいか、泣き疲れたか、すぐに眠りに入った。

「惣流さんにとってシンジ君はすべてなんだね」

その言葉にちょっとだけ、悲しみの粒を混ぜた声でレイが答える

「そうよ・・・・・・それよりの今は使徒!使徒を倒さない限り碇君やアスカに顔向け出来ないわ!」

「それもそうだね。二人の笑顔を見たいからね。行こうか、綾波さん」

「うん」

二人はシンジとアスカの眠る病室から足早に立ち去った。

「くっくっく、これで我が主の目的も達せられる・・・」

誰も居なくなった病室から不気味な声が聞こえた事は誰も知らない・・・

 

「第壱から十八番装甲まで損壊」

マコトは驚愕した。

「十八もある特殊装甲を一瞬に・・・」

モニターを見つめていたミサトが一瞬で作戦を決めた。

「今はシンジ君とアスカは使えないわ。よって、エヴァの地上迎撃は間に合わないわ。零号機、参号機をジオフロント内に配置本部施設の直衛に回して・・」

「レイ、カヲル君には使徒がジオフロント内に侵入した瞬間を狙わせて」

「了解、しかし、零号機は・・・」

「零号機がどうしたの?」

言い淀むマコトの変わりに答えたのはリツコだった。

「今、零号機は改装中だったのよ。まだ、戦闘に耐えられる装備は出来ていないわ」

「な、何で今頃そんな事やってんのよ!!!」

ミサトはリツコに噛みつく。リツコも一歩も引かずミサトを睨み返す。

ゲンドウの声が響いた。

「レイは初号機で出せ・・・・ユイが手伝ってくれる筈だ・・・」

その一言でレイは零号機から初号機に乗り換えた。

 

「A10神経接続開始・・・シンクロスタート!」

始めて乗る初号機に戸惑いを覚えながらも懐かしさを感じるレイ。

「やっぱり、ここにはユイさんが眠っているのね・・」

零号機のシンクロ率には追いつかないが、それでも75%を叩きだし、ミサトの命令通りに出撃した。

 

使徒がジオフロントに侵入するまでの短い時間、参号機の中で目を瞑るカヲル

「僕と君の力があれば、大丈夫だよ」

・・・・・・・・・・・・・

「そうだね。彼は力の天使だったね」

・・・・・・・・・・・・・

「それで行けるかい?」

・・・・・・・・・・・・

「分かったよ。綾波さんにも頑張って貰うからね」

参号機の中に居る使徒に話しかける。

力の使徒と称されるゼルエルへの対策は練り終わったようだ。

「じゃあ、行こうか・・・」

その時最終装甲板が破られた。

 

 

シンジの声が聞こえる・・・・

「アスカ、僕の可愛いアスカ・・・」

「シンジ?シンジなの・・?」

「僕はここに居るよアスカ、いつも僕はアスカの隣に居るよ」

「シンジ、隣ってどこよ。どこに居るのよ?隠れてないで出てきてよ」

周りを見渡しても声しか聞こえず、姿は全く見えない。

「僕は何時までもアスカを見守って居るよ」

「何でシンジ?何でそんな事を言うのよ」

その時、急に視界が開けるとシンジの病室が見えた。

ピッ、ピッ、ピッ、ピーーーーーー・・・・・

そこにあるパルスメーターが一本の線を表示した。一本の線・・・・それは・・・

「いや~~~~~!!!!!!」

 

ガバッ

 

「はぁ、はぁ・・・」

最悪な夢から覚めた。

「な、なんて夢を見たの・・・シンジが死んじゃう夢なんて・・・・けど、あれは夢、夢よね」

夢から覚めた事でちょっと落ち着きを取り戻し、部屋を見渡した。

自分が寝ていたベットの横にはカーテンで仕切られていた。

「あれ?ここ、どこ・・・?」

見たことの無い景色に少し動揺する。が・・

 

ピッ、ピッ、ピッ

 

静けさに溢れた病室内に、何かを刻む音に気が付いた。

「あの音は!」

夢で聞いた音に気が付いたアスカは、ダッとベットから起きあがり、隣との仕切りになっているカーテンを勢い良く開けた。

そこには静かに眠るシンジが居た。

「よ、良かった~、やっぱりあれは夢だったのね・・・」

安堵のため息をつく。

だが、シンジの様子は先ほどから変わっておらず、シンジは静かに眠ったままだった。

「シンジ・・・・」

シンジの頬を撫でようとした瞬間!

 

ドド~ン

 

ジオフロント内に大きな音が鳴り響いた。

使徒が最終装甲板を破った音だった。

「使徒!!」

シンジの事ですっかり忘れていたが、使徒が第三新東京市に進行していたのだ。

シンジの顔を少しの間見る。

「シンジ・・・・行ってくるから早く治ってね・・・」

決意を固めるとシンジの唇に自分のそれを重ね、病室から出ていった。

 

ジオフロントの一角に小さな畑がある。

そこには一人の男が少しずつ大きくなりつつある西瓜に水をあげていた。

加持だ。いわゆる内職がばれた為にゲンドウより一時ネルフから離れる様に命令されていた。

「シンジ君の怪我、参号機の目覚め・・・・これもシナリオの一部ですか、碇司令?」

水をあげながら、使徒に対して攻撃を続ける参号機を見つめていた。

その時、走りよってくる少女が居た。

「はぁはぁはぁ・・・・か、加持さん・・・・こ、こんな所で何をしているの?こんな所に居たら死んじゃうわ。早く避難して」

「アルバイトがおおやけになったんでね。戦闘配置に俺の居場所は無くなった。以来ここで水をまいているんだ。」

「こんな時に・・・?」

ちょっといらいらした声でアスカが言う。

だが、加持は冷静に

「こんな時だからだよ。アスカの胸の中って言うのも悪くない・・・と言うのは冗談だが、やはり死ぬ時はここに居たいからね」

「駄目よ!!私は加持さんを殺させない!!シンジだってそう思っているし、私やシンジはその為に戦っているんだから!!だから加持さん、早く避難して!!」

アスカの声を無視し、西瓜に水をあげながら加持が言う。

「使徒がここの地下に眠るアダムに接触した時、人類は全部死ぬ・・・・サードインパクトでね」

「加持さん・・・・」

加持にはまだ知らせていない。シンジと自分がサードインパクトの後の世界から来たことを・・・・・地下に眠る物がアダムでは無いことを・・・

「これを救えるのは使徒と同じ力を持つエヴァンゲリオンだけだ・・・」

「分かっているわ。だから今から私も弐号機の所にいってあの使徒を倒すわ。

だから加持さん、お願い避難して!後で加持さんに話したい事もあるんだから!!」

切羽詰まった声に加持はアスカを見つめる。

アスカも加持の視線から外すことなく見つめる。

「分かった。そのアスカの言葉を信じよう。自分に出来る事、自分にしか出来ない事がある筈だな」

「うん、そうよ。加持さん」

二人は本部施設まで一気に走った。

 

「もうちょっと、もうちょっとの我慢だよ。後少しで綾波さんの準備も出来るからね」

・・・・・・・・・・・・

「君の決意は分かっている。だけど、もう少しだけ待ってくれないかい?」

・・・・・・・・・・・・

「分かって貰えて嬉しいよ。じゃ、後少しだけ頑張って」

カヲルはバルディエルが入り込んだ事によって通常以上の能力を得た参号機で使徒の攻撃をかわす。

だが、少しずつ疲労の色が出てきた為に避けれる余裕も無くなって来た。

「僕達が時間稼ぎをしていれば居るほど勝つ確率も上がるからね」

疲労で顔色が悪くなってきたカヲルではあったが、自分を励ます。

「カヲル!!レイはどうしたのよ?初号機も無かったし、一体レイはどこにいるの!?」

ゼルエルの帯状になっている右手の攻撃をかわした時、アスカの乗る弐号機が駆け寄って来た。

「やあ、惣流さん。あのまま寝てても良かったんだよ」

通信モニターに写ったカヲルの顔色は悪かったが、声はまだ張りがあったのでちょっと安心した。が、アスカは怒り気味の声で言う。

「やあ、じゃないわよ!レイはどうしたのかって聞いているのよ!!

レイが一人で逃げ出す訳ないわ。何か作戦でも考えたんでしょ!」

「まあね。ちょっと小細工をしたのさ。綾波さんはその小細工の調整を頼んでいるんだ。

今の綾波さんの乗る初号機ではどうあがいてもあの使徒には勝てないからね」

「小細工?」

アスカとカヲルはゼルエルの攻撃をかわしながら、話をしていた。

使徒の攻撃が二体のエヴァに行われる事によって、カヲルの負担も軽くなっていた為に軽々と避けれる様に戻っていた。

「そう、小細工さ。今回は彼が頑張ってくれるらしいからね」

カヲルはエントリープラグの天井を見上げた。

アスカはカヲルの行動から彼の正体が分かった。

「本当に信用出来るの?さっきまで敵になるかも知れない奴だったのよ」

「それは大丈夫さ」

「・・・・・・そう、分かったわ。それじゃレイの準備が終わるまでこいつをからかいってやろうじゃないの」

そうと決めたらアスカの行動は早かった。

自分の掌を使徒に向けると小さな虚空空間を幾つか作りだした。

そして、使徒の帯状の手の攻撃をその虚空空間に逃がすことによって、攻撃をかわし続けた。

 

「こちらの準備も終わったわ。後は渚君に任せるわ」

初号機の周りにいくつか設置してあるもの。それがカヲルから頼まれた小細工だった。

「ありがとう綾波さん。今惣流さんが使徒の攻撃を一手に引き受けれくれているから僕や彼も休む時間が出来たよ」

「ちょっとレイ、遅いわよ。私が倒しちゃおうかと思ったところだったわ」

「ア、アスカ来たの!?碇君は・・?」

「シンジは・・・・大丈夫よ。それにこいつを倒さなかったらシンジに怒られちゃうから・・・」

「そう・・・・・」

「じゃあ、二人とも始めるよ」

「そうね・・・・・・・・じゃ、私の方は何時でも行ける様にしておくからお願いするわ」

「ちょ、ちょっとカヲル!私は作戦を全く聞いてないわよ!」

「あっ、そうだったね。じゃ、簡単に説明しておくよ。

惣流さんは使徒を何とかして綾波さんの場所まで運んでくれるだけで良いよ」

本当に簡単だった。

「そんなんじゃ分かんないわよ!!ちゃんと説明しなさいよ!!」

怒りに顔を赤くしているアスカにふ~とため息をつく。

「まあ、楽しみにしていて良いよ。ちゃんと使徒は殲滅するから」

「は~、あんたに聞いたのがバカだったわ・・・・・・分かった、あの使徒をレイの所まで運べば良い訳ね」

「宜しく頼むよ。惣流さん」

始めてシンジの居ない使徒殲滅作戦が始まった。

 

「は~、何でこの私がこんな役目をしなくちゃいけないのよ~」

アスカはぼやきながらも攻撃をかわし、使徒に接近し目の前でいきなり空中へとジャンプをした。

そして、使徒の後ろに回り込むと使徒を掴み、レイの居た場所まで無造作に投げた。

「ほら!そっちに行ったわよ。これで良いんでしょ!」

「さすがだね。じゃ、綾波さん次はお願いするよ」

「了解」

レイは仕掛けた小細工から続くコードの先を持っていた。

それは、N2爆弾を数個まとめた起爆スイッチだった。

小細工とは使徒の足下に仕掛けたN2爆弾で作った地雷だった。

 

カチッ・・・・

ドーン!

 

使徒の足下でN2地雷が爆発した。

それは使徒を倒すためでは無く、使徒を足止めする為の物だった。

「じゃあ、頼んだよ」

参号機は使徒に向かって突進するとATフィールドを中和し、ただ抜き手で使徒の体を傷つけた。

それだけの行動をした参号機は一気に使徒から離れた。

「えっ?それで終わりなの?」

使徒の体に傷を付けただけで撤退したカヲルにアスカは問いかける。

「そうだね。後は彼の力次第だね」

カヲルがそう言うが早いか、使徒の体に異変が起きた。

帯を伸ばすと自らの体を傷つけ始めたのだ。

「何?一体何が起こっているの?」

いきなりの使徒の行動に呆然とするアスカ。

レイは無表情に、カヲルはちょっと悲しそうな顔でその様子を見ていた。

 

グヲーーーッ!

 

自らのコアを攻撃し始め、コアにヒビが入る。

そして、最後の一撃をコアにくわえるとコアが割れた。その途端、使徒の体が崩れ落ちた。

「ありがとう、助かったよ。これでシンジ君の笑顔が見れるよ」

カヲルは参号機に小さくお礼を言った。

 

 

「ア、アスカ?ど、どうしたの?」

目を覚ましたシンジを迎えたのは泣き顔のアスカだった。

アスカは耐えきれなくなり、シンジの胸に飛び込むと声を上げて泣き出した。

そんなアスカの髪を優しく梳く。そして、アスカ以外の人物達・・・・ミサトやゲンドウ、リツコなどネルフの主だった者達に向き直った。

「一体どうしたんですか?皆さんがそろっていらっしゃるなんて・・・?」

シンジの問いに答えたのはミサトだった。

「アスカがここですべてを話すからみんな来てくれって」

「アスカ?」

ミサトの答えを聞いたシンジはアスカを呼ぶ。

いっとき泣いたアスカは顔を上げた。

「シンジ・・・・話しましょ。すべてをそしてこれからの事をみんなで考えましょう」

シンジがアスカに頷いたのはしばらくたった後だった。

 

 

つづく


後書き

参号機の中の使徒との接触、そしてカヲルの言葉・・・・・

そして、謎の声の主・・・・一体誰?

作者の僕でさえ分からなくなりつつある展開にドキドキ・・・・(爆)

Dream to Evaも段々と大詰めに近づいて来ましたし、何とかしないとね(笑)

第十話”祈る心”(仮称)でお会いしましょう。

 

感想、苦情とかありましたらもきゅうまでメ-ル下さい。お願いします。

でわ

 


大好評連載中、もきゅうさんの「Dream to Eva」第九話でした~。
執筆お疲れさまでした、もきゅうさん!

さてさて今回のお話は「第4の適格者」から「男の戦い」までをベースとしたお話ですね。
この九話のメインは何と言ってもカヲル君ですねー。
皆さんご存知のように「DtE」での参号機のパイロットはカヲルなのですが、まさか使徒バルディエルと和解してしまい、更に味方にしてしまうとは…。
ううむ、やるなカヲル。さすが赤い瞳は伊達じゃない(w
そして使徒ゼルエルが攻めてくる訳ですが、シンジ参戦不可も何のその、カヲル、レイ、そしてアスカの活躍により見事撃破! Yeah!
今回も無事ハッピーエンドなのですが、気になる点がいくつか出てきましたね。
カヲルと使徒との接触は何をもたらすのか?
シンジに怪我を負わせたのは一体?
そして謎の声は!?
今後も「DtE」から目が離せませんね!

作者のきゅうさんへ作品のご感想を!
上記まで是非お願い致します(^o^

いよいよお話も大詰めに近づいてきましたね。
これかも頑張って執筆してくださいね、もきゅうさん。思いっきり期待してます!