シンジは鬼の様な表情でずんずん近づいてくるアスカにびびり、後ずさる。後ずさりしていたシンジの目にレイが写った。それはシンジにとって女神にも見えた。
「あ、綾波、助けてよ。アスカを止めてよ」
と言うシンジにレイは
「ちょっとシンジ、いい加減にしなさい!」
「「え」」
シンジを睨み付けるレイにアスカとシンジは驚いた。カヲルだけは微笑んでいた。
「どうしちゃったのよレイは」
シンジとアスカはレイ、カヲルと別れ、マンションに帰ってきた。
「どうしちゃったって僕に言われても」
「どうして、レイがシンジの事を呼び捨てにするのよ。呼び捨てに出来る女の子って言ったら私だけなのに!!」
マナもシンジの事を呼び捨てにしている事をすっかり忘れているアスカ。シンジはテーブルに座って苦笑する。
「アスカ、もしかしてカヲル君の言っていた事じゃない」
「カヲルの言っていた事?」
「うん、カヲル君は綾波はもう少し時間がかかるって言ってたじゃない。もしかしたらその時が来たかも知れないよ」
「それって、あの時からレイが帰ってきたって事?」
「うん、カヲル君は綾波と、母さんの人格が融合したって言ってたよね、と言う事はさっきは母さんの人格が外に出ていたのかもしれないよ」
「そう考えればおかしくないかも・・・」
「けど、あの後すぐにいつものレイに戻っちゃったじゃない」
「そうだね。もしかしたら僕たちとは、少し違っているのかもしれないよ。だって、一人の中に二人分の人格が入っているんだから」
「そうかもしれないわね」
二人は悩むがそれで答えが出るわけでもないので、諦めて寝ることにした。
「お早う、アスカ。沖縄とっても良かったわよ。はい、これお土産ね」
朝、アスカが席に着くと、すでに登校していたヒカリが笑顔で挨拶する。お土産と差し出したのは、小さな箱だった。アスカはヒカリに開けて良いか聞き、包装紙を破らないように開くとかわいらしいイルカのキーホルダーが入っていた。
「ヒカリありがとう。これ大切にするわ」
アスカはすぐに自分の鞄に付ける。キーホルダーを付けたアスカはちらっとシンジのを見るとシンジもトウジとケンスケからお土産を貰っていた。
「センセイ、沖縄よかったで」
「ああ、女の子も解放的で良い被写体が沢山いたよ」
「良かったね」
「そうそう、センセイに土産があるんや、絶対シンジにはこれがええってケンスケが言うもんやさかい、二人で金出しおうてこうてきたわ」
トウジはちょっと大きめの箱を出す。シンジにお土産を渡すとケンスケとトウジはにやにやしながらシンジが箱を開けるように言う。シンジは家で開けようと思っていたが二人の迫力にすぐに開けることにした。開封すると箱の中身は、なにやら怪しげな人形だった。シンジはげっと言う顔をする。ケンスケの眼鏡が怪しく光った。
「ふっふっふ、シンジそれは呪いの人形だ~」
「すまんの~シンジ。ケンスケがそれが良いってきかへんのだ。まっそう言う訳やから快く貰っておいてや」
にやにや笑いながらトウジは言う。
「お前にはそれがお似合いだ。ふっふっふ」
修学旅行の前のままのケンスケ。シンジは結構お土産を楽しみにしていたのに、この仕打ちはあまりにも不幸だった。
余談だが、その呪いの人形はシンジの部屋の押入の奥底に入れられる。
「し、シンジく~ん。助けて~」
何時の間にか学校に来ていたカヲルの側には、女の子達が群がってお土産を渡していた。カヲルは女の子達にもみくちゃにされていた。
カヲルは、シンジに救いを求めたがシンジは呪いの人形を貰ってがっくり項垂れていた為、カヲルに気づくことはなかった。
レイはこの日学校に来なかった。
「レイどうしちゃったのかしら?」
レイは基本的に学校を休まない。休むとすれば使徒が現れた時や、怪我で入院している時だけだ。それを知っているアスカとシンジはレイが心配になり放課後二人はレイの住んでいるマンションに向かった。カヲルは朝の出来事の影響で今日は早退していた。
呼び鈴を押すアスカ、しかし押しても反応が無い。
「これ、壊れているわ」
「うん、僕が前に来たときもそうだったよ」
「それじゃ」
と言いながらノブに手をかけて回すアスカ。ドアにカギはかかっていなかった。
「カギがかかってないわ、全く不用心にも程があるわ」
「うん」
「レイ、いるの~」
部屋に入ろうとするアスカ、其処にレイが現れた。
「あらあら、アスカちゃんね。こんにちわ、あっシンジもいらっしゃい」
レイの反応に驚く二人。レイはさっさと二人に手招きするとさっさと部屋に入っていった。二人はおかしく思いながらも誘われるままに部屋に足を入れた。そこには・・・
「ちょ、ちょっとれ、レイが二人~」
「ど、どうして?」
綺麗にかたずいた部屋のテーブルに付いている二人のレイが居た。
「まあまあ、良いから二人ともこちらに来て座って頂戴」
「そうそう」
二人のレイに言われ大人しくすわるシンジとアスカ。二人の頭には??マークが付いていた。
「二人にはちゃんと話しておきましょうか」
さきほど部屋に誘ったレイがもう一人のレイを見ながら言う。もう一人のレイが頷くと
「取りあえず、私の事は麗子とでも読んで頂戴」
「「れ、麗子」」
「そう、麗子。だって同じ顔の私が同じ名前だと訳が分からなくなるでしょ。だから、ちょっと髪をいじってレイと判別出来るようにしたの」
そう言って髪を振って見せる麗子。確かによく見れば、レイには肩までしか無い髪が、麗子は背中の方までかかっていた。
「髪が伸びてる」
シンジが不思議に思い言う。それに答えたのも麗子だった。
「実は私はね、レイとユイが融合した時に出来た残像の様な物なのよ」
「それってどういう事?」
アスカが麗子に聞く。
「そうね、私はまだレイと融合しきれていない心よ」
「心?」
「貴方達二人が体験したあの世界、あの世界でユイとレイは融合した。しかし1人の体の中には2人の魂は入れない、だから仮の体と言うことで私を生み出したのよ」
二人を見つめながら麗子は説明する。
「それじゃ、母さんと綾波が融合したのが麗子さんなの?」
「う~ん、どっちかって言うとユイに近いかな?やっぱりレイの魂の方が体に合っているから。けど、一度は融合したんだからその内この体も消えてレイに取り込まれるわ。」
麗子はさも当たり前の様に言う。それを見ていたレイはシンジ達に言う。
「今の私はユイさんの魂が少し混じっているの。だから、ちょっと前のレイと違うところがあると思うけど二人ともよろしくね」
前のレイよりは明るく、しかし麗子よりは静かに話す。
「「うん」」
「それと二人に話しておきたいことがあるの」
麗子は改まって二人を見る。
「「なんですか?」」
「ゲンドウさんの事なんだけど・・・」
「父さんの事?」
「司令の事?」
「そう、実は私LCLの海でゲンドウさんに再会したの。その時にゲンドウさんの心の一部が私と結びついた。それで多分・・・・」
「「多分?」」
「多分、貴方達や、私がこちらに来たときにゲンドウさんの心の一部がこちらに来ているはずなの。いえ、それ自体は大した問題じゃないわ。それよりも心配しているのはこちらに来た心がゲンドウさんの一部分でしかないと言うことなのよ」
「それってどういうことですか?」
アスカが言いにくそうなユイに尋ねる。
「その心はユイと会いたかったと言う心と記憶の一部。その心がこちらに来ているとしたら、今のゲンドウさんと融合、そして増幅されるかもしれないって事よ。もし増幅されたとしたら、ユイに会うためにはどんなこともする事になるでしょう。多分貴方達、レイも含めてシンジやアスカちゃんを殺すことになるとしても・・・」
麗子は悲しそうな顔で言う。シンジとアスカは顔を見合わせると、麗子に話しかける。
「ユイさん。いや、麗子さん、私達なら大丈夫です。だってママ達のくれた、絶対力があるもの。それに今は私達みんなで一緒にがんばってるんだから絶対に大丈夫。だから、そんな悲しそうな顔をしないで」
アスカが麗子の肩に優しく手をおきながら言う。
「そうね、貴方達には力があるんだものね。ねえシンジ、アスカちゃんみんなを救ってあげて。今の私は何も出来ないから」
シンジとアスカは力強く頷いた。
レイと麗子は、他の人に見つからない様にマンションでひっそり暮らすことを決めていた。まあ、麗子は思念体に近い物だから、隠れようと思えば隠れられるけど・・・
「ねえ、レイちゃん。これからどうしようか?」
シンジとアスカが帰った後、二人は今後の対策を練ることにした。
「どうしようかと言われても・・・」
「だって、レイちゃんいきなり性格が変わっちゃったのよ。そんなんで学校やネルフに行ったらみんなビックリするわよ」
「そうですよね。リツコさんに会ったら絶対帰して貰えそうにないし」
「う~ん、どうしようか」
二人は考える。
しばらく考えた後、麗子の頭の上に電球が光った。Byサ○風呂
「そ・お・だ」ニヤリ
滅茶苦茶怪しい顔で笑う麗子にちょっと引くレイ。
「ど、どうしたんですか」
「ふっふっふ、この私に掛かれば大丈夫!レイちゃんゲンドウさんに電話、電話よ」
電話、電話と連呼しながら部屋を見渡す。がしかし、レイの部屋には電話が無い。レイはそんな麗子に携帯電話を渡す。
「はい、これ。けど司令に電話してどうするんですか?」
「ありがと、レイちゃん。それは後でのお楽しみ(はぁと)」
と部屋から出ていく麗子。
しばらく電話していた麗子が部屋に戻ると1時間は経っていた。
「はい、レイちゃんありがと。これで全部OKレイちゃんは今まで通り学校やネルフに行っても良いわよ」
「ど、どうやってんですか麗子さん」
「どうやったって、ふっふっふ、それはひ・み・つ(はぁと)」
楽しそうに笑う麗子。レイはそんな麗子に呆れながらも今まで通りに学校や、ネルフに行けることに感謝していた。
サンダルフォン来襲が終わった後、しばらくは平和な日々が続いた。レイの性格が変わったことで学校では人気急上昇で(シンジ以外には相変わらずなアスカを抜いて一位、それを聞いたアスカはむっとなったが・・)ケンスケに写真の追加が相次いだが・・
「そう言えばシンジ、今日進路相談の日よね」
シンジとアスカは廊下で話をしていた。
「うん」
「シンジはどうするの?」
「僕は、人の役に立つ仕事につきたいと思っているんだ。まだ、どんな職種に就こうかは考えていないけど。アスカはどうするの?」
「私はね~」
シンジの方をちらっと見ると頬を赤く染め小声で
「シンジのお嫁さん」(ポッ)
小声だがシンジには良く聞こえた。シンジはアスカの手を握ると
「うん」
笑顔で頷いた。
「あれ~、二人ともどうしたの?何か顔を赤くして~」
丁度レイが二人の側を通りかかった。
「な、何でもないのよ」
プイッと横を向いてしまうアスカ、照れて頭を掻くシンジ、二人を見たレイは
「ふ~ん、何でもないんだ。それじゃ、その握り合っている手はなに?」
二人は繋いでいた手を離し、顔を背けてしまう。レイはそんな二人を見ていて悲しい気持ちになったが、表面には出さず
「二人とも学校ではあんまりいちゃいちゃしないでね」
それだけ言うとレイは教室に入っていく。
「ちょっとレイ、私達いちゃいちゃなんてしてないわよ」
教室に入っていったレイに文句を言う。シンジは 何とも言えない顔でそんなアスカを見ていた。
その頃ネルフでは、出来上がったばかりの参号機の最終テストの最中だった。
「じゃあ、起動実験開始するわよ」
リツコのかけ声と共に始まる。
最終テストとは言え、このテストはパイロットを乗せることさえしないので特に問題も無く順調に進む。すべてのテストが終わり、一段落着いたときにいきなりネルフ中の電源が落ちた。
「私じゃないわよ」
リツコが回りを見渡しながら言う。その言葉に当然実験が終わった後だから実験室に居た作業員(マヤも含む)は納得していた。そこに丁度ミサトが扉を無理矢理開けて入ってきた。(オイオイ)
「リツコ~、何やってんのよ」(ニヤッ)
ミサトを見たリツコはむっとしながら言う。
「私じゃないわ。だって実験が終了した後にすべての電源が落ちたんですもの」
ミサトはリツコならやりかねないと思ったが
「そう、じゃあもうそろそろ電源が入るわね」
「そうね、ココのシステムは正、副、予備の三系統になっているからすぐにでも副回線に切り替わるでしょ」
しばらく、待つ・・・・・・・・・・・・・・・・しかし、電源は回復しない。
「おかしいわ、7分経っても回復しないなんて。とにかく発令所に急ぎましょ」
ミサトが無理矢理開けた扉から、リツコとミサトとマヤは急ぎ足で出ていく。
「シンジ~、今日ってもしかして~」
アスカが何かに気づいたのかシンジに駆け寄ってくる。シンジはトウジやケンスケと話していたので駆け寄ってくるアスカが何を言ったのか分からなかった。
「何?アスカ」
「だから・・・」
アスカはシンジの近くに居るトウジやケンスケを見るとシンジの腕を取り、教室から出ていく。アスカに腕を取られて引きずられていくシンジにトウジやケンスケは野次る。
「センセイ、嫁はんの尻に惹かれてまんな」
「碇、嫁さんを大切にしろよ~」
いつものアスカなら野次られたらムキになって言い返すのに、今日に限って何も言わずにシンジを引っ張っていく。
「アスカ~、どうしたの?」
廊下に連れ出されたシンジはアスカに聞く。
「シンジ、今日ってさ、確か本部に次の使徒が来る日じゃなかったっけ」
シンジはう~んと考え込む。確かあれは、僕が父さんに進路相談の電話をした日だったから・・・
「あっ、そうだ、アスカ。今日だよ、今日使徒が来る日だよ」
アスカの肩を掴み、シンジは言う。
「そうでしょ、って事は今日本部は電気が消えちゃっているって事でしょ」
「うん」
「失敗したわね」
「うん」
「取りあえず、本部に向かいましょ。まだ間に合うかも知れないし」
「うん、じゃあ、綾波とカヲル君にも伝えないと」
「そうね、じゃあ私はレイに言うから、シンジはカヲルを呼んできて」
「分かった」
シンジとアスカはそれぞれ呼びに行く。レイとカヲルは二人の言うことに頷くとヒカリに早退の旨を伝え学校から走り出した。
「また使徒が来るんだね」
走りながらカヲルは言う。
「そうよ、確か4本足だか6本足だかの変な使徒が来るわ」
アスカがカヲルに答える。シンジは全速力で走っている為喋れない。
「私が今度こそディフェンスにまわるわ。アスカはバックアップにまわってね」
レイはアスカに自分の意志を伝える。がアスカは走りながらも首を横に振ると
「駄目よレイ。今度はもっと違う作戦で行くんだから。使徒の攻撃は分かっているんだから昔の様な事はしないつもりよ」
「そうだよ綾波さん。確か今日三号機の最終テストが終わるはずだから僕も手伝うよ」
カヲルはアスカの意見に同意した。
四人は全速力で走ってきた為、結構早くネルフに着いた。アスカは早速IDカードをカードリーダーに通す。しかし、いくらIDカードをカードリーダーに通しても反応しない。
「何?もしかしてもう停電しちゃったの」
アスカは、やっぱりと思った。思った途端に次の行動に移れる、それがアスカだ。
「よし、三人とも行くわよ」
「えっ」
アスカが急に言い出した事に返事に困るシンジ
「えっ、じゃ無いわよシンジ。行くっていったら本部に行くに決まってんでしょ」
「あ、ああ、そうだよね」
「じゃあ、行動開始の前にグループのリーダーを決めましょ。ってこんな時にリーダーになれるのは」
ばっ、とレイを指さし
「レイよ、意義無いわね」
アスカは断言する。
「えっ、私~!!」
レイもリーダーと言えばアスカだねと思っていた時に、自分を指名したからビックリした。
「そうよ。だってレイってこの中の誰よりも本部施設に詳しいじゃない」
「それはそうだけど・・・・」
言いよどむレイ
「いいからレイ、アンタはリーダーとして私達に指示を出して」
どう見てもアスカがレイに指示を出している様にしか見えない。
「アスカそんな言い方をしたら綾波だって困るよ」
「だって、シンジ~」
シンジはアスカから視線を外し、レイを向くと
「綾波、お願いだよ。僕たちを本部まで案内してよ」
シンジはレイにお願いする。レイもそんなシンジのお願いを聞くことにちょっと喜びを感じて、返事をする。
「うん、分かった」
アスカはそんな二人を見ていてむっとなったが、気にしないことにして三人に言う。
「じゃあ、行きましょ」
「アスカ、そっちじゃ無いわ。こっちの第七ルートから下に行けるわよ」
アスカが行こうとしていた逆を向いてレイは言う。
「分かっていたわ」
アスカはレイの指示した方向に歩き出す。カヲルとシンジは顔を見合わせ苦笑すると先に行った二人の後を追う。
第七ルートに入る扉は当然閉まっていた。
「そう言えば、前の時僕がココを開けたんだよね」
シンジは扉の横に着いているレバーを握ると回し始める。が、どんなに力を込めようと回らない。
「あれ、回らないや。前の時には苦労したけど開けれたのに・・・」
「シンジ君僕も手伝うよ」
カヲルもシンジを手伝って回そうとするが中から何か仕掛けがしてあるのか回らない。
「回らないね」
シンジは汗だくで座り込んでいるのにカヲルは涼しい顔のまま言う。
アスカとレイはシンジ達が回している間に次の手を考えていた。
「シンジ、ご苦労様」
アスカの労いの言葉に疲れて言葉が出ないシンジは笑顔で応える。
「でね、ここが開かないんじゃしょうがないわね」
「う、うん。はぁ、はぁ」
荒い息を吐きながらアスカの言うことを聞く。
「あの時日向さんが入ってきたのを覚えている?」
シンジは三人で迷路の様な道を歩いているときに、マコトが車に乗って入ってきたことを思い出した。
「うん」
「でね、レイと話したんだけど日向さんが入ってきた地上の32番ゲートから行く方が早いんじゃないかって」
「うん」
「で、シンジには悪いんだけど、そこまでまた走るわよ」
自分たちがやらなければいけない事は本部まで行き、使徒を殲滅する事だと考えているシンジはアスカに頷いた。
「分かった行こうよ」
立ち上がり、他の三人の後に続いて32番ルートに向けて走り出した。アスカはシンジが心配でしょうがなかったが、シンジにここで待っている様に言っても聞かないことを知っているから黙って走った。走りながらもシンジの方を見ていたが・・
「やっと着いたわね」
32番ゲートの前に着く四人、まだゲートが壊されていない所を見ると、まだマコトは来ていないようだった。
「じゃあレイ後宜しく」
アスカはレイに案内を頼むとシンジに寄り添う。シンジはアスカの気遣いに感謝して笑顔を向ける。レイは今が非常時だと分かっていたが心のなかは穏やかで無い物が渦巻いていた。
『なにこの気持ちは・・・分からない』
カヲルはレイの肩を軽く叩くと
「綾波さん行こう」
レイは、カヲルに言われ、心の中のもやもやを打ち消すように首を横に振ると、歩き始めた。シンジはアスカの肩に掴まり、レイの後に続いた。
「タラップなんて前時代的な飾りだと思っていたけど、まさか使うことになるとはね」
登りながらぼやくリツコ。
「リツコは運動不足だし、たまには良いんじゃないの」
ミサトはからかう。
「ビールの飲み過ぎでお腹が出てきている貴方に言われたくないわ」
「お腹なんて出てないわよ」
「ちょ、ちょっと、先輩、葛城さん止めて下さいよ」
喧嘩腰で言い合う二人を止めるマヤ。ミサトとリツコは相手にムッとしながらも大人げないことに気づく。
「そ、そうね。こんな無駄な言い合いをしている暇はないわね」
「そ、そうよ、リツコ。今は停電の原因を調べる方が先よね」
ほっほっほと笑い合う二人、マヤは二人を見ていて呆れて物が言えなかった。
「ねえ、レイこの道で間違ってないの?」
歩いても歩いても着かない事に嫌気のさしてきたアスカがレイに聞く。
「う~ん、もうちょっとだと思うけど・・・」
「なにレイ、弱気ね」
「だって、私もこの道を通るのは初めてだもの」
いつもは直通エレベーターで本部まで向かっているのでこの道は通っていくことはない。レイは頭の中で施設の地図を思い浮かべながら歩いていく。
「惣流さん、今更ジタバタしてもしょうがないし落ち着いて行こうよ」
カヲルはお気楽に言う。
「そうだよアスカ、綾波だってがんばっているんだから」
「う、うん、分かったわシンジ」
しばらく歩いたお陰でアスカの肩を借りない程度に回復したシンジは言う。アスカはシンジに肩は貸していないが、側に寄り添ったまま歩いていた。その後しばらく歩いていた四人に後方から声が聞こえた。その声は聞き覚えのある声で使徒来襲を告げていた。
「やっぱり使徒が来たの。こんな時だってのに」
シンジ達四人は後ろから来たマコトを乗せたワゴン車に乗り込み、本部まで直行、ミサトに報告していた。
「しょうがないじゃない、それが事実なんだから」
アスカの言うことに頷くとミサトは司令席に座っているゲンドウに報告する。ゲンドウはミサトの報告を聞き、冬月に一言言うとエヴァのゲージに向かった。
緊急用のディーゼルを動かし、四体のエヴァにエントリープラグをセットする為だ。
その間にシンジ達四人はプラグスーツに着替え、エントリーの準備をしていた。着替えていたシンジは、カヲルに聞く。
「ねえ、カヲル君、大丈夫なの?だって今日が始めての戦闘になるし」
「ありがとうシンジ君、けど僕なら大丈夫だよ。エヴァはリリンのしもべ、言うことを聞いてくれると思うよ」
笑顔で話すカヲルにシンジも笑顔を向ける。
「そう、分かったよカヲル君。けど、あんまり無茶はしないでね」
「何時も無茶な行動をするのはシンジ君だと思うけど」
笑いながら言うカヲルにシンジは自分の今までの行動を思い出し、下を向いてしまう。
「そ、そうだよね」
着替え終わった二人は更衣室から出る。そこには先に着替え終わったレイとアスカが居た。
「カヲル、レイ、ちょっと先に行っててくれる?」
レイはアスカに何か言いたそうだったが、黙ってゲージに走り出す。カヲルも苦笑するとレイの後に続いた。
「シンジ、使徒は縦穴に溶解液を流し込み、其処から直接進入を計るつもりよね」
「前の時はそうだったね。僕がオフェンス、アスカがディフェンス、綾波がバックアップで倒したんだよね。そう言えばあの時が始めて三人で力を合わせて使徒を倒したんだっけ」
「そうよ、あの時はシンジに借りを返さなきゃって思っての行動だったけど、今回は違うわ。だってシンジが・・シンジに・・ごにょ・・ごにょ」(ぽっ)
尻つぼみで話すアスカ、シンジはアスカの事を抱きしめる。
「アスカ、僕はアスカに好きだって告白して良かったと思っているよ。だって、いつだってアスカに僕の側に居て欲しいから」
「シンジ~、シンジ~」
アスカは感極まってシンジに抱きつく。シンジはアスカが抱きついてくるとさらに強くアスカを抱きしめた。二人は抱き合ったまましばらく過ごしていたが、場所と時が二人を引き離した。
「シンジ、勝とうね」
「うん」
二人は口づけを交わすと手を握りながらエヴァのゲージに向けて走り出した。
「補助電源により四機とも起動に成功、すべてのエヴァに補助バッテリーを搭載完了」
リツコの報告にゲンドウは頷くと
「エヴァ各機、拘束具を自力にて強制解除」
ゲンドウの命令で、四体のエヴァは自分を押さえている拘束具を無理矢理引き剥がす。補助バッテリーのお陰で、稼働時間は20分と普段より大幅に増えていた。
作戦に関してはすべての通信が使えない為、四人は独自の行動をとるように、ミサトから命令されていた。
アスカは他の三体に通信を開くと自分の作戦を説明した。その作戦とは45番ゲートから地上に出て使徒に接近、エヴァ四体による一斉射撃にて使徒を殲滅これがアスカの立てた作戦だった。
アスカの作戦を聞いた三人は頷き、すぐに行動を開始した。
「アスカ、残り時間あと10分だよ。ここから使徒まで6分ぐらい掛かるから使徒との戦闘に使える時間は4分位しかないよ」
地上に出て最初の声がシンジの報告だった。アスカは通信パネルに写るシンジに笑いかけると
「大丈夫よシンジ、今回の使徒はATフィールドさえ中和してしまえばあっけない敵よ」
それだけ言うとアスカは弐号機を使徒に向けて走らせる。レイやカヲルも自分の持ち場に着く様にエヴァを動かす。シンジはアスカの作戦が成功する事を信じていたが、一抹の不安が頭をよぎった。だがその不安を振り払うように頭を振ると、シンジも自分の持ち場に向けて初号機を走らせ始めた。
「みんな位置に着いた?」
通信を開きっぱなしのアスカはみんなに聞く。
「私は着いたわ」
「僕も着いたよ」
「アスカ、何時でも良いよ」
「全員で使徒のフィールドを中和、その後ライフルに依る一斉射撃で使徒を叩くわよ。じゃ、行くわよフィールド全開」
「「「フィールド全開」」」
縦穴にとりついた使徒は回りをエヴァに囲まれた事に気がついていない様に見えた。アスカは使徒のATフィールドを中和さえすれば勝てると思っていた。
四方のパレットライフルから発射される無数の劣化ウラン弾、みんなが勝ちを確信した瞬間、使徒の回りの目から溶解液を劣化ウラン弾に吹き付けた。秒速550mと言う凄いスピードで進み、少しぐらい溶かされてもその持っている直進力で使徒を貫けるほどの威力を持った弾が、使徒に届く前にすべて溶けきってしまった。
「何、なんなの?」
アスカは今の使徒の攻撃が分からず、誰とも言わず問いかけた。それに答えたのはレイだった。
「強力な溶解液だわ。地下に向けて落としている溶解液を遙かに上回る程の強力な物だわ」
「それでも、使徒は倒さないとね。残り時間もあと僅かだし」
残り稼働時間を見ると1分を割っていた。カヲルは使徒に向けてライフルを連射、しかし、使徒の溶解液の前にすべて溶け落ちてしまう。アスカとレイも連射するが効果は無い。
シンジは考えていた。接近戦じゃやられる、長距離砲のポジトロンスナイパーライフルを持ってこれるだけの時間は無い。じゃあ手持ちの武器で敵の溶解液を弾き使徒を殲滅出来る物・・・・それは絶対力の存在だ!
シンジは通信の繋がっているアスカに
「アスカ、絶対力を使おう!」
「えっ、何?」
自分の作戦が巧く行かず、焦ってライフルを連射していたアスカはシンジの言っている事を聞き逃がした。
「アスカ、絶対力を使おうよ」
再度シンジはアスカに言う。
「絶対力を使うって言っても何を出すの?」
「今は電力もないからスナイパーライフルは出しても無意味、ロンギヌスの槍は水平で投げると被害が大きくなりそうだしやっぱり出せない、と言うことは今使っているこのライフルの弾を、ATフィールドで包めばもしかしたら」
アスカはシンジの言っている事を理解した。ATフィールドは絶対領域、何人にも犯される事のない物そのATフィールドで弾を包めば使徒の溶解液にも負けない最強の弾が出来る。
「分かったわ、その手で行きましょ。レイ、カヲル、二人は使徒のフィールドを全力で中和して、そうしたら私とシンジで使徒を殲滅するわ」
アスカはレイとカヲルにそれだけ伝えると、目を閉じ、シンジとのユニゾンに入った。
「アスカ、碇君、零号機の残り時間をすべてあげるわ」
「全力で中和するから後は頼むよ」
レイとカヲルは使徒のフィールドを中和することに意識を向ける。シンジとアスカはライフルに、いや今から発射する劣化ウラン弾に意識を集中させると寸分の狂いもなくトリガーを引いた。
修理の終わった電源により、視力を取り戻した発令所の人々は動かなくなったエヴァ四体と崩れ落ちた使徒をだった。
喜ぶミサト達を無視し、ゲンドウは呟く
「やはりあの力、ユイが与えたのか」
その頃レイのマンションの屋上では、麗子が四体のエヴァを見ながら呟いていた。
「あの子達凄く強くなったわ。やっぱり、シンジとアスカちゃんに力をあげて良かったわよね、キョウコ」
そう呟く麗子の声を聞いていたのは、背中まである髪を揺らすさわやかな風だけだった。
つづく
後書き
やっと書き上げました第五話をお送りします。
マトリエルのあの目って怖いですよね。テレビで見たときにアスカが誤って扉を開けてしまい、使徒と対面した時凄く怖かったんじゃないかと思いました。
で、今回は地上戦にしたんですが、あまりにもあの目がインパクトがあった為にこんな話にしました。
次の話は僕の好きな落とし物な話になるかな~
ふっふっふ、皆さんの期待を裏切る様な展開になるかも・・・
第六話で会いませう。
感想、苦情、リクエスト、質問等ありましたらもきゅうまでメ-ル下さい。お願いします。
でわでわ
大好評連載中、もきゅうさんの「Dream to Eva」の第伍話でした!
定期的に続きを書いてくださって本当にありがとうございます、もきゅうさん(^^
今回のこの伍話は……おお、いきなりレイが変だ!(笑)
そして何とレイは二人に増えてしまって、レイと麗子さんですか……。むうう、これは意外な展開になってきましたね。
「シンジのお嫁さん」(ポッ)なんていうお楽しみのLASももちろんあって、萌え萌えでドキドキであります。←意味不明(^^;
そしてネルフの停電と共に本部に現れる使徒マトリエル。アスカの考えた作戦は駄目だったけど、シンジとアスカの愛の力(笑)「絶対力」で見事撃破!
1話1話しっかり完結してて、本当に上手い話の構成ですねぇ~(^o^
ハイペースで作品をお届けするもきゅうさんへ作品のご感想を!
上記まで是非お願い致します(^o^
本編に準じたストーリーながらも独自な要素を上手く盛り込んでいて、本当に目が離せません。
次の使徒は……落ちモノっすよね、やっぱ(笑)
いい意味でどんどんえびや読者さん達を裏切ってくださいね、もきゅうさん!