【完結】キツネノヨメイリ

【完結】キツネノヨメイリ

キツネノヨメイリ ‐壱‐

- 黄金色の絨毯だ……。-見渡す限りの黄金色に染まったその風景に,女は魅入られた様にほっ……と,小さく息を吐いた。さわり さわり さわり………。稲穂だ。鮮やかな金色に色づいた見渡す限りの稲穂の群れだ。しっかりと実が入り,重く頭をたれたその金...
【完結】キツネノヨメイリ

キツネノヨメイリ ‐弐‐

さながら台風一過の様な荒廃しきった部屋に一人,アスカはベッドの上に膝を曲げ生気無く座り込んでいた。締め切られた雨戸から僅かに差す陽光が,薄ぼんやりと彼女の部屋を照らす。破れたノート,無残に四肢が千切れて転がったヌイグルミ,粉微塵に砕けた硝子...
【完結】キツネノヨメイリ

キツネノヨメイリ ‐参‐

「………。」クリーム色のツーピースに身を包み,白いレースの日傘を手にしたレイは,黙したまま小さくミサトに向かって会釈した。ショートに刈られた銀色に輝く髪と,その奥に光るアスカとは対照的なガーネット色の瞳…。背が伸びて僅かに大人びた風貌を得た...
【完結】キツネノヨメイリ

キツネノヨメイリ ‐四‐

どれ程時間がたったのか……,困惑するアスカとミサトの目の前で,物悲しいレイの嗚咽は終わりを知らぬかの如く延々と続けられていたが,「………私……」不意に肩を大きく震わせ鼻をすすると,レイはその細い指で瞳から溢れる涙を丹念に拭いながら,「……碇...
【完結】キツネノヨメイリ

キツネノヨメイリ ‐伍‐

眼下に広がるのは,墨を流した様に暗い海だった…。遠く,その海から,ひゅぉぉ……ひゅぉぉぉ………と,冷たい海陸風が,咆哮をあげながら疾駆する獣の様に素早く,闇の中を丘へ向かって駆け上がり,窓から覗いたアスカの頬にかかる赤毛を揺らす。遠く暗い波...
【完結】キツネノヨメイリ

キツネノヨメイリ ‐六‐

さわり…と稲穂が揺れ,しゃらしゃら…と肩を寄せ合った彼岸花の赤が,青い空に映える。草藪の隙間を駆け抜ける風は,干草の香りをまといながら,地に,空に,稲穂の断片を吹き散らし,世界を黄金色に染め上げた。地も空も,たけなわの秋である。「アスカ……...