今日のアスカはどこか落ちつきが無かった。
何か言いたそうなのだが言おうとするたびに
「やっぱりいい 」
と言うのをやめてしまうのだ。
シンジもそんなに重要なことでないのだろうと考え、深く追求しないでいた。
そんな訳で今日の夕飯でもアスカは落ち着きがなかった。
アスカはシンジ特製のシーフードパスタを堪能しながらも上目づかいにシンジをちらちら見る。
シンジはシンジで自分の料理を食べながら
(今日は塩味が足りないな)
などと自分の世界に入っていてアスカの様子に気づかない。
「ねえ、シンジ」
勇気を振り絞ってアスカが話しかけるとシンジは素早く自分の世界から帰ってくる。
「何、アスカ?」
「あ、あのぉ・・・・そのぉ・・・・・」
昨日からこのような調子なのでシンジはたいして心配せずにじっとアスカを見る。
アスカはしばらく沈黙していたが何か確信したように一つ、頷く。
「昨日ね、ママの所から電話があったの」
「うん」
「久しぶりに電話してきたから結構話しこんじゃったんだけど・・・・・・
その時にね、シンジと私のこと話したの」
「どうだって?」
「うん、一度シンジ連れて来いって。
パパもママも一度シンジと話したいからって。
あと・・・・私も死んだママにシンジを会わせたいし・・・・・・。
あと・・・・それに・・・・・・
私達の・・・・・・・・その・・・・・・結婚のことも話したいし・・・・・」
もじもじさせながらアスカがそう言うとシンジ席を立ち上がり、アスカの傍まで行くとアスカの頭に手を乗せ、くしゃくしゃと撫でる。
そしてもじもじするアスカを軽く自分の胸に抱き寄せ、アスカの髪に自分の顔を埋める。
「わかった。
再来週にでも早速行こうか」
シンジがそう囁くと胸の中のアスカは小さく頷いた。
二人でいるために
第4話 「全てが好きだと言えますか?」
「うーん、久しぶり!」
アスカは大きく伸びをすると久しぶりのドイツの空気を思いっきり吸い込んだ。
懐かしい故郷の空気でアスカの心はいっぱいになる。
そして、跳ねるように歩き、周りの風景をきょろきょろ見渡す。
8年ぶりの故郷。
風景こそ変わっていたが空気自体は変わっていなかった。
そしてアスカは突然思い出したようにその場に立ち止まり、くるりと振り向く。
「シンジー!早く来なさいよ」
アスカは手をぶんぶん振りながら笑顔でシンジを呼ぶ。
シンジは周りの好奇の視線に耐えながらも苦笑いを浮かべつつ、それに答えた。
歩速を速めないシンジに業を煮やしたのか、アスカはシンジの傍までやってくると右腕を絡ませ、シンジを引っ張るように歩いた。
「さっさと歩く!
ぼけぼけっとしないの」
「はいはい」
シンジのおざなりな返事に腹を立てることなく、アスカは笑顔を浮かべ、顔をニヤつかせていた。
よほどドイツに帰ってきたことが嬉しいのか、それとも別の理由なのかわからないがとにかく終始アスカはご機嫌だった。
フランクフルト市郊外にあるアスカの家につくと、家の前ではアスカの両親が並んで出迎える。
優しそうな二人を見てシンジはホッとし、アスカは手をとって再会を喜んだ。
「まあ、とりあえず中に入って」
アスカの義父がそう言って二人を家の中に迎え入れた。
シンジとアスカがリビングのテーブルに並んで座りこむ。
しばらくしてアスカの義母が紅茶を持ってくるとやがてアスカの義父もゆっくりと椅子に座りこんだ。
「はじめまして、私がアスカの義父のハインリッヒ=ライマースです」
「母のヘルガ=ライマースです」
「碇シンジです」
3人はそれぞれ自己紹介しながら握手をする。
そして、ヘルガがシンジをしげしげと見ると今度はアスカに視線を移す。
「よかったじゃない、アスカ。
優しそうな人で。
いい人見つけたじゃない」
にこやかにヘルガがそう言うとアスカは胸を張って
「当然じゃない。
アタシが目をつけたんだもん」
と自信たっぷりに言った。
「ところで、シンジ君は今何をしているのかね?」
紅茶をすすりながらハインリッヒがそう言うと、シンジはハインリッヒに向かい合った。
「はい、大学を卒業して、今はネルフのアメリカ支部に勤めてます。
来年には日本の本部に勤める予定です」
「来年というと丁度アスカが大学を卒業する頃だね。
アスカはどうするんだい?」
突然話しを振られたアスカは顔を赤くし、もじもじとして俯いてしまう。
そんなアスカをハインリッヒとヘルガは見守るような視線でにこやかに見詰める。
「そ、そのことなんだけどぉ・・・・」
アスカはそこまで言うと、ちらりとシンジの顔を見る。
シンジもアスカと向かい合うとアスカに向かって一つ小さく頷く。
アスカはそれを見て再び恥ずかしそうな顔で二人に向かい合う。
「シンジ、ずっと本部にいるからアタシも日本に帰ろうと思うの。
それで・・・・いつになるかわからないんだけどぉ・・・・・
ある程度落ちついてきたら、アタシ達・・・・・・その・・・・・
結婚・・・・・しようと思っているんだけど」
その言葉を聞いて二人は手を取り合って大声でそれを喜び合う。
あまりの声にアスカ達はきょとんとしていたがそれが自分たちを祝福しているものだとわかると、アスカ達はにこりと微笑みあった。
「いやいや、まさかこんな報告を受けるとはおもってなかったよ。
そうかアスカが結婚か。
いいじゃないか。
シンジ君ならアスカを幸せにしてくれそうだ」
「ええ、きっとあなたならアスカを幸せにしてくれそうね。
こちらからもよろしくお願いするわ、シンジさん」
まるで子供のように喜んだ二人は大きな笑みを浮かべながら手を差しだす。
シンジはその様子にホッとすると自分も微笑み返して手を握り返した。
(よかった、本当に)
アスカは手を取り合って喜ぶ3人を見て心の底からそう思った。
その日の夜は大宴会だった。
大量のビールとソーセージがシンジ達の前に立ち並びハインリッヒとヘルガはそれらをすごい勢いで空けていく。
それに負けじとシンジ達もビールを空けていく。
次々にビールが追加され、まるで4人は競い合うようにそれらを空ける。
その空間には笑い声が充満していた。
4人の笑い声がいつまでも響いていた。
日が暮れ、あたりが暗くなり月が彼らを照らしてもなお、その喧騒は続く。
まるでそれの終わりが訪れるのを恐れるかのように。
「う・・・・・・・ん」
カーテンの隙間からの差す日差しがアスカの顔を横切り、アスカの目を覚まさせる。
まどろむ意識の中でアスカは腕で目をこする。
そして再びうつ伏せになり、しばらくそのままにしていると少しは意識がはっきりしてきた。
「みず・・・・・・・」
まだアルコールが抜けきっていないのか、ふらふらとした足取りでベッドから降り、台所へ行くと冷蔵庫から水を出す。
一気に水を飲むと再びベッドへと向かう。
「シ~ンジ~」
寝惚けた声でアスカがベッドに飛びこむとアスカはふわりとした感触に襲われる。
期待していたシンジの感触がなかっただけにアスカの表情はかなり残念そうだ。
「シンジ~。
どこぉ~~?」
この場にいないシンジに向けて抗議の声を上げるが、いつまでたってもシンジの声は聞こえない。
「シンジ~。
返事しなさいよぉ~~」
今度は手足をばたつかせ、より大きな声を上げてみるがやはりシンジの声は聞こえない。
「どこぉ~~」
再び足をばたつかせてみてもシンジの声は聞こえない。
ここで騒ぐのがムダだとわかったアスカは手早く着替えると気づかれないように、そろりそろりと部屋を出る。
「どこかなぁ~」
悪戯っぽい表情を浮かべながらアスカはシンジを探す。
シンジがいたら抱きついて脅かそうとでも考えているのだろう。
さっきまでの眠気は既にどこかに行ってしまい、既に今アスカはシンジを探すのに夢中なようだ。
ゆっくりと階段を降りて行き、とりあえずリビングを覗いてみるがシンジの姿は無い。
台所かな、と思ったその時玄関のドアが閉る音が広い家の中にかすかに響いた。
「シンジ?」
そして窓から玄関のほうを見てみると玄関を出て外へ歩いて行くシンジの姿があった。
(シンジどこ行くんだろう?)
そう思った矢先、アスカはシンジの後を付けようと自分も外へ出る。
そしてシンジの後方五十メートルくらいのところを隠れながら歩く。
シンジは特に迷う素振りも見せず真っ直ぐ目的地に向かっていくようだ。
(シンジ、ドイツ来た事ないのにどうして道知っているんだろう?
ママかパパにでも教えてもらったのかな?
でもホントどこに行くのかな・・・・・
あっ、あの中に入った)
アスカが考えながら付けているとシンジは小さな店の中に入る。
(花屋・・・・・・?
なんで花屋なの?)
しかしそこが目的地ではなかったらしく、シンジはそこで花束を買うと再び目的地に向かって歩き出す。
そしてシンジが歩いて行くにつれてアスカはなぜか懐かしい感じを覚えた。
(なんだろう・・・・・・
どこかでこの風景見た事ある。
記憶から消えているけど・・・・・・・やっぱり来たことある。
あの家、あの木。
見覚えがある。
確か・・・・あの角を曲がったら赤い屋根の家があって・・・・・あった!
そしてそこを過ぎると右手に林が・・・・・・・あるわね。
そう、そしてその林の中の道を抜けると・・・・・そう、そこには・・・・・・・・・・・)
その先には教会があった。
小ぶりで白い壁の小さな教会。
林の木々からの漏れる光がステンドグラスを照らし、その模様が綺麗に浮かび上がらせる。
木々の中にたたずむその教会からは荘厳というイメージは受けないが包みこむような優しさは感じ取れる、そんな教会だ。
今日は平日なので来る人が少ないようだ。
少なくともアスカとシンジ以外教会へと向かう人はいない。
アスカは周りを懐かしい目で見る事もなくただシンジの背中だけを追った。
ここまで来るとシンジがどこに行こうとしているのか、アスカには理解できた。
だから懐かしむ事などアスカにはできるわけがなかった。
自分に内緒にしてまでここに来る理由がアスカにはわからなかったが、今はシンジを信じる事しか出来なかった。
教会の裏手へと回る。
緑色の芝の絨毯が敷き詰められたそこには数々の墓石が立ち並んでいた。
シンジは墓石を一つ一つ見る。
やがてある墓石を見るとそこに座りこみ花を墓石の前に捧げる。
そしてその墓石にはこう、書かれていた。
偉大なる科学者、惣流・キョウコ・ツェッペリン。 ここに眠る
と。
シンジはただ墓石をじっと見つめていた。
しかしよく見ると僅かに口が動いているように見える。
どうやらキョウコに何か話しかけているらしい。
アスカはシンジの話している内容を聞くためにその墓石の近くにある木に身を隠しながら耳をそばだてた。
「はっきり言ってあなたが憎いです」
アスカの耳に飛び込んできた言葉はアスカにとって衝撃だった。
なぜシンジが自分の母を憎むのか、アスカはてっきりシンジが一足先に結婚の挨拶でもするのだろうと思っていただけに衝撃だった。
少し動揺しながらもアスカは再び耳をそばだてた。
「僕が何をやったって、アスカきっとあなたの事で一生苦しむと思う。
アスカの苦しみをいくら僕が薄めてあげても決してそれがなくなる訳ではないし。
そう思うと、アスカを一生苦しませるのかと思うと・・・・・そういう苦しみを作ったあなたが憎いです。
正直、アスカにあなたの事は忘れて欲しいです。
そうすればアスカ負い目も無くなって。
これから幸せに暮らして行けると・・・・・
違う・・・・・違いますね。
僕が好きになったアスカは心にあなたがいないアスカじゃない。
心にあなたが住んでいて、心に負い目があるアスカなんですよね。
そういうアスカを僕は好きになったんですよね。
そうですよね。
僕がそんなんじゃダメですよね。
僕はアスカが好きです。
アスカの長所も短所もどちらも好きです。
だからアスカの今と未来だけじゃなく、過去も含めた全てのアスカを好きにならなくちゃダメなんですよね。
僕はアスカの過去も今もそしてこれからもアスカをずっと好きでいます。
それだけは胸を張って誓えます。
だけど・・・・
けどアスカにはまだ話してない事があります。
父さんの事、綾波の事、そして・・・・・カヲル君の事。
どれも今まで僕の胸にしまってきました。
どれもみんな辛すぎる事ばっかりだったから。
だから・・・・アスカには話さないって決めてました。
でも、違いますよね。
僕がアスカの全てを好きになったんだから、アスカに僕の全てを話さなくちゃいけないんですよね。
そうですよね・・・・・・・・。
今度話してみようと思います。
正直怖いけど・・・・・・・でも僕はアスカを信じているから・・・・・
だから、アスカを信じて話してみます。
アスカならきっと全てを話しても好きでいてくれると思います」
「じゃ、聞かせてよ」
背後から突然アスカの声を聞いたシンジは驚きの表情を浮かべながら素早く振り向く。
アスカはシンジに微笑みを向けながらゆっくりと近付いてきた。
そしてアスカがシンジの横に立つと座りこんでいたシンジも立ち上がる。
シンジは驚きか、それとも緊張からか何か言いたそうな感じで下を俯いている。
アスカはそんなシンジの姿を見るとにっこりと大きな微笑みをシンジに向けた。
「ありがとう、シンジ。
アタシの全てを好きになってくれて。
アタシ・・・・とても嬉しかった。
本当に・・・・・・・・。
だからアタシもシンジの全てを知りたい、全てを好きになりたい。
シンジの苦しかった事、辛かった事、シンジの胸にしまってきた事。
全部、話して」
「わかった話すよ。
話し、長くなるからあそこのベンチに座ろう」
シンジとアスカは木陰にあるベンチに座りこむ。
そしてシンジはすこしづつ話した。
葉の間から覗く青空を見上げながら思い出すように話し始めた。
少しずつ、少しずつ。
シンジは淡々とした口調で、そしてある時は肩を震わせながら話した。
そういう時は決まってアスカがシンジの手を握り締めていた。
アスカはシンジの言葉を一言も聞き漏らさないように真っ直ぐにシンジの瞳を見続けた。
そしてシンジの長い独白も終わる。
「これで、全部。
全部話した。
わかった?
僕はこういう人間なんだ。
臆病者で、卑怯者で、自分のことしか考えてなくて、そのくせすぐに逃げ出す最低な奴なんだ」
シンジは自分自身を蔑むような表情をしながら自嘲的にそう喋る。
そしてそう喋るシンジにアスカは常に優しい視線を向け続けた。
シンジから視線をそらすこと無く。
「その上、辛い事から逃げ回ってばっかりで、綾波が人間じゃないってわかると今度は綾波からも逃げ出して・・・・・・
そしてその上、大切な友達を傷つけたり・・・
そして・・・・そして・・・・好きだといってくれた人まで・・・・・好きだといってくれた人を殺してしまうような奴なんだ!
朝起きるとね、時々思い出すんだ。
あの時の感触、音、そして僕に微笑みかけるカヲル君の顔が浮かんでくるんだ・・・・
そしてその時の僕の手は真っ赤に染まっている!
カヲル君の血で真っ赤の染まっているんだ!
いくら洗っても落ちないんだよ・・・・・・血の色も、匂いも・・・・・・
落ちないんだよ・・・・・・・」
そう言い終えるとシンジは崩れ落ちるように俯き、両手で顔を覆ってしまう。
歯をガチガチと震わせ、肩も小刻みに震わせているその構図は、まるで何かに怯えているようだ。
いや、実際怯えているのだろう。
過去という名の亡霊に。
アスカは決して哀れみの視線をシンジに向ける事はしない。
今アスカがしてあげる事は同情では無いのだ。
それがわかっているからこそアスカは精一杯の微笑みを向けていた。
そしてアスカは静かに話し始めた。
母親が子供に諭すような口調で。
「いい?
よく考えてみて。
今まで何年も会ってなかった親から連絡が来て、その上わけわかんないもんに乗せられて戦えなんて言われたら普通は動揺するわよ。
アタシなら怒って帰るわよ。
けどシンジはきちんと乗ったんでしょう、それだけで偉いわ。
シンジは悪くないわ・・・・・・。
鈴原を怪我させてしまったのはシンジのせいではないわ。
あれはダミープラグか勝手にやったんでしょう?
ましてやシンクロ率をカットされていた、シンジはどうすることも出来なかったじゃない。
あれは不幸な事故だったのよ、だから悪くない。
シンジは悪くないわ・・・・・・。
それとレイの事だけれど、あれも仕方ないと思う。
自分の友達が人間で無いって知ったらそりゃ誰だって驚くわよ。
どういう顔して会えば言いかわからないから避けてしまうのも仕方ないと思う。
だってそうでしょう?
人間そんなに物分りよくないし、瞬時に気持ちの切り替えが出来るほど器用な生き物じゃないもの。
ね、だからシンジは悪くない」
「でも・・・・僕はこの手で人を殺したんだ。
しかも好きだといってくれた人を、僕も好きだった人を殺したんだ。
僕は人殺しなんだよ!」
「違うわ」
アスカはゆっくりとした口調でそう言うと立ちあがり背中を丸めて俯くシンジの正面に立つ。
そして母親のような微笑みを浮かべる。
「シンジ、でもそうしなければアタシは死んでいたわ。
シンジがあの時カヲルを殺さなかったらアタシが死んでいたわ。
アタシは・・・・・感謝している。
シンジはアタシを助けてくれたから。
みんなもきっとそう思ってる、シンジが自分の命を助けてくれたって。
それにね、あれは仕方なかった。
シンジはカヲルを殺さないでみんなが助かる方法があったかもしれないと思っているかもしれないけれどそれは違うわ。
カヲルは使徒だった。
アタシ達とは決して分かり合えない存在だった。
考えてみて?
もしシンジが弐号機と戦っていて時間を取られてしまっていて、地下にあったのがアダムだったらカヲルはサードインパクトを起こすのをためらったと思う?
それはないでしょう。
きっとカヲルはシンジもろとも人間を滅ぼしていたでしょうね。
カヲルは最初から人間と分かり合える存在ではなかった。
シンジはそれがわかっていたから、みんなを助ける為にカヲルを殺したんでしょう。
シンジは正しい事をした。
シンジは悪くないわ」
「でも・・・・でも僕は・・・・」
「シンジ、苦しみをあなた一人で抱え込む事ないわ。
アタシはシンジから離れたりしない。
ずっと、ずっと傍にいてあげる。
楽しい事も、辛い事も、苦しい事も、悲しい事もアタシがいっしょに感じてあげる。
だって、アタシはシンジのこと愛しているんだもの。
苦しみを共有する事くらい、当然の事よ」
そう言い終えるとアスカは俯いたままのシンジを自分の腹に抱え込むようにして抱きしめる。
震えるシンジの背中をさすりシンジを落ちつかせるように時折軽く背中を叩く。
「もう、怖がらなくていいのよ。
アタシが傍にいてあげるから、ずっと一緒にいてあげるから。
シンジが人殺しだろうとアタシはシンジのことが大好きよ。
だからね、心配しなくていいのよ
アタシはシンジのこと嫌いになったりしないわ」
「大丈夫、シンジは悪くないわ」
何回もその言葉を口にしながらアスカはシンジの頭を撫でつづけた。
それは、シンジの震えが収まるまでずっと続けられた。
「アスカ・・・・・・泣いてもいいかな?」
シンジがそう言ったのは震えが収まってしばらくたってからだった。
シンジの願いにアスカは
「いいわよ」
と笑顔で答える。
するとシンジは両手をアスカの腰に回し、アスカにしがみつくような格好で抱きつく。
「怖かった・・・・
怖かったよ、アスカ・・・・・怖かったよぉ・・・・・・・」
涙声でそう言った途端にシンジは大声をあげて泣き始めた。
泣いている途中もシンジは何度もアスカの名前を呼び、アスカはそのたびに
「大丈夫よ」
といいながら頭を撫でていた。
「大丈夫よ。
アタシはここにいるから大丈夫よ。
シンジのこと嫌いにならないから。
安心していいのよ」
アスカはそう言い、自分の腹で泣くシンジの頭を撫でながら母の墓石を見る。
(ママ、アタシこの人に会えてよかった。
この人となら一生、生きていける。
これからずっとお互いの事を見ていく自信がある。
もう、アタシは一人じゃないわ。
だってシンジがいるもの。
これくらい力強い事はないわ。
ママ、心配しなくていいのよ。
これからは安心して眠って。
ママ、いままでありがとう)