「・・・ふぅ、こんなもんかなぁ・・・・」
ベッドメイクを終えたシンジは、部屋の中をゆっくりと見回した。
荷物を運び入れ、整頓したばかりの部屋。
長い間使われていなかっただけあって、微かに饐えた匂いが鼻につく。
が、それ以外は特に問題はない。
シンジはベッドにゴロン、と身を横たえ、見慣れない天井を見上げた。
そして目を閉じ、ここ数週のうちの出来事をなぞり始めた。
まず、初号機からサルヴェージされたユイにレイ、アスカを引き合わせた事。
事情を説明しておいたにも関わらず、二人の驚きは相当なものだった。
何せ雰囲気が違うとはいえ、レイが二人いるのだから。
引き合わせてからすぐ、『女性だけの話だから』という事でユイに病室から追い出されてしまったシンジ。
三十分ほど廊下で待っていると、頬を微かに上気させたアスカとレイが出てきた。
話の内容を聞いたが、『ナイショ』の一言で片付けられてしまい、未だにどんな会話をしていたかはわからない。
そして、ゲンドウの事。
あの日以来、彼からは何も言ってこない。
尤も、元々連絡を取り合った事などないので、今までと変化はないのだが。
特に不穏な動きもない、と加持は言っていた。
ユイが初号機のコアへと再び戻っていった事。
ゲンドウと会談した日の深夜、ユイは初号機へと戻っていった。
試験に立ち会ったのはリツコ、マヤ、ミサトの三人。
その後に行った起動試験でも問題はなかったので、恐らく上手くいったのだろう。
そして、レイの引越し。
ユイ、リツコの提案と、何より本人の希望もあってレイは葛城家で同居が決まった。
そこで問題になったのが部屋割である。
葛城邸の部屋数は三つ、そして住人は四人。
喧喧諤諤とした議論の結果、レイがシンジの部屋に入り、押し出された形でシンジが隣へと移る事となった。
当然の如くアスカは文句たらたらであった。
レイが嫌というのではなく、シンジと別居になるのを嫌がったのだ。
ここは基本的に寝るだけの為の部屋であり、食事等に関しては現状を維持する事でアスカも納得させた。
そして今日、引越し作業を行ったのだ。
家具は備え付けのものを使うので、持ち込むのは着替えと私物のみ。
元々荷物が少ない二人なので、運搬にはさほど労力を必要としなかった。
それでも、部屋の整理には二時間近く掛かってしまったが。
隣の部屋から聞こえていた物音も、今は聞こえない。
どうやらレイも片付けを終えたようだ。
時計を見ると、夕食の仕度に取りかかる時間になっていた。
シンジは身体を起こすと、部屋の電気を消して廊下へ出た。
誰もいない部屋に、開け放たれた窓から風が吹き抜けていった。
其ノ九:レイ
「・・・・・あれ?」
キッチンに入ったシンジが見たものは、エプロンを身に着け動きまわるアスカとレイの姿。
アスカはレンジの前で鍋とにらめっこ、レイはサラダを盛り付けている最中。
シンジに気付いたアスカが振り返った。
「あ・・・もうちょっとで出来るから、リビングで待ってて?」
「なんだ、声を掛けてくれれば手伝ったのに・・・・・」
「いーからいーから。
こっちはアタシとレイがやってるからサ、ミサトの相手でもしててよ」
リビングを見ると、ミサトがビール缶を片手においでおいでをしていた。
アスカに言われるがまま、リビングに入るシンジ。
「・・・・どうしたんですか?一体・・・・・」
「なぁんかね~~、二人とも張り切っちゃってンのよねぇ・・・・ま、タマにはいーでしょ?」
「でも、今日は綾波の・・・・」
「いーからいーから♪レイが自分でやりたい、って言ってンだから。
家族の間に遠慮はいらないわよ♪」
「・・・・・それもそうですね」
シンジはキッチンを振り返った。
アスカとレイは楽しそうに笑いながら、料理に精を出している。
それは、以前の『世界』では決して見られなかった光景。
同じ『家族ごっこ』であったとしても、今と前とでは全く違う。
以前にはなかった絆が、今はひしひしと感じられる。
そんな幸福感に、自然とシンジの顔が綻ぶ。
「どうしたの、シンちゃん?ニヤニヤしちゃってぇ♪」
「ニヤニヤなんてしてないですよ・・・・・ただ、嬉しいなって・・・・」
「そぉりゃそ~でしょぉ、あんな極上の美少女二人に慕われてるんだからね♪」
「・・・・・まったく、ミサトさんは・・・・」
シンジは呆れた顔でミサトを見た。
「ナニよぉ・・・違うの?」
「・・・・さっきミサトさん、家族・・って言いましたよね?
以前の世界でも僕達はこの家で暮らしてたんです・・・家族として。
だけど、それはうわべだけの繋がりで・・・・自分の役割を演じてた、って言えば良いのかな?
お互い通じ合う事なく、最後は・・・・・・・いや、最初からバラバラだったんですよね、きっと。
けして以前の事を否定するわけじゃないんです。
あの頃を経験したから、今の僕がいるわけだし・・・
でも、今は・・・ミサトさんと、アスカと、そして綾波とも・・・・本当の意味での絆ができたと思うんです。
少なくとも僕は、最後までみんなを信じることが出来るから。
だから、それが嬉しくって・・・・・・」
「・・・シンジ君・・・」
「・・・・でも、まだ終わりじゃない。
残る使徒は七体・・・・今までの使徒とは比べようのないくらい強大になっていくんです。
それに、本当の『敵』もまだ・・・・・・」
ミサトは思い詰めたような表情で俯くシンジの額に額を合わせ、諭すような口調で話し始めた。
「・・・・ねぇ、シンちゃん。
『一蓮托生』って言葉・・・・知ってる?」
「『一蓮托生』・・・・ですか?」
「そう・・・・人生は浮き沈みの繰り返し、良い時もあれば悪い時もあるわ。
一蓮托生ってね、たとえどんな時であっても行動や運命を共にすることを言うのよ。
・・・・・今の私達に当てはまると思わない?」
「・・・・そう、かもしれません」
「シンジ君にとっても、私にとってもきっと今は良い時なのね・・・・だって私、幸せだって思うから。
でもあなたの言う通り、この先に何が起こるかなんてわからないわ。
もしかしたら悪いコトが重なるかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
でもね?あなたは決して一人じゃないわ。
私も、アスカも、レイも、加持君も、リツコも・・・・あなたの傍にいるヒトは皆、運命を共にしているのよ」
「・・・・・・・」
「あなたは全てを背負い込もうとするクセがあるわ・・・今もそう、自分が何とかしなきゃ駄目なんだ、って思ってる。
でも・・・『絆ができた』って、あなた自身が言ったコトでしょう?
・・・なら、私達を信じて。
あなたがみんなを守ろうとするように、私が、みんながあなたを守るの。
私達は一蓮托生・・・・・全員で力を合わせて、運命を切り開いていくのよ。
それだけは忘れないで頂戴、シンジ君」
「・・・・・ありがとう、ミサトさ・・・・姉さん・・・・・」
至近距離で顔を見合わせる二人。
その瞳には、互いの笑顔しか映っていない。
だが、間が悪い、とはまさにこの事か。
「お待たせ~~・・・・・・って、アンタ達ナニしてんのよぉっ!!!???」
出来立ての料理を持ってリビングに入ったアスカ、レイ。
自分の眼前で、想い人が他の女性と今にもキスしそうな体勢にいるのだから、アスカが大声になるのも致し方ない。
ワナワナと肩を震わせるアスカ、冷ややかな視線をミサトに向けるレイ。
そんな二人をミサトは平然と見上げ、シンジは顔を真っ赤にして俯く。
「・・・・ミ~サ~トぉ~~~~~!?
アンタ、いつからショタになったのよぉっ!?」
「・・・・・葛城三佐・・・・碇君はダメ・・・・・・」
「ちょっとぉ、二人とも・・・・・・・なぁに勘違いしてンのよぉ?
姉弟がちょ~~っちコミュニケーションを取ってたダケじゃない♪」
「ウソつくなぁぁ!!
アンタ、今シンジにキスしよーとしてたじゃないっ!!!」
「勘繰りすぎだってばぁ、アスカぁ・・・・リツコじゃあるまいし♪」
「な・・・・何でミサトが知ってンのよ!?」
「さぁて、どしてかしらん?
ま、い~じゃないのぉ・・・・・ちゃんと口直ししたンでしょ♪」
「な・・・・・・・・・・」
レイの眉がピクッ、と上がり、視線はアスカへ。
ニヤリ、と笑うミサト 完全にからかいモードに突入。
アスカは顔中を真っ赤にしたまま、口をパクパクさせていた。
恥ずかしさと驚きのあまり、言葉が出てこない。
シンジは 言わずもがな、完全に固まっている。
「・・・・・・アスカ・・・・・・どういう事?」
「レイ、妬いちゃダメよん♪
あなたにもまだまだチャンスはいっくらでもあるンだから♪」
「・・・・・・私が・・・・・碇君と・・・・・・(ぽっ)」
「・・・ダメダメダメぇ!!
いくらレイでも、シンジだけはダメぇ!!!」
睨み合いに転じるアスカとレイ、固まったままのシンジ。
三者三様の反応を見て、クスクス笑うミサト 意地悪な姉である(苦笑)
「・・・・さ、せっかく作ってくれた料理が冷めちゃうでしょ?
早く食べましょ♪」
「・・・・・ったくぅ・・・・・・油断も隙もありゃしないわ・・・・・・」
アスカはブツブツ言いながら、少々乱暴に料理をテーブルに並べていく。
そして、リビングとキッチンを何度か往復するうちに全ての皿がテーブルに揃う。
その料理を見て、シンジは感嘆の声を上げた。
「うわぁ・・・・色々と作ったんだね、美味しそうだよ・・・・」
「シンジほど上手くはつくれないけどサ、アタシとレイとで頑張ったんだよ。
さぁ・・・食べてみて?」
「ありがとう、アスカ、綾波・・・・・それじゃ・・・・」
「あ、ちょっち待ってて♪」
ミサトはキッチンへと移動して、何かゴソゴソとやり始めた。
「お待たせ~~♪」
ミサトは両手にグラスと酒瓶を持ち、戻って来た。
全員の前にグラスを置き、瓶に付いていた金具を取り払う。
嬉々としているミサトに、シンジは訝しげに聞いた。
「・・・・何ですか、それ?」
「シャンパンよ、シャンパン。
レイが今日からウチに仲間入りするワケでしょ?
乾杯くらいしないとね♪」
「シャンパンって・・・お酒じゃないですか・・・・」
「いーのよ、カタいコト言わないのぉ・・・・・保護者のアタシが許す♪
いっくわよぉ~~~?」
シュポンっ!!
小気味良い音と共にシャンパンのコルクが抜けた。
グラスの中が、細かい泡の立つ美しい琥珀色に染まる。
「・・・はい、みんなグラス持った?
それじゃ・・・新しい家族が加わったコトを祝して、乾杯!」
ミサトの掛け声と共に、合わさるグラス・・・・のはずが、レイだけはグラスを両手に持ったまま動こうとしない。
「・・・レイ?」
「・・・家族・・・・配偶関係や血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する集団・・・・・・・」
「・・・・それがどうかしたの?」
「私が・・・・・その中に入ってもいいのですか?」
「あったり前じゃない・・・みんな歓迎してるわよ♪」
「・・・・・・でも・・・・・・私は・・・・・・・・ふみゅ?」
突然、俯き加減のレイの鼻をアスカが摘み上げた。
「・・・・あひゅか?」
「レイ・・・アンタがナニを言おうとしてるぐらいわかるわよ。
アタシも、シンジも、ミサトも・・・・そのコトは知ってる。
でも、気にしてないでしょ?
何故だか、わかる?
アンタは・・・・レイはアタシ達と何一つ変わらない、同じ『ヒト』だからよ。
この前、ユイさんだって言ってたじゃない。
『産まれ方はどうであれ、あなたは立派なヒトよ。だから、胸を張って堂々と生きなさい』って・・・・・・
いつまでもクヨクヨイジイジしてンじゃないわよ!わかった!?」
・・・・・・・コクン。
「よろしい!」
「・・・・・ありがとう、アスカ・・・・・・・でも、イタイ・・・・・」
満足そうに頷くアスカ、それを見つめる二人。
微かに赤くなった鼻をさするレイ。
だが、その痛みも心地良いものだった。
全員に笑顔が戻ったところで、再びミサトがグラスを持ち上げた。
「それじゃ、もう一度!
新しい家族に、カンパ~~イ♪」
「「「乾杯!」」」
軽い音を立て、触れ合うグラス。
ミサトは一気に飲み干すと、箸を手にテーブルを見回した。
「さぁって、食べましょうか♪
ど・れ・に・し・よ・う・か・なぁ♪」
いかにも腹が減った、といった感じで、手近なものを手当たり次第に小皿へと取っていく。
つられたようにシンジもスプーンを手に取ると、手元にあるスープ皿を掬い、一口飲んだ。
アスカとレイはちょっと緊張気味な面持ちで、シンジの様子を覗っている。
「・・・・・どう?」
「うん・・・・美味しいよ!」
「・・・・・ホント?」
「ウソなんて言ってどうするのさ・・・・・腕が上がったよね、二人とも」
シンジの笑顔がその言葉に嘘がない事を表わす。
二人は安堵したのか、ようやく箸を手に取った。
和やかな雰囲気の中、食事は続いた。
お腹が落ち着いたのか、ミサトは満足そうな笑顔でビールのプルタブを引き開けた。
何缶目かなんて、数えるわけもない。
「・・・・でもホント、美味しいわ・・・・・これならシンちゃんも安心ね♪」
「何がですか?」
「どっちをお嫁さんにしたって、料理の心配がないってコトよん♪」
「・・・・ぐっ!ゲホゲホっ!!」
ミサトの言葉に咽せてしまったシンジの背中をアスカが擦り、レイは麦茶を差し出す。
二人とも瞬時にその光景を想像したのだろうか、頬が赤く染まっている。
「ちょっとぉ、ミサト!いきなり突拍子もないコト言わないでよ!!」
「あ~ら、一般論よ、一般論♪
やっぱお嫁さんにするには家事ができるコじゃなきゃ♪」
「・・・・・・・だから葛城三佐は結婚されないんですか?」
「ぐっ・・・・・ソレは・・・・・」
「きゃ~~~っはっはっはっはっはっは!
ナイスよ、レイ!!」
「・・・・前に赤木博士が言っていたもの。
『ミサトの作るカレーは化学兵器に匹敵するわ。』って」
「・・・・・リツコめぇ~~~~・・・・・」
「・・・・・・ははは・・・・」
からかったつもりがレイの一言で形成逆転、思わず笑顔が引き攣るミサト。
自分の発言の意味がわかっていないのか、キョトンとしているレイ。
アスカは腹を抱えて笑い、シンジは苦笑。
そんな状況を変えようと、ミサトはいきなりレイに振った。
「・・・・そうだ、レイ?
ウチの家族の一員となったからには、守って貰いたいことがあるんだけど・・・・」
「・・・・何でしょうか、葛城三佐?」
「ま~~~たくっだらないコトでも言い出すんじゃないでしょーねぇ?」
「そんなんじゃないわよ、アスカ・・・・・
あのね、レイ?
ココはNERVじゃないわ、だから・・・・・・・・私の事はミサト、って呼ぶこと」
「・・・・それは命令ですか?」
「いいえ、違うわ・・・お願い、かしら?」
「お願い・・・・・?」
レイの表情から困惑している事を読み取ったシンジが、助け舟を出す。
「綾波・・・・今日から僕達は一緒に暮らすだろ?
ミサトさんはね、気兼ねはいらない、って言ってるんだよ。
一応ミサトさんは僕達の保護者になる訳だけど、ここではNERVみたいな上下関係なんてない。
だから、名前で呼んでほしいって言ってるんだよ・・・・・・アスカの事だって名前で呼んでるだろ?
勿論、共同生活をしていく上での決まり事はあるけど・・・命令とかそういうものではないよ」
「そうそう、シンちゃんの言う通りよ、レイ。
わかった?」
「はい・・・・・ミサト・・・・・・さん。」
「そう、それで良いわ♪」
小声ながらも名前を呼んだレイに、満足そうに頷くミサト。
そして何かを思い付いたのか、ニヤっ、と唇の端を吊り上げて笑った。
「・・・・ついでだからシンちゃんの事も名前で呼びなさい、勿論、シンちゃんもよ?
『碇君』『綾波』って苗字で呼び合うのも堅苦しいじゃない?」
「「ええ~~~~!?」」
シンジは恥ずかしげに、アスカは不満げたっぷりにミサトを見た。
「どうしてそうなるんですか・・・・僕は今のままで良いですよ・・・・」
「そーよ、そーよっ!
別にシンジのコト、名前で呼ばせなくったっていーじゃないっ!!」
「あららぁ、シンちゃん?
気兼ねなくってコトだから名前で・・・って言ってたのはだぁれ?
それにぃ、シンちゃんってばレイ以外はみ~~~んな名前で呼んでンのよ?
アスカでしょ、私でしょ、リツコにマヤも・・・・・なぁんでレイだけダメなのかなぁ~~~?」
「・・・そ・・それは・・・・・・」
「そンなの詭弁じゃないっ!!
本人がイイって言ってンだから、強制するコトもないでしょーが!!」
「あ~ら、アスカぁ?何でジャマするのぉ?
そっかぁ・・・・・同じ年頃の女のコの中では自分だけ呼び捨てだから、それがイヤなんだ♪」
「そっ・・・・・・そンなコト言ってないわよぉ!!」
「・・・・・・シンジ・・・君・・・・・(ぽっ)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(赤)」
大騒ぎの中、レイの一言に二人は真っ赤になって俯く。
見たくも聞きたくもない光景に、アスカは更にヒートアップ。
ミサトはますます上機嫌。
「くぅ~~~~~~、この初々しさがタマんないわ♪」
「アンタが余計なコト言うからでしょぉ!?
このビヤ樽女ぁ!!」
「あぁんですってぇ~~~??
このふくよかな胸、引き締まったウエストが見えないのぉ!?
・・・・・ま、おこちゃまアスカにはまだまだ負けないわよん♪」
「フ~~ンだ、『垂れた胸、ふくよかなウエスト』の間違いじゃないの?
補正下着がなきゃ重力に負けて垂れ下がる一方なんでしょーに!
このアタシが三十路おばさんズなんかに負けるワケないじゃない!」
「そンなモノ必要ないわよ!!
自分に合った下着を正しく着けてれば、形も張りも保たれるンだから!!」
「・・・・・枝垂れ柳・・・・」
「きゃ~~~っはっはっはっはっは!良く言ったわ、レイ!」
「レ~~イ~~~~?
アンタはね、ちゃんとお肉とかも食べなきゃダメなの!
だからいつまで経ってもペッタンコなのよ!」
「う゛・・・・・・・」
「そンなのむやみやたらに大きければイイってンじゃないでしょーが!?
レイはスレンダーだけど、ボディラインは綺麗なんだから!!」
「でもぉ・・・シンちゃんだっておっきぃほうがいいでしょぉ?
アタシの胸で良く泣いてたモンね♪」
「な・・・・・・・・・・・・・ば・・・・・・・・・・」
「・・・・・そうなの?(泣)」
「わっわわわわわ・・・・泣かないでよ、レイ!」
「シンジ!ハッキリ言わなきゃダメよ!!
ミサトなんかよりアタシ達のほうがいいって!!」
「あっらぁ~~~?ちゃんと呼べるじゃない、『レイ』って♪」
「・・・あ・・・・・・・(赤)」
「・・・・・・・・・・・(ぽっ)」
「ンもう・・・・このバカミサトぉっ!!!!!」
ますますヒートアップするリビング内。
Trrr.....Trrrrrr.......
そこへ、一本の電話が入る。
まるで逃げるようにリビングを出て、電話を取るシンジ。
残った三人も電話が気になるのか、いきなりシン、と静まり返ってしまう。
「・・・・・・・うん・・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・・・わかった・・・・・・」
微かに聞こえる声、そして受話器を置く音。
リビングに戻って来たシンジに、ミサトが聞く。
「・・・・シンジ君・・・・・誰から?」
「ケンスケからでした。
僕が頼み事をしていたんで、その事について・・・・」
「・・・・そう」
「なぁんだぁ・・・・誰からかと思ったわよ!」
「ははは・・・・僕に電話を掛けてくる相手なんてしれてるだろ?」
「ソレもそーよね・・・・・シンジって友達少ないしぃ・・・」
「そんな事ないよ・・・・アスカが知らないだけじゃない?」
笑顔を作り、アスカと話すシンジ。
だが、ミサトはシンジの表情が僅かに強張っていたのを見逃さなかった。
ミサトは真剣な表情のまま、シンジから視線を外そうとはしなかった。
食事を終え、シンジはキッチンで一人後片付けを始めた。
アスカとレイも手伝うと言ったが、これくらいはやらせてほしいとシンジが断ったのだ。
アスカは風呂へ、レイはリビングで本を読んでいる。
手際良く片付けを進めるシンジの耳元に、突然囁く声。
「・・・シンジ君、さっきの電話・・・・碇司令から?」
「・・・・・・・え・・・・・・・・」
「隠し事はしないって約束したばかりでしょ?・・・・正直に答えて頂戴」
「・・・・やっぱり、ミサトさんには見抜かれちゃいましたね・・・・・」
シンジは後片付けの手を緩める事なくミサトの問いに答えた。
「・・・アスカとレイに心配掛けたくない、って気持ちはわかるけどね・・・で、司令は何て?」
「話がしたいそうです」
「・・・・・で、どうするの?」
「勿論、行きますよ」
「・・・・・もう、決めたのね?」
「・・・・・はい」
「場所は?」
「・・・・明日学校が終わってから、母さんの墓の前です」
「わかったわ・・・・気を付けてね?」
「・・・・・・はい・・・・・・・・あの・・・・ミサトさん?」
「何?」
「・・・・・ごめんなさい」
「イイわ・・・・・今、ちゃんと話してくれたしね」
ミサトはそっと肩に手を置くと、自室へと戻っていった。
キッチンに、水の流れる音が響いた。