第7話 事実

「あなたが乗った飛行機が空港を飛び立った後、シンジ君は私にこう言ったわ。」
ミサトは一瞬だけ宙を仰いで言った。
「『これでいいんですよね。これがアスカにとって一番よかったんですよね。』って。
今でもあのシンジ君の顔を思い出すと悲しくなってきて・・・・」
アスカは呆然としてミサトのほうを見ていた。
「どう言うこと・・・・・?」
「シンジ君はずっとあなたのことを見ていたということよ。そして、自分がどんなにつらくても
あなたのそばにいたかったんじゃないかしら。」
そういわれて、アスカは黙り込んだ。

 


 

-2016年3月-

全人類のほぼ80%がLCLの海から帰ってきた。
だが、生きる意志のないもの・・・つまり残りの20%の人々は帰っては来ないだろう。
全壊していた都市部も復興がはじまった。

 

そんな中、NERV本部は壊滅的ダメージを受けていたが、かろうじて稼動していた。
そして、帰ってきた職員たちは本部の復旧作業を昼夜問わずにしていた。

 

そんな中、作戦部長室の電話が鳴った。
「はい、葛城ですが。」
ミサトは疲労がピークに達していたため、けだるそうに受話器を取った。
「葛城三佐か。今すぐ司令室に来てくれ。」
冬月は単刀直入にそういった。
「はっ・・・はい、分かりました。」
何気なく出た電話が副指令からであったので、動揺したらしい。
「雑務の処理があるってのにこんなときに呼ばなくてもいいじゃない・・・」
ミサトは愚痴をこぼしながら、総司令室へと向かった。

 

 

「葛城三佐、出頭しました。」
「うむ、ご苦労。」
ミサトは敬礼を解くと、用件を聞いた。
「用件は何でしょうか?」
すると、ゲンドウは表情を変えずに言った。
「セカンドチルドレンのことだ・・・・」
「セカンドが何か・・・?」
ミサトは怪訝そうな顔をして聞き返した。
「ああ、セカンドにドイツへ帰還せよとの辞令が出た。出国は来週の木曜日だ。」
「そ・・・・そんな・・・」
ミサトは愕然とした。
「葛城君、君の気持ちも分かるが、これはしょうがないことだよ。」
冬月は気の毒そうに言った。
たしかに、使徒との戦いも終わり、エヴァも出撃することはなくなった。
つまり、必要もないのにいつまでもこんな危険なものを一ヶ所に置いておく訳にはいかないのだ。
「分かりました・・・。セカンドに伝えておきます・・・。」
ミサトは肩を落として総司令室を出た。

 

 

ミサトは、重い足を引きずりながら、アスカのいる病室へ来た。
「アスカ、入るわよ。」
ミサトは返事を待たずに部屋に入った。
「何か用?」
アスカは窓の外を見ながら言った。
「あなたに辞令が出たわ。ドイツへの帰還。」
「いつ?」
「来週の木曜日よ。それまでにとりあえず準備しといてね。」
「分かったわ。」
アスカは、表情を変えずに淡々と話していた。

 

 

アスカの部屋を出ると、ミサトは今度はシンジの病室へと向かっていった。
『いずれ分かることだもの。今のうちにシンジ君にも伝えておかないと・・・』
ドアの前に着いた。
「シンジ君、入るわよ。」
「はい。」
シンジは体を起こして返事をした。
「シンジ君、とりあえずあなたにも伝えておくわ。」
シンジはきょとんとした表情で聞いている。
「今日、アスカに辞令が出たわ。ドイツに帰還するのよ、来週の木曜日に。」
一瞬にしてシンジの表情がこわばった。
「なぜなんですか・・・?」
「もう弐号機もないし、アスカは日本にいる必要もなくなったからよ。」
シンジは俯いた。そして、その目から涙が零れ落ちた。
「・・・・もう、遅いんだ・・・何もかも・・・」
ミサトは、シンジのその一言で察した。
シンジは、アスカが好きだということを。
「シンジ君、まだあきらめるのは早いわよ。私からも頼んでみるけど、あなたが司令に直接
お願いしてみたら?アスカをドイツに帰さないでくれって。」
ミサトは諭すように言った。
「・・・そうですね。何もしないよりは遥かにましですものね。」
シンジは少し表情を明るくして言った。

 

 

翌日、シンジは退院した。
その足ですぐに総司令室に向かった。
「失礼します。」
シンジはドアを開ける。
「どうしたシンジ。」
冷たい目でこちらを見てくるゲンドウ。
「父さん、お願いがあるんだ。」
「何だ、手短に言え。私は忙しい。」
「アスカのドイツ行きを取り消してくれないかな?」
「無理だ。すでに決まった事柄を変えるわけにはいかん。帰れ。」
ゲンドウはそう言い放つと、警備員にシンジを外へ出すよう指示した。
シンジは必死で抵抗したが、大人に勝てるはずもなく総司令室から引きずり出された。
だが、シンジも必死だった。
「絶対に帰らせない!!!!絶対にアスカをドイツに帰らせるもんか!!!」
そう叫ぶと、警備員の腕をすり抜けて、ゲンドウへと殴りかかった。
「やめないか!!!!」
再び警備員に捕まえられ、結局そのまま独房へと入れられてしまった。

 

 

「・・・・その後結局、出発当日までシンジ君は独房から出させてもらえなかったの。」
アスカが突然立ち上がった。
「なんで・・・なんでアタシにこんな話するのよっ!!!!!」
そう叫ぶと一目散に部屋へと走っていった。
「アスカ!!」
ミサトはとめようとしたが、結局アスカは部屋へと引きこもってしまった。

 


 

あとがき

どうも、おきだです。
なんか、今回いつもより長いですよね。
ってか、いつもが短すぎるだけですけど(^^ゞ

こんな作者ですが、へたれなりにがんばっておりますので、
どうか応援よろしくお願いします。m(_ _)m