第壱拾弐話 夢の力

レイの自爆から数日後、レイとアスカが入院している病院・・・・

助かったとミサトから聞いたシンジの顔はどこか他を見ている様なそんな顔だった。

レイはまだ目を覚ましていない。

だがシンジは知っていた。

今のレイがLCLのプールに浮いている一体だと言う事に・・・・昔と同じように微笑まない冷たい目をした人形の様なレイになっている事に・・・・・

そして今、シンジは悲しみを内に隠し包帯を巻いた両手で作ったお弁当を持ってアスカの元に来ていた。

「あ~~あ~~」

アスカは相変わらず、元には戻らず言葉も話せぬままシンジからお弁当を食べさせて貰っていた。

「アスカ、今日のお弁当は美味しい?今日はアスカが大好きなハンバーグと卵サラダ、それとこっちにはカスタードプリンもあるんだ」

はむはむとシンジから出されるおかずや御飯を食べて嬉しそうに笑っているアスカ。

シンジは笑顔で自分のお弁当を食べてくれるアスカに少し微笑んだが、やはりその顔ははれる事は無かった。

「アスカ、美味しい?・・・・・いつもアスカは僕の御飯を食べると美味しいって微笑んでくれてたんだよ」

上手く口が使えないのか、口の端から御飯粒をこぼす。

その御飯粒を拾いながらシンジは話しかける。

だが、アスカは次の御飯をシンジにねだるだけで、シンジの言葉には興味を示さなかった。

「アスカ、早く良くなってよ・・・・・ミサトさんや、カヲル君だって待っているよ。それにあやな・・・・」

無意識の内にレイと言おうとしたが、はっと思い下唇を噛みしめた。

「ま~ま、ま~ま」

アスカはシンジの方に手を伸ばし、御飯をねだる。

悲しい顔を心の中にしまいシンジはまたアスカに御飯を食べさせ始めた。

 

 

「お前の力で、最後の審判を早めるのだ。そして、ゲンドウから・・・」

暗闇の中、モノリスが並んでいた。

そして、その前に一人の男が跪いていた。

「分かっております我が主よ。選ばれたモノに最後の使命を果たさせる為にそして・・・」

「では行け」

男はその言葉に応える事無くその場から消えていた。

「さて、我らも準備を始めるとしよう」

モノリスも消えた。

 

 

一方ネルフでは・・・

「では、碇指令と冬月副指令の本当の目的はSEELEと決別した後、初号機の中に眠る碇指令の奥さんをサルベージする事なんですか!?息子のシンジ君や、レイを使って!!それでも親ですか!人間ですか!!」

司令室に呼ばれたミサトと加持はゲンドウと冬月から驚愕の事実を聞いた。

「そうだ。私と冬月の目的はユイただ一人蘇らせる為に立てたシナリオだ」

「それでは司令、その為にここに呼ばれ使徒と無我夢中で戦っている息子のシンジ君に申し訳ないと思わないのですか?」

加持は少し頭に血が上って今にもゲンドウに掴みかかりそうなミサトを押さえ、ゲンドウに話しかける。

ゲンドウは加持の視線を受け止める。そして冬月が答えた。

「SEELEの起こそうとしているサードインパクトはすべての人類をLCL化してしまい、すべてを一つにしてしまうものだ。それはただの逃走にすぎんよ」

「じゃ、じゃあ、貴方達がやろうとしている奥さんをサルベージさせる事だって同じじゃない!!シンジ君やアスカはそんな事の為に戦ってきた訳じゃないわ!!みんなの幸せの為、笑顔でみんなが暮らせる世界を作るために、たった二人しか居ないサードインパクトの後の世界の様にしたくないから未来から帰ってきたって言うのに!!よっぽど貴方達の方が逃げているじゃない!!」

余りに衝撃的な事実だったため、ミサトは前後の見境もなく叫んだ。

「葛城」

「アンタ達のお陰でお父さんは・・・・父は貴方達のせいで死んだようなモノじゃない!!」

「葛城!!」

 

パンッ

 

加持は叫び続けるミサトの頬を軽く叩いた。

「か、加持君・・・」

「葛城、今はそんな事を言っている時じゃないんだぞ。碇司令と冬月副司令はその為に俺やお前を呼んで話した訳じゃない。

SEELEが使徒と信じているカヲル君が本当は人間、シンジ君達と一緒に未来から来たと知ったら・・・カヲル君がすでにネルフ側に寝返っていると知ったら・・・SEELEの老人達は強行手段でサードインパクトを起こそうと攻めてくるだろう・・・・その為の対策を考える為に呼ばれたんじゃないか」

「・・・・・・・・・・・」

ミサトにもその事はわかっていた。だが、アスカの状態、レイの事、シンジに対しての今までのゲンドウの態度、そして、父の事すべてが一気に頭に浮かんできて居ても経っても居られなくなっていた。

「で、どうするんです?あの時現れた麗子と言う女の人は言っていましたよね、ユイにはもう会えないと・・・・それでも司令達はそのシナリオを強行するんですか?」

普段の加持からは感じ取れない飄々とした態度では無く、エージェントとして研ぎ澄まされた殺気を持ってゲンドウに言う。

しかし、ゲンドウはその殺気にも動じる事無く

「私達はその為に生きていた。ただユイに逢うためにな。それしか私達に生きる道はないのだよ。それにシンジは私が思っている以上に強くなった。それがセカンドのお陰だろうとは思う。だからシンジは自ら信じた道を行くだろう。それがたとえ私達を殺す結果になったとしても・・・」

自分の右手を見つめならが語った。

ゲンドウはそれだけ語るとミサトや加持のそれからの数度の問いに答える事は無かった。

 

 

カヲルが入院している病室

「くっくっく、ぬしの目的忘れた訳ではないな」

カヲルはベットからゆっくりと起きあがり、声の主を見た。

あの自分のATフィールドを跳ね返した男だ。

「ぬしが最後の生け贄だ。ぬしと選ばれた者の最後の戦いの時だ。さあ行け!我が主の目的の為に」

「君はイレギュラーなんだよ。僕達の時代に君は居なかった。

僕がこうしてシンジ君達と一緒に居きると決めたからバランスの為に君が生まれたらしいね。

僕は君と戦うつもりだよ。シンジ君や惣流さんの信じた世界の為に・・・・例え僕が死んだとしてもね」

「く~くっくっく・・・、今のぬしには我に勝てぬ。そんな事も気付かないバカ者だとは・・・」

謎の男は暗く笑う。

「だから言ったよ。僕は君と戦う、僕がここで死ぬとしてもね」

カヲルの顔は普段見せた事が無いほど真剣で殺意に満ちた顔だった。

 

その少し前・・・・

「何故初号機や、弐号機の様に母親がコアに眠る機体じゃないのに、参号機はS2機関が動きだしたのかしら?」

シンジやアスカ、麗子の説明からほぼ正解に近い答えを導きだしていたリツコだったが、コピーコアしか載っていない参号機がS2機関を動かせたか謎だったため、参号機の独立テストを繰り返していた。

「せ、先輩!!参号機のエネルギーがどんどん上がっていきます。S2機関が自然に動きだしたみたいです!!」

「な、何ですって!!」

S2機関がなんなのか分からないが、無限のエネルギー機関としての機能を持っているために一度暴走し出したら止まる事は無い。その脅威は核を搭載しているJA以上だった。

実験に上の空で参加し、自分の中でいくつもの仮説を立てていたリツコは慌てた。

「参号機に停止信号送って!!」

「駄目です。参号機全く信号を受け付けません。あっ!参号機が勝手に!!」

モニターに写っていたのは自らを縛り付けていた拘束具を強制的に除去している参号機だった。

「ど、どうして・・・・あり得ないわ。エントリープラグも挿入していないのに、動くはず無いわ・・・」

生涯2度目の言葉を口にする。先の時の様にシンジを守る為に動いたとしたら、コアの中のユイの力だろう。

だが、今回は守るべき人も居ない。、

それなのに、自らの意志で拘束具を外そうとする姿はある物を想像させた。

「使徒・・・・・」

マヤが呟く。そう・・・リツコも使徒だと思った。

「硬化ベークライト早く!!」

リツコはすかさず命令を下した。

「だ、駄目です。間に合いません」

だが一足早く拘束具を取り払った参号機はそれを避けると、地上へと射出される発射口へと走った。

そして、無理矢理壁を登ると閉じている扉を壊しに掛かった。

「えっ?一体どう言うこと?」

その行動はリツコの想像を超えていた。使徒が参号機に取り付いたのならば地下を目指し、サードインパクトを起こす筈・・・・・だが、参号機は地下には全く興味を示さず、地上に上がろうと躍起になっていた。

「参号機を地上に上げろ」

その時、ゲンドウの声が響いた。

「ど、どう言う事ですか?碇司令」

「良いから上げろ」

それだけ言うとゲンドウは通信を切った。

リツコは渋々マヤに命令する。

マヤはどう言う事か全く検討もつかなかったが、リツコの命令を聞くと地上へと参号機を射出した。

そして、参号機は地上に上がると直ぐさま通常のエヴァでは考えられない程の速度で移動し始めた。

ある所を目指して・・・

 

「くっくっく・・・・これでもまだ抵抗するのか」

ATフィールドを広げ、カヲルのATフィールドごと壁に押しつける。

じわりじわりと押されていくカヲル・・・使徒との戦いと、この男が残したATフィールドを破った事で疲労のピークに達していた。

「くっ・・・・」

「もう少しで、ぬしも潰れてしまうぞ」

男は楽しむような口調で言う。

段々と潰されるカヲルのATフィールド・・・・・カヲルが心の中でシンジ達に謝罪した時、いきなり・・

 

 

ドーーーンッ!!

 

 

突如、病院の壁を突き破り、参号機が謎の男に襲いかかった。

「くっ・・・・・ぬしはバルディエルだな・・・・いくら我でも二人懸かりでは・・・」

カヲルを押しつけていたフィールドを解除して、参号機に捕まれないよう、後ろに一気に下がった。

「助けに来てくれたのかい?君も彼が敵だって認めたんだね」

カヲルの言葉に応える様にさらに参号機は男を追いつめる。

カヲルをも越えるATフィールドを使えても、S2機関を持ったエヴァには勝てないと悟ったか、男はカヲルを向くと

「今はその命、預けて置こう。ぬしらは生け贄にしか過ぎぬのがな・・・・くっくっくっく」

それだけ言うと、男は霧の様に消え去った。

「ありがとう、助かったよ」

カヲルは少し落ち着いた所で参号機に話しかける。だが、参号機は男に掴み掛かる格好のまま動かなかった。

 

 

その轟音で目を覚ました者が居た。

その者は、目を覚ますとベットから起きあがり、自分の手を見つめる。

そして、勢い良くベットから降りると駆け出した。

「碇君、アスカ・・・・・私、私帰ってきたわ。麗子さんと共に・・・」

その顔には笑顔が溢れていた。

 

 

「な、一体なんだ?あの音?アスカ、ちょっと僕見てくるよ」

シンジはアスカとの対談を一時中断して、もの凄い轟音の正体を確かめるべく立ち上がろうとした。

「やーー!」

だが、アスカはシンジの腕を掴み、首をブルブルと横に振った。

「どうしたの?アスカ?」

シンジはアスカの横に座り直す。と、アスカは腕を伸ばしシンジの手を取ると自分の方に引っ張った。

シンジはそのアスカの行動に驚いたが、アスカの力に逆らう事無くアスカの側に椅子を寄せた。

「な~、な~」

その行動は赤ちゃんが母親の側から離れたくない、自分を見て欲しい、もっとかまって欲しいと言う事に近いだろう。

轟音は気になったが、アスカのそんな行動にシンジは改めて自分に出来る最大限の事をしようと心に誓った。

 

 

「ぐわっ・・!」

「貴様達の思うような未来を作らせる訳にはいかないからな」

加持はSEELEのエージェントとの待ち合わせ場所に居た。そこにはすでにネルフの諜報員達、そしてミサトも影から見守っていた。

そして、SEELEのエージェント達が加持に銃を向けた途端、ミサトの正確な射撃がエージェント達の一人の腕を貫いた。

それが合図となり銃撃戦になったが、圧倒的な戦力でネルフ側の一方的な勝利に終わった。

「私達はシンジ君達の決めた未来を見たいのよ・・・貴方達の決めた最悪のシナリオには賛成出来ないわ」

普段シンジやアスカ達の前で見せる事のない冷酷な顔を見せ、死体に向かってミサトが呟く。

そんなミサトの肩を叩き、次への行動を促す加持。ミサトも加持に頷くと共に闇に向かって走り始めた。

 

 

「碇君、アスカ!」

レイが部屋に走り込んで来たとき、シンジはアスカに話しかけていた。

「あ、綾波・・・・?」

「そうよ。私は綾波レイ、麗子さんの魂も一緒に生きていく綾波レイよ」

その前と変わらないレイの姿に言葉を無くすシンジ。

アスカはレイを見ると嬉しそうに笑顔を向け、レイに向かって腕を伸ばした。

「あ~、あ~」

「アスカには私が分かるのね・・・・嬉しい・・・」

アスカの行動を見た途端、レイの瞳から涙が一粒流れ落ちた。

シンジはそんなレイの行動で分かった。

今ここに居るレイは前のままのレイだという事に・・・・

気付いたシンジに瞳からも知らず知らずに涙が溢れて来ていた。その涙は嬉しさに溢れていた。

アスカは二人の涙にちょっと首を傾げたが、にこにこと笑っていた。

 

 

そして、その後しばらくは平穏な日々が続いた。

嵐の前の静けさの様に・・・・

 

そして、その日は来た。

カヲルが生け贄と出来なかった今、エヴァシリーズを使い、強引にエヴァ初号機による補完計画を発動させようと言うのだ。

「始まったわね・・」

ミサトはモニター全部にうつるEMERGENCYの文字を見ながら言う。

しかしこれはすでに予想されていた事だった。

SEELEの動きをすでに察知していたネルフ関係者はすべてジオフロントに退避していた。

そして、リツコは先手を打つ為にすでに松代のMAGIと、ドイツのMAGIを逆ハックし終わっていた。

勿論、相手に気が付かれない様に・・・

本部のMAGIをハックしようとした瞬間、すべての操作は本部のMAGIに移行する様に巧妙に隠しプログラミングをされていた。

世界中を探してもMAGIに精通しているリツコにしか出来ない芸当だった。

その為に加持とミサトはリツコの発案による、計画の為に走り回っていたのだ。その為にアスカやシンジに会えないとしても・・・二人の目指した未来を作る為に・・・

すでに世界にあるMAGIの内3台は本部側に付いている事、そしてシンジ、アスカの情報により敵の目的がネルフ本部及びエヴァ3体の直接占拠と分かっている為、情報戦では圧倒的に本部側が有利だった。

前戦いでは本部のMAGIにプロテクト666を掛け防戦に回ったが、今回は他の3台が本部にハックを開始すると同時に松代とドイツのMAGIが専攻して防御の薄くなった3台のMAGIを占拠し、すべてのMAGIを統一する事となっていた。

その指揮もすべてリツコが取ることになっている。

「私も馬鹿な女・・・・親子そろって利用されているって分かっているのに・・・・」

ぼやくリツコ。だが、ここで裏切りSEELE側につくより、シンジ、アスカの作りたかった世界・・・みんなが笑って暮らせる世界、その為なら良いかと思い始めていた。

「リツコ、準備は全部そろっているの?」

後ろからミサトが声を掛ける。

「勿論よミサト。こちらのMAGIの能力はすべて防御に回しているわ。こちらにハックし始めた瞬間、一気に相手のMAGIは占拠出来るわ」

「さっすがリツコ博士~、頼りにしてるわよん」

「そちらはどうなの?本部施設を直接占拠って形を取ってきたら・・・」

逆に心配するリツコの声に顔を引き締めたミサトは答える。

「こちらは大丈夫よ。初号機と参号機が防衛に当たる事になっているから。アンビリカルケーブルという弱点のないエヴァには誰も近寄れないわよ」

「そんな事じゃ無いわ。シンジ君達に人間が殺せると思うの?占拠を狙ってくるのは人間なのよ!」

「それも大丈夫!シンジ君達に人は殺させないわ。エヴァは防衛に回るだけ。ネルフ本部へと繋がる直接通路にはすべて硬化ベークライトを流し込んで時間を稼いでおくから、で、対人設備も加持君の指示でばっちり配置済みだし。二人には後から来るエヴァシリーズの相手をして貰うわ」

「そちらの方がもっと大変だろうけど」

ミサトの隣にいた加持の感想だった。

カヲル、レイ、そしてシンジはアスカの病室にいた。

「惣流君、シンジ君は僕が必ず守るから安心してて良いよ」

カヲルはそれだけ言うと病室から出た。

「アスカ・・・私がついているから貴方は絶対に死なせないわ」

レイはシンジの顔をちょっと見ると病室から出た。二人っきりにさせる為に

そして・・・・・・

シンジはすやすやと眠るアスカの頬を撫でる。

「アスカ・・・・これで全部の戦いが終わるよ。僕とアスカ・・・この為にここに戻ってきたんだよね。アスカがいなくても僕頑張るから・・・・絶対にあんな事させたりしないから・・・・ゆっくりと寝ていてね」

そして、シンジの手がアスカの胸元に伸びる。

「アスカ・・・・アスカが回復するまでこれ僕が預かっておくよ。アスカが回復したら言いたい事を言うよ。その事を忘れないように・・・そして、生き抜く為にこれを貸してね」

アスカの首から掛かって胸元で光るあの指輪を手に取り、ネックレスをそっと外すと自分の首に掛けた。

そして、もしかしたら最後になるかもしれないキスを・・・・出撃前の誓いをそっとして、シンジも病室を出た。

病室前に待っていたレイに頷くと本部へ・・・母の眠る初号機へと走り出した。

そのシンジの背中を見送ると、レイはアスカの病室に入っていった。

自分にはアスカを守る任務があるからと自分に言い聞かせながら

地上の音はここまでは聞こえないが、征圧部隊が動いている事は確認された。

「良い二人とも、貴方達が地上に出たら防御だけしていて、相手は人間だから・・・貴方達は後から来るエヴァシリーズを殲滅して」

ミサトはすでに初号機、参号機に乗り込んでいる二人に説明していた。

これから、攻めてくるのは人間であり、深すぎる業を子供達に背負わせたくないミサトだった。

「了解しました。僕達はあのエヴァシリーズと戦えば良いんですね」

「最後の戦いだから二人とも気を引き締めてね」

「「はい!!」」

初号機と参号機は共に射出口に向かう。

「発進!!」

ミサトの声と共に初号機、参号機は射出された。

これで終わりにする為に・・・・・みんなの未来を切り開く為に・・・

その少し前、地上では・・・・・

黒ずくめの男達が望遠鏡を片手に、司令部からの命令を待っていた。

誰一人として話さない。

誰一人として音を立てない。

すでにここでは作戦が始まっているも同義だった。

「犬は失敗、犬は失敗・・猿を決行、決行・・」

静かな森の中・・・通信機からの声が聞こえると男達は移動を開始した。

犬・・・・・MAGI5台を持って本部MAGIを征圧、一気に本部を押さえる作戦。

猿・・・・・武力によりネルフを征圧及び、残存するエヴァ三体の征圧が目的の作戦。

その為に集められた部隊だった。

男達は先に集められた情報によりネルフの通信施設及び、エヴァのアンビリカルケーブル設置場所の爆破、そしてジオフロント内に侵入し一気に征圧する為に動き出した。

そして、攻撃が始まった。

通信所、電源管理所を持てるすべての力を持って攻撃し始めた。

それが、ネルフ側から故意に流された情報だとも知らずに・・・

「さてこちらも始めますか」

加持がミサトに言う。ミサトも頷くと全通路に設置された対人兵器の準備に掛かった。

本部施設内に一般職員の姿は無い・・・・皆すでに退避所に退避し終わっていた。

ここが戦場になることは誰の目にも明らかだった。

「レイ、約束の時は来た」

アスカの寝ている病室に一人の男が入ってきた。

「い、碇司令!どうしてここに・・・!」

「私と一緒に来るのだ。今こそアダムとリリスの融合の時、真の補完が始まるのだ」

ゲンドウはサングラスの上からでも分かるくらい目を赤くしてレイに迫る。

レイはゲンドウから後ずさる様にアスカのベット際まで来た。

無言のまま、レイに手を伸ばしレイを掴もうとした時、レイの体から麗子がふわ~と出てきた。

「ゲンドウさん・・・・・貴方はまだユイにこだわるの・・・?」

「むっ・・・・」

「れ、麗子さん!!」

レイの体からいきなり出てきた麗子に驚き後ずさる。

「ユイはすでに初号機と一体になっているのよ。ゲンドウさんがいくら望んでもユイには会えないわ。それでもまだレイちゃんに手を出そうと考えているなら・・・」

「だが、私にはその生き方しか出来ない」

「回りをよく見てご覧なさい・・・シンジやアスカちゃんは何の為に戦っているの?ミサトさんやリツコ博士は?みんな自分の為に戦っている訳じゃないわ。みんなが幸せになる為に戦っているのよ」

ゲンドウを見つめる瞳は悲しみに包まれていた。たった一つしか生きる目的を見つけられない悲しい男に向けて

「だが、私はシンジが怖いのだ」

その悲しい瞳に見つめられてたじろいだゲンドウが呟く。

「誰だって他人は怖いわ。シンジだってそう・・・・貴方が怖いのよ。けど、あの子も成長したわ。怖いと思っている貴方に会うと分かっているのにこちらの世界に戻ってきたのだから・・・レイちゃんだって今の貴方に怯えているわ。それでも貴方は無理矢理レイちゃんを連れていく気?そこまで落ちぶれてしまったの?私が愛したゲンドウさんはどこに居るの?」

麗子がそこまで話した瞬間・・・不意にゲンドウの右腕が吹き飛んだ。

「ぐっ・・・・・」

痛みに顔をしかめる。

「くっくっく、これで目的のモノはそろった。後は生け贄を殺し、選ばれたモノに目的を果たさせるだけ・・・くっくっく・・・」

ゲンドウの横にあの謎の男がゲンドウの右手と鋭いナイフを持って立っていた。

その右腕に融合されたアダムと共に・・・

「あ、貴方は誰?」

レイは不振な男に言う。

「くっくっく、我が名は影・・・・我が主の目的の為に作られしモノ・・・・ぬしと同じだクローン」

「ク、クローン・・・!私クローンなんかじゃ無い!私は綾波レイよ!立派な人間よ!!」

「くっくっく、クローンの分際で良くほざく、貴様らをここで殺しておけばさらに目的の確率も上がろうというモノ・・・」

それだけ言うと影は黒い風となりレイとその後ろに居るアスカを狙ってきた。

「させる訳には行かないわ」

麗子がATフィールドを展開し、影の攻撃から守った。

「ぐっ・・・・主は何者?この力只のクローンでは無いな・・!!」

カヲルのATフィールドさえ凌駕する持ち主でも破れないほどの強力なATフィールドを張る麗子

「私はチルドレン達を統べる為に生まれてSEELEに生まれ出されたマザー・・・そして、私は綾波レイの魂の一部よ」

「マザーか・・・ぬしのすべてがクローンに閉じこめられるまでの命・・・取っておこう・・・」

直ぐさま麗子の張ったATフィールドを破れない事を悟ると影は消えた。

影が完全に消えた事を確認した麗子はゲンドウの切られた腕に手を当てるとATフィールドを展開し、血を閉じこめた。

幸いにも切断面が素早く切られた為にそれ程出血はしていなかった。

「どちらにしてもこれで貴方の目的は果たせなくなってしまいましたね」

血は止める事は出来たが、痛みまで消すことは出来ない為、ゲンドウは痛みと戦いながら麗子を見上げる。

「ゲンドウさん・・・・・・ご免なさい・・・・・自分の事ばかり言ってしまいましたね・・・・けど、シンジ達の信じた未来・・・・それをみんなと生きて貰いたいんです。それだけは分かって下さい」

麗子の言葉が届いたか分からないが、ゲンドウはよろよろと病室から出ていった。

レイはゲンドウを支えようと思ったが、麗子に止められた。

「レイちゃん、今はゲンドウさんをそっとして置いてあげて・・・」

レイは麗子の言葉に頷く事しか出来なかった。

そして、麗子はレイの中に消えた。

その時、不意にアスカの体が起きあがった。

「アスカ?目が覚めちゃった?」

レイは微笑みながらアスカに問いかける。少しでもアスカに心配を掛けさせないように・・・・・だが、アスカの瞳は開いていない。

それどころか、不自然な動き・・・・・常識では考えられない動きでアスカは立ち上がった。その動きはまるで、紐で引っ張りあげられる様な動きだった。

そして、アスカの口から言葉が漏れた。

「僕達は貴方達に攻撃はしません。だから貴方達も攻撃を止めて下さい」

「ア、アスカ・・」

その言葉が言葉のしゃべれないアスカの言った事で無いことにすぐに気が付いた。

そして・・・・・・

「僕達は貴方達に攻撃はしません。だから貴方達も攻撃を止めて下さい」

シンジは外部スピーカーで攻撃している部隊に叫ぶ。

それでも攻撃部隊はATフィールドに守られた初号機、参号機の攻撃を止めようとしない・・・

「僕達の目的は貴方達と戦う事じゃ無いです。あの最悪のサードインパクトを止めようと頑張っているんです。皆さんはあの世界にしたいんですか?人間が一人も居ない・・・そんな世界にしたいんですか!?」

シンジの必死な叫びに攻撃部隊に動揺が走った。

攻撃が散漫になり、初号機と参号機のATフィールドに当たる弾の数が見る見る減ってきた。

「信じられないかもしれませんが、僕は未来から来ました。あのサードインパクトの後からです・・・・誰も居ない、すべてが元素の海になってしまったあの悲しい時から戻って来ました。SEELEの起こそうとしているサードインパクトはそんな悲しい事が起こるんです。誰も話さず誰の存在も無い・・・・みんなの笑顔が見えないそんな時から僕はみんなの笑顔を見るために・・・みんなの幸せな世界を作る為に戻って来たんです」

外部スピーカーからはシンジの涙声が溢れていた。

シンジの記憶の中にあるあの世界、アスカと二人きりしか居ない悲しい世界・・・・それを思い出しながら皆に語っていた。心の中からの声だった。

その声を聞いている攻撃部隊は段々と攻撃を止め、その内一発の弾も飛んで来なくなった。

「皆さんは逃げて下さい。これからSEELEのエヴァシリーズが来ます。多分ここは戦場になりますし、貴方達を巻き込みたくありません・・・・そして、皆さんの大切な人に笑顔を見せてあげて下さい。もうあんな悲しい時は迎えたくないから・・・・もうあんな悲しい思いはしたくないから・・・」

「猿も失敗か・・・・・期待などしておらんかったがな。我が力で一気に目的を達成させようぞ」

シンジの声に攻撃部隊も戸惑っていると、空から声が聞こえてきた。

そして・・・・・

「シンジ君あれは・・・・・」

「カヲル君!!!」

輝く光が見えたと思ったら、シンジ達の真上にミサイル群が降り注いできた。

作戦が失敗した時の為に、沖に待機していた艦隊からの一斉射撃だった。

「フィールド全開!!」

まだ退避していなかった攻撃部隊を守る為にシンジとカヲルはATフィールドを広く展開、少しでも被害を無くそうとした。

降り注ぐミサイル群・・・・・

「くっ・・・・・・くそ、これくらいの事で参るモノか!」

余りの衝撃の強さに吹き飛ばされそうになりながらも必死にATフィールドを張り堪える。

ミサイルの爆発よりシンジの思いの方が遙かに強かった。

ミサイル攻撃が止む。シンジは攻撃が止んだ事を確認すると回りを見渡した。

地面には大きな穴が開いていた。多分ジオフロントまで続いているだろう・・・・それほどに大量のミサイルが降り注いで来たのだ。

シンジとカヲルの張ったATフィールドのお陰で、怪我人は出ているらしいが死者は一人も居ないようだった。

「良かった・・・・」

シンジの口からは安堵のため息が出た。

「皆さん、早く逃げて下さい!またミサイルが飛んでくるかもしれませんから」

シンジの切羽詰まった声に攻撃部隊はすぐに移動を始めた。自分たちがただの捨てゴマだった事を自覚し、本当の敵がネルフでは初号機や参号機では無いことを確認しながら・・・

空から白い影が降ってきた。

ミサイルでは無い・・・・・・彼奴らだった。

「シンジ君、やっと来たみたいだね」

カヲルが言う。それは何の感情もこもっていない声だった。

「そうだね。僕とアスカはこいつらを倒す為に戻って来たようなモノだから」

レバーをぎゅっと握りしめ、空の白い点を見つめる。

「さて、僕達の役目を果たそうか」

カヲルはシンジに聞こえないようにそっと参号機に話しかけた。

エヴァシリーズは二人の上をゆっくりと旋回していた。

獲物を狙うはげ鷹の様に・・・・

「シンジ君、あのエヴァに使われているプラグは多分ダミープラグだよ。僕か、奴の人格コピーしたものにすぎないから遠慮なくコアを握り潰しても大丈夫だよ」

エヴァシリーズを見上げながらシンジに言う。

シンジが頷いた時にエヴァシリーズは二人に襲いかかってきた。

大きな刀を持って初号機や、参号機を切り裂こうとするが、シンクロ率が遙かに高い初号機や参号機の敵では無かった。

エヴァシリーズの一体から刀を奪うと、それを使って逆にエヴァシリーズの体を切り裂く。そして、コアを一つ一つ握り潰す。

2対8・・・・圧倒的に不利な条件でありながらあっけなく勝利した。

「お、終わったの・・・?これで・・・・これでサードインパクトは起こらないで済むんだね」

「そうだよ。シンジ君のお陰だね」

「やったー!!アスカ、僕達ちゃんと歴史を変える事が出来たよ。あの悲しい思いはしなくて済んだよ」

嬉しさの余り泣き出すシンジ。

カヲルは微笑みながらシンジを見ていた。

それもつかの間だった・・・・

ドーーーーン!!

 

「うわーーー!!」

シンジ達は何者かに地面に開いた穴に突き落とされた。

素早く着地態勢を取り、ジオフロント内の地面に降り立つ。

「だ、誰だ!!」

「くっくっくっく・・・・貴様達、あんな人形を倒したくらいで喜んでいるのか?」

その声に驚いたシンジ達は正面を向いた。

そこには2体のエヴァが居た。一体はエヴァシリーズより一回り小さい、そして、もう一体はエヴァシリーズより2回り程大きな機体だった。

「くっく・・・人形ごときで我らの目的が達せられるとは思うておらぬわ」

小さなエヴァからあの男の声が聞こえてきた。

「我らが本当の機体、このメシアとエデン・・・二体があれば目的は達せられる。くっくっく・・・」

暗い笑い声を出す影。

「シンジ君、僕はあの男を倒すよ。前の世界に居なかったあの男は危険だからね。シンジ君、あの大きな奴をお願い出来るかい?」

「分かったよカヲル君、これで本当に最後の戦いにしよう。そして、平和な世界を作ろう!」

シンジはカヲルに頷くと、大きなエヴァ(エデン)飛びかかっていった。

「お前さえ倒せばこの戦いも終わる。僕達が過去に帰ってきた理由もこれでなくなる」

シンジは先ほど奪ったロンギヌスの槍のレプリカを振り回し、エデンに向かっていった。

しかし、エデンは腕を伸ばし、掌で軽々と受け止める。

「くっ・・・これくらいで・・・・初号機の本当の力をお前に見せてやる」

シンジは母親とコンタクトをとり、初号機の力を最大限に引き出す。そして背中には6対の羽を展開し、空中へと舞った。

「ここからこれを使って突っ込めば勝てる!」

そう確信したシンジはロンギヌスの槍を構えると一直線にエデンに向かって突進した。

 

 

カヲルはゆっくりと小さなエヴァ(メシア)に近づく。

「くっくっく、ぬしとは縁があるな。ここでぬしを殺せば、選ばれたモノが目的を果たす。容易い事だ」

影の動きそのままにメシアの動きは素早い。

だが、疲労も完全に回復しているカヲルは冷静に判断し、シンジから一度離れる事を決意した。

「くっくっく、さきほどの自信はどうした」

影にはカヲルが単純に自分の機体について来れず、逃げているかの様に見えた。

それ程にカヲルの撤退は上手かった。

「さて、これくらい離れれば大丈夫かな?じゃあ、こちらから行くよ」

急に後退から前進へ動きを変える参号機。

だがメシアも油断していた訳ではない。

「くっくっく、そうでなくては殺し甲斐が無いというモノ・・・ぬしの足掻く姿を見せて貰わねば」

不意をついた筈の動きを余裕を持ってかわすメシア。

「君はこの世界にとって危険すぎるんだよ。だから必ず僕が君を倒すよ」

カヲルも油断している訳ではない。メシアの動きを察知すると攻撃をかわした。

その間にバルディエルと会話をし、メシアを倒すための作戦を考えていた。

「そうだね。それしかないみたいだね。けど、大丈夫かい?」

カヲルは心配するが、参号機は自らカヲルとのシンクロを切った事で大丈夫とカヲルにアピールした。

「分かったよ。僕達は希望の盾になる為にここに居るんだったね」

カヲルは作戦の為に参号機にすべてを任せた。

参号機は動くのを止めた。無防備に腕を下げたまま。

「何か考えついた様だが、我には効かぬぞ。だが、ぬしらの考えを試すのも悪くなかろう」

そう言うと、メシアの動きを止め、ゆっくりと参号機に近づいていった。

参号機は目の前にメシアが居ても動きだそうとはしなかった。

「くっくっく、どうやら仲間割れしたらしいな。ではぬしらの命、我がいただいた」

手に持ったナイフを参号機のコアに突き立てた・・・・瞬間、参号機は目にも留まらぬ早さでメシアに抱きつくと、カヲルの乗ったエントリープラグを排出した。

「すまない・・・君一人に痛い思いをさせてしまって」

カヲルは悲痛な顔を見せるが、すぐにメシアに向かって振り向くと影の乗るエントリープラグまで一気にジャンプした。

「な、何をするつもりだ・・・・ぐっ、う、動かん」

メシアに乗った影もカヲルの動きに対してエントリープラグを排出しようとしたが、参号機に抱きつかれ排出出来なかった。

カヲルはメシアのエントリープラグの場所の上に立つ。

「君は危険すぎるんだよ。だから僕が殺す。シンジ君達希望の為に、そして、僕自身の未来の為にね」

カヲルは自らの持てる最大のATフィールドを展開し、影を圧殺しようした。

「ま、待て、我の目的はまだ達成されず、今死ぬわけには・・・・ぐ、ぐわーー!!」

影はカヲルより強力なATフィールドを張れるが、エヴァに乗った状態ではATフィールドはエヴァに吸収され、エヴァ自体のATフィールドを強化する事が出来る。逆に言えばエヴァに乗っている限り自らの回りにATフィールドは張れない。それを逆手に使ったカヲルの作戦だった。

「後はシンジ君、任せたよ・・・」

全開でATフィールドを張った反動で気を失いメシアの上から落ちた。

そのまま地面に叩きつけられると思った瞬間、受け止めた者が居た。

カヲルを受け止めると、その者はカヲルを優しく地面におろし、側に居たレイに病院に運ぶ様に言うと、まだ戦闘を続けているシンジの元へと急いだ。

 

ロンギヌスの槍でエデンを叩きつけた地面からは砂煙が立ち上り、辺りはよく見えない。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・や、やったのか?」

そうシンジが思った瞬間、砂煙の中から腕が伸びて来て、初号機の首を掴み締め上げる。

「くっ・・・・・・・・」

ゆっくりと砂煙が消えていく。そして、エデンが見えたときシンジは驚いた。

いくらコピーとは言え、ロンギヌスの槍で特攻を仕掛けたのに傷一つついていないその体に・・

「くっ、くそ~、ここまでか・・・・」

今の自分が出来る最大の攻撃でも傷一つつける事の出来ないエデンにシンジは諦め、目を閉じた。

「シンジ・・・・・そんな事で諦めるの!?」

「あれ?幻聴かな?アスカの声が聞こえる・・・」

「私の好きなシンジはいつもこれ位じゃ諦めなかったわ」

シンジはアスカの笑顔を思い出していた。本当に嬉しいときに見せる眩しい笑顔。ちょっと嬉しい時には照れた様な笑顔。

そんな笑顔を思い出していた。

「シンジーー!シンジーー!!しっかりしないさいよ!!」

アスカが自分を呼ぶ声にシンジは目を開けると、そこにはシンジが心から大切にしている人、そして、隣に居て欲しい人が真っ赤な機体で立っていた。

「ア、アスカ!!」

シンジはあらん限りの力でエデンの腕を引き剥がす。

「ホント、シンジって私が居ないと何にも出来ないんだから」

その声は鳴き声だった。

「でも・・・・でも・・・良かった間に合って」

「ア、アスカ・・・・一体・・・」

今、目の前にアスカが立っている事を信じられないシンジは呆然とした。

アスカがここに立っている理由は少し遡る。

 

 

「僕達は貴方達に攻撃はしません。だから貴方達も攻撃を止めて下さい」

「アスカ・・・?」

「シンジの気持ちが見える・・・・シンジの心が泣いている・・・・誰の為に戦っているの?誰を守るために戦っているの?私は知っている。シンジの心を知っている。何故・・・・?私は惣流・アスカ・ラングレーだから・・・・シンジを心から愛している女だから・・・・絶対力・・・・心の力・・・・使徒・・・・・私達の敵・・・・・サードインパクト・・・・・起こしてはいけない・・・・・誰と戦うの?シンジと・・・・誰と生きるの?シンジと・・・・・私の横には何時もシンジが居る・・・・シンジの隣が私の居場所なのよ!!」

「アスカ!!」

レイは必死にアスカを呼ぶ。

アスカは生気に満ちあふれた瞳をレイに向ける。

「レイ!今シンジはどうしているの?使徒はどうなったの?教えてレイ!!」

一気に巻くしてるアスカに口をぱくぱくさせるレイ。

「で、どうなの?」

「あ、あの・・・・あのね、アスカ、ちょっと落ち着いて」

「私は落ち着いているわよ!!」

「い、今、碇君と渚君がエヴァシリーズの防衛に当たっているわ」

「エ、エヴァシリーズですって!!一体私はどれだけ寝てたのよ!!」

アスカ自身も戦った事のある最悪の相手、エヴァシリーズの防衛戦まで寝ていた事に驚くアスカ。

「アスカはまだ寝てなくちゃ駄目よ」

レイは立ち上がったままのアスカの足を掴むと座らせようとした。

だが、アスカはレイの手を払うと

「そんな事している場合じゃないわ!!私、シンジの元に行く。これで最後の戦いだもの。ちゃんと私とシンジの手で終わらせてやるわ」

レイの頭上を飛び越え一気に走り出したアスカ、今のアスカを止められる者は居なかった。

 

「と、言うわけで急いで飛んできたら、カヲルの奴が敵のエヴァから落ちる所じゃないちょっと焦っちゃったわよ。あ、カヲルはレイに言って病院に運んで貰ったから大丈夫でしょ」

「良かった~、アスカ。本当に良かった」

シンジはモニターに写る元気なアスカにちょっと涙が溢れそうになった。

「シンジ!喜ぶのはこいつを倒してからにしましょ」

アスカは目の前に写るエデンを見つめる。

「うん、分かったよアスカ」

「と、言うわけで絶対力を使いましょう。エヴァの力を数十倍にするって事でどう?」

「良いよ。今初号機は持てる力のすべてを使っているから、これ以上の力は絶対力でしか出せないと思うし」

「じゃ、決まりね。と、その前に私もママにお願いしなくっちゃ」

アスカは目を少しの間閉じる。そして、目を開けた時には弐号機の背中にも6対の羽が生えていた。

「じゃ、行くよ」

シンジの瞳に力が入る。アスカもそれに合わせる。

絶対力が発動されるとエヴァの回りからオーラの様なモノが一瞬だけ見え、そして、体に収まった。

「「行くぞ~(行くわよ~)」」

初号機と弐号機は信じられないスピードそしてパワーで攻撃し始めた。

二体の力に呼応して天空から本物のロンギヌスの槍が降りてきた。

弐号機がロンギヌスの槍を掴み、ちょっと振ってみる。

レプリカと違い本物を振ると、もの凄い力が掛かり、空中に稲妻が走った。

「シンジ!行けるわ!!」

「よし!」

シンジは弐号機の為におとりになった。

初号機を全力で走らせ、エデンの前まで行った時、急に飛び上がった。

エデンが初号機に気を取られている好きに弐号機が

「だーーーーー!!」

ロンギヌスの槍を構えてエデンに突っ込んだ。

だが、エデンは弐号機の動きを察知していた

初号機の時と同じようにロンギヌスの槍に向けて手を差し出し、受け止め様とした・・・・・

が、本物は違った。受け止めた筈の手ごとコアを貫き、コアを破壊した。

 

「「やった!!」」

エデンのコアを砕いた二人は、笑顔を交わした。

だが・・・・・

「敵エヴァ、再起動します」

コアを砕かれた筈のエヴァが立ち上がった。

「アダムの力だ・・・・奴め、アダムの力を解放させたのだな・・・」

退避し、他のネルフ職員と共にあったゲンドウは、無くなった右手を見つめながらに言う。

「碇司令!それはどう言う事ですか?」

怪我人と言う事もあり、それ程大きな声では無かったが、非難めいた声でゲンドウを問いつめる。

「私の目的は話した筈だ。アダムの力を使ってユイに再会しようとしたのだ。だが、奴に右手ごとアダムを奪われたのだ」

普段の感情を押し殺した声では無い。

「じゃ、じゃあ今動いているあのエヴァは・・・!シンジ君!アスカ!!」

ミサトの悲痛な悲鳴が辺りにこだました。

「な、何よ!こいつは・・・・」

アスカの顔が見る見る青ざめ驚愕した。

アダムの力を解放したエデンは異形のモノへと変化したのだ。

その体はいたる所に鋭く尖った角がはえ、さらに腕には第四使徒ラミエルの使った過粒子砲の砲台らしきモノが出来、攻撃に適した体にしたのだった。

「アスカ!こいつで最後だよ。僕達でけりをつけよう!!」

「わ、分かっているわよ!こいつさえ倒せばみんな幸せに・・・・サードインパクトも起こらない平和な世界が来るのね」

今の二人のエヴァの能力は絶対力と母親達によって、数十倍にまで高められていた。

「僕が先に行くよ」

「分かった。私はサポートに回るわ」

二体のエヴァは風になった。

「あの力も絶対力だって言うの?」

すでに目にも止まらぬ早さで動き出した二体のエヴァを見てリツコが驚愕した。

「そうよ。エヴァの中に眠る二人の母親の力・・・・あの子達だけが使える絶対力、あの子達はエヴァに未来に選ばれた子達なのよ」

「あの力があればすぐにでも世界を征服出来るわ・・・・・・あの子達がエヴァに選ばれた理由がよく分かった・・・」

ATフィールドとS2機関を搭載した今のエヴァに弱点は無かった。

二人が本気で考えたら、一日としない内に世界は二人の手によって征服されているだろう。

それ程に今のエヴァの力は凄いモノだった。

「よし!」

初号機でアダムエヴァに向かって突進した。

その勢いで転ばしたアダムエヴァをアスカの持っているロンギヌスの槍で殲滅しようと考えたのだ。

だが、二人からみれば、鈍重で動きの遅そうなアダムエヴァが、突進する初号機に向かって突如角を伸ばした。

「シンジ!!」

「だ、大丈夫。ちょっとかすっただけだよ。アスカも油断しないで・・・」

「分かったわ」

アダムエヴァから伸びた角を紙一重でかわした初号機ではあったが、角が微かにかすり初号機に、最高レベルでシンクロしているシンジにダメージを与えていたのだ。

「もう一度行くよ」

「うん」

さらに加速をつける。

だが、アダムエヴァは二人が思っている以上、今のエヴァに匹敵するスピードで動きだし、エヴァに向けて突進してきた。

「わっ!!!」

「きゃ~!!」

アダムエヴァにはじき飛ばされるシンジ達のエヴァ、その時アスカは握っていたロンギヌスの槍を取り落としてしまった。

それを見たアダムエヴァはロンギヌスの槍をおもむろに拾い上げると、一気にへし折ってしまった。

「ああ!ロンギヌスの槍が・・・・」

「本物の槍があんなに簡単に・・・」

SEELEが作り出したレプリカと違い、唯一の本物の槍には神をも殺せる力が宿っている。

そのロンギヌスの槍をそれこそ、竹串でも折るように簡単にへし折ってしまったアダムエヴァ、その力に驚愕して動きの止まった二人に、アダムエヴァは過粒子砲を打った。

「危ない!!アスカ!!」

いち早く気が付いたシンジはアスカを庇うために弐号機の前に体をさらした。

だが、絶対力で高められたATフィールドを持ってしてもアダムエヴァの過粒子砲は防げなかった。

「ぐ、ぐわ~~~!!」

「いや~~~~!!!」

弐号機を守るために体をさらした初号機は、右腕の肘から先を・・・

庇われた筈の弐号機も左の踵から下を持って行かれた。

そして、アダムエヴァの右手が輝きだした・・・

「私達に勝つ力は無いの・・・・」

ミサトは傷ついた二体のエヴァを見て、アダムエヴァの力の恐ろしさを知った。

と、その時、メシアと相打ちになり半壊し、コアが傷つき倒れたままになっている参号機が突如起きあがりアダムエヴァに向かって行った。

「「カヲル(君)!!」」

病院で寝ている筈のカヲルが来たと思った二人は驚きの声を上げた。

そして、参号機との通信モニターをつける・・・・・・・が、参号機には誰も乗っていない。

参号機自らが、アダムエヴァを攻撃目標にして、動き出したのだ。

だが、突進してきた参号機を軽く受け止めるとアダムエヴァは参号機に向かって過粒子砲を打った。

体の半分が無くなった参号機、だが、参号機はアダムエヴァに取りすがって、動きを止めていた。

「ぼ、僕達を助けてくれるんだね・・・・・・これで最後の戦いなんだ!!こんな事で弱音は吐けない!!アスカ行ける?」

「い、行けるに決まっているじゃない!!あれ程頑張っている姿を見せられて黙っていられるアスカ様じゃないわよ!」

高レベルのシンクロが災いしてシンジの右手の肘から先は消えていた・・・・アスカも左足、踵の部分から下が無くなっていた。

だが、体の半分が無くなっても自ら動きだし、自分たちを助けてくれる参号機に呼応して立ち上がると、六対の羽を広げて、空へと舞い上がった。

「「行くぞ~(行くわよ~)!!!」」

二人のシンクロが最高に上がったまま、ユニゾンキックをアダムエヴァに向けて放った。

ドーーーーン

参号機ごと、アダムエヴァの体が吹き飛ぶ・・・・・・

「「やった~~」」

と、思った瞬間、一瞬にして体を再生させるアダムエヴァ・・・・

「ど、どうして・・・」

「わ、私達には勝てないの・・・」

最後の力を振り絞った攻撃でも倒せないのを悟る・・・・・・

だが、シンジはぐっと決意を固めると、アスカに微笑み掛ける。

「アスカ・・・・・」

「分かっているわよ、シンジ・・・・・・今の私の心はシンジと繋がっているもの・・・それしか方法は無いわね・・・」

「ゴメン・・・・アスカだけでもって考えたんだけど・・・・」

「ううん、私だって、シンジだけは助けようと思ったけど・・・・私達二人の力が無いと駄目みたい・・・」

「そうだね・・・・・」

二人はお互いに見つめ合うと、本当に最後の力を振り絞って立ち上がった。

「じゃあ、行こうか?アスカ・・・」

「うん、みんなが幸せになってくれると良いね」

のろのろと動かない体をアダムエヴァに近づけた。

「も、もしかしてシンジ君とアスカ・・・・・」

リツコは先の戦いのレイを思い出していた。

「もしかしてって・・・・リツコ!!」

「多分そうね・・・あの辺りをATフィールドで固めて・・・・・二人・・・・・・・」

リツコの言いたい事を理解したミサト。

「う・・・・そ・・・・よね・・・・・嘘よね・・・・・嘘だと言ってよ!!」

「二人ともそれしか方法は無いって思ったのね・・・」

「駄目よ、駄目よ駄目~!!

ミサトの悲鳴はエヴァに乗っている二人には聞こえなかった。

「僕があいつの動きを止めるから・・・・」

「分かったわ。って今の弐号機じゃその役目は出来ないから・・・・シンジ信用しているからね」

「うん、分かってる・・・じゃ!行くよ!!」

初号機をアダムエヴァに突進させた。

アダムエヴァは最初のように角を初号機に向けて伸ばした。

「だーーーー!!!!」

腹に突き刺さった角を無視し、そのままの勢いでアダムエヴァに突っ込んだ。そして、体を掴む。

「今だよ!!アスカ!!!」

「う・・・・・・・ん」

シンジの体に使徒の攻撃で、瀕死の重傷をおった事を知っているアスカは涙を浮かべたまま、頷くと弐号機の手からディラックの海を発生させ、そこに自分の体や初号機ごとアダムエヴァを引きずり込んだ。

「ぐふっ・・・・こ、この中なら大丈夫・・・・だよね」

「ええ、大丈夫・・・大丈夫よ・・・・」

「じゃ・・・・じゃ、始めようか・・・」

「そうね・・・・・・・・・」

「こいつを倒すには目的を果たさせれば良い・・・」

「リリスの分身である私達のエヴァとアダムの接触で、サードインパクトを起こしてしまえば・・・」

「た、多分・・・・今度は元には戻れないけど・・・・」

「シンジと二人だし、私は良いわよ」

「ゴ、ゴメン・・・・ゴフッ・・」

アダムエヴァに取り付いたままの初号機はアダムエヴァの装甲を剥がしコアを引き出すと、自らの装甲を剥がしコアを剥き出しにした。

同じく弐号機も装甲を剥がし、コアを剥き出しにした。

「じゃあ、アスカ・・・」

「うん、シンジ・・・」

アダムのコアたる部分に無理矢理自分達のコアをぶつけた・・・・無理矢理サードインパクトを引き起こした。

十字に爆発するアダムエヴァ・・・

二人の乗るエヴァも白く白く真っ白な光に包まれた・・・・

「アスカ・・・もう離さないよ・・・」

「シンジ・・・私も離れない・・・・」

輝く光の中・・・・シンジはアスカから預かっていたネックレスから指輪を引きちぎると、そっとアスカの左手の薬指に付けた。

「僕達、みんなに囲まれて幸せだったね・・・」

「うん、そうね・・・・・これでみんなも本当の幸せになれるわね・・・・」

「うん、僕達が過去に帰って来た事は無駄じゃなかったよね・・・」

シンジは優しくアスカにキスをした。最後のキスを・・・・そして二人はそっと離れた。

「シンジ、大好きよ・・・」

「僕もだよ。アスカ・・・」

二人の体が輝く閃光の中に消えた。

そして、エピローグへ・・・


後書き

もきゅうです。第壱拾弐話をお送りしました。

DtEも次で最後になります。ここまで僕の作品を支えて下さった皆々様には感謝の言葉もありません。

このお話を始めたのが、この話の最後シンジがアスカに指輪を付けるシーンが浮いて来た事に始まりました。

これまで、執筆が凄く早く進むこともあれば、スランプに陥り全く書けない事もありました。

読者の皆様のメールが励ましとなり、スランプも乗り越えここまで書き上げる事が出来ました。

 

今だから言えますが、最初はもっと楽しい作品で、最後までそれほどピンチにならずエンディングまで行く予定でした。

僕もその方が書き易い僕なりの補完のお話だったからです。

ですけど・・・・

後は、エピローグの後書きにとっておきます。

Dream to Evaも最後1話ですので、どうぞ最後までお付き合い下さい。

第壱拾参話 エピローグ ”誰もが持つ力”でお会いしましょう。

 

感想、苦情とかありましたらもきゅうまでメ-ル下さい。お願いします。

でわ

 


遂に迎えた「DtE」最終話!!

様々な謎が解き明かされる。
ミサト、加持、ゲンドウ、リツコ、ゼーレ。
レイの目覚めとカヲルの闘い。
そして最後の闘いに望むシンジとアスカ。
だが最強最大の敵、アダムエヴァを倒す事は出来ない。
大好きな皆の笑顔の為、そして過去の過ちを二度と繰り返さない為に2人はサードインパクトを引き起こす。
シンジはアスカ。アスカはシンジ。大好きな人と共に、2人は輝く閃光の中へ……。

ううううう!!
と、とにかく「エピローグ:誰もが持つ力」を見るべし!