ミサトは、本当なら修学旅行や学校の様々な行事にもっと二人を参加させてあげたいのよ、と言う思いがこみ上げ不意に椅子から立ち上がり二人を抱きしめた。
「わ、み、ミサトさん」
「ちょ、ちょっとミサト」
「ごめんね、ごめんね」
謝りながら抱きしめるミサト。二人は偽りとはいえ、自分たちの事をこんなにも考えてくれる家族が居ることが嬉しかった。
「ねえシンジ、見て見て、バックロールエントリー」
シンジ、アスカ、レイ、カヲルは待機任務があるため、修学旅行に行けない。そんなチルドレン達に少しでもストレスを発散させてあげたいと思い、ミサトはネルフ内にあるプールの使用許可を出した。四人はそのミサトの心遣いを感謝してプールに来ていた。
相変わらずあまり泳げないシンジは、手を振り、アスカが潜ったのを確認すると端末に表示されている問題に取り掛る。
そんなシンジをプール逆サイドから見ていたレイは、何故か心が苦しくなる事に気が付いた。
『何故?何故私は碇君とアスカを見ていると胸が痛くなるの?』
自問しているレイに答えるモノは居ない。レイがシンジの方を向いているのに気が付いたカヲルはレイの側まで泳ぎつくとプールの中からレイを見上げる。
「綾波さん、シンジ君に見とれているんだね」
レイに笑顔を向ける。レイはちょっと顔を赤くして
「な、何を言うのよ」
学校では見られないレイの動揺する姿を見たカヲルは嬉しそうに笑うと、振り返りシンジを呼ぶ。プール施設内は声が良く反響する為、カヲルはそんなに大きな声を出すこともない。
「何?カヲル君」
「いや、シンジ君は何故泳がないんだい」
「いや、それは、あの、その」
動揺しているシンジにカヲルはにこっと笑うと
「なんだシンジ君は泳げないのかい。それならそうと言ってくれればこの僕が手取り足取り・・・ガバァ・・ゴボゴボゴボ」
アスカは何故かシンジの危険を察知し、潜ったままカヲルに近づくとその足を引っ張り込んだ。
「か、カヲル君」
シンジは心配そうにカヲルを見ているがカヲルの方がシンジに笑顔を向けていた。溺れながらだけど・・・
レイはそんなカヲルを見て、自分でも知らない内にちょっと笑っていた。
「ちょっとカヲル、何シンジにちょっかい出してんのよ」
「惣流さん、いくら僕とシンジ君の中が良いからって焼き餅は焼かない方がいいと思うよ」
「シンジを変な道に誘わないで!!」
プールから上がったアスカとカヲルは睨み合う。いや、アスカが一方的にカヲルを睨んでいた。そんな二人を何時の間にか側まで来ていた苦労人シンジが取り持つ。
「ちょっと、アスカ、カヲル君もこんな所に来てまで喧嘩しないでよ」
シンジの言葉にカヲルは振り向くと、いきなりシンジの手を握り
「やっぱりシンジ君は好意に値するよ。好きってことさ・・・フッ」
見つめ合う二人。アスカは後ろを向いたカヲルの頭を殴る。レイは側に置いてある椅子に座って、三人の、いや、シンジの様子を眺めていた。
「何見つめあってんのよ。ちょっと、何シンジも顔を赤くしてんのよ」
「そそそんな事ないよ、アスカ」
自分がカヲルに見つめられて顔を赤くしている事を自覚していたシンジは誤魔化す。アスカは崩れ落ちていたカヲルに蹴りを一発入れるとシンジに迫ってきた。シンジはアスカの迫力に押され後ずさりする。後ずさりしていたシンジの目にレイが写った。それはシンジにとって女神にも見えた。
「あ、綾波、助けてよ。アスカを止めてよ」
迫り来るアスカから逃げる様にシンジは走り出す。逃げたシンジを追うアスカ、逃げるシンジそんな二人見ていたレイはまたさっきの様に胸が痛み出した。その側にアスカに沈められていたハズのカヲルがいつの間にか立っていた。
「あの二人はああやってお互いを認め合っているんだね」
「解らないわ」
レイは胸が痛いことを自覚していたがその原因がなんなのか解らない。レイの思いを知っているのか知らないのかカヲルはレイの方を向くと
「綾波さんも時が来れば解るよ」
追いかけっこをしている二人を微笑みながら見ていた。
ミサトはその頃、浅間山に来ていた。
『やっぱりシンジ君達の言ってた通りね』
使徒らしき影が見えるとミサトは有無も言わさず
「現時刻をもってココを封鎖します。過去24時間以内の事象はすべて部外秘とします」
まだ影しか見えず、これが使徒である可能性は低い。マコトはミサトの言ったことに珍しく反抗した。
「待って下さい、葛城一尉。まだ使徒と決まった訳じゃ」
「いいの、この影を見れば誰だって解るわ。私は司令に報告してくるから後は頼むわね」
部屋を出て行くミサト。マコトはしょうがないと言う顔で見た後、自分に与えられた任務に戻った。
電話に出たのはマヤだった。
「もしもし、私よ。司令にA-17を要請して」
ミサトの言葉に慌てるマヤ
「葛城さんこれはスクランブル回線じゃないですよ」
「解っているわ。だから司令に伝えるだけで良いわ」
「解りました」
「A-17だと、碇、それを許可したのか」
真っ暗な部屋の中、ゲンドウの前には5人の男達が座っていた。その中で議長と呼ばれている男が碇に言う。
「ええ、キール議長。反対する理由もありません」
尊大な態度で答えるゲンドウに
「碇、失敗はゆるされんぞ」
ふっと消えて行く5人、残ったのはゲンドウと冬月だった。
「失敗はゆるさんか、失敗すれば人類も滅亡するというのに」
「ああ」
それだけ言うと二人も消えた。
プールから上がった四人はリツコに呼ばれブリーフィングルームに来ていた。
「浅間山の火山の中に使徒らしき影が発見されました。今回担当して貰うのはアスカ、あなたよ」
その事を知っているアスカは黙って頷く。
「D型装備は初号機や零号機といった試作機には合わないの」
リツコの説明にすかさず補足をするマヤ。
「初号機、弐号機及びパイロットは速やかに浅間山に急行、使徒を捕獲します」
そこでカヲルが手を挙げる。
「僕も一緒に行っちゃ駄目ですか」
「貴方が行っても邪魔になるだけだからレイと一緒に本部で待機してて」
リツコに言われしょうがなく納得する。カヲルは隣にいた何か考え事をしているシンジに
「シンジ君、がんばって。ああ、惣流さんが潜るんだっけ、じゃあがんばって」
「むかー!アンタに言われなくたってがんばるわよ!」
アスカは部屋を飛び出て、更衣室に向かう。カヲルは苦笑してシンジの耳元に顔を寄せると
「シンジ君、君たちなら大丈夫。僕は一等席で見学させて貰うよ」
部屋を出ていくカヲル、レイ。シンジは考え事をしていた為カヲルの言った事さえ気が付かなかったが、考えがまとまったのか部屋を出て更衣室に向かう。
更衣室に付いたアスカは後から来たリツコとマヤに耐熱様プラグスーツを貰うと着替え始めた。
『またこれ着なきゃいけないの。こんなカッコ恥ずかしくってしょうがないのに。けどシンジは解ってくれてるわよね。あっそうだシンジにも着せないと』
殲滅に変わると分っているアスカは、リツコに耐熱プラグスーツをシンジの分まで用意するように言った。
「なんで?アスカ。今回はアスカが潜るのよ。シンジ君の初号機にはD型装備があわないし、初号機が潜る事はないでしょう」
「良いリツコ。もし捕獲出来なかったらどうするの?」
「その時は使徒を殲滅に変わるわ」
さも当然と言わんばかりに言う。
「殲滅に変わったとしたら極限状態の中で生きている使徒に効く武器は?いくらなんでもプログナイフだけ無理よね」
自分の盲点を突かれたリツコ、さらにアスカは
「と言うことは弐号機を冷やしている冷却液を使って熱膨張で倒す?例え使徒を殲滅出来たとしても、圧力で弐号機が潰されるわ。シンジが上で黙って見ているだけだと思う。初号機がB型装備だろうが、自分がどうなろうが私を助けてくれる、そう言う男なんだから。あの時もそう誓ってくれたし」
「あの時???」
「な、なんでもないわ。そう言う訳だからシンジにも、せめて耐熱プラグスーツぐらい渡しておいて」
アスカの言うことに納得したリツコはマヤにシンジ用のプラグスーツを用意するように指示を出した。
浅間山に着いたシンジとアスカは臨時の作戦室の隅で相談していた。
「ねえ、アスカ。ちょっと相談したいんだけど」
「ん、なに?」
「使徒を捕獲するのちょっとずらさない?」
「なんで?」
「だって、後2時間位で孵化を始めるんだよ。だったらその2時間を誤魔化してしまえば、殲滅に変わるし」
ちょっと考えたアスカはシンジに答える。
「う~ん、そ~ね。・・・うん、やっぱり私潜るわ」
「な、なんで?」
シンジは何故アスカが危険なのを承知して潜るのか解らない。アスカはシンジの鼻をちょこんと突っつくと
「だって、私が潜って危険な目に遭ったってシンジが助けてくれるでしょ」
「うん、・・・けど」
シンジは納得出来ない。
「それに私達には絶対力があるし」
「絶対力?」
「そう、私達が絶対に夢を叶える為の力、だから絶対力」
「うん」
「で、私が使徒を捕獲して孵化後、絶対力を使いロンギヌスの槍を出す。そして使徒を殲滅っていうのが私の考え」
「そうなんだ。やっぱりアスカは凄いね」
「ふふ~ん、当然よ」
自慢げに胸を張るアスカ
「だけどアスカ、あのD型装備の腕じゃ槍なんて使えないんじゃないの?」
「あっ」
「も、もしかして考えていなかったの?」
シンジの何気ない言葉は、あまりにも図星だった為アスカも言い返せない。
「ねえ、アスカ。僕はアスカが潜るのを止めなかった時の為に考えた事があるんだけど、聞いてくれる?」
真剣な顔にアスカは頷く。
「使徒が孵化しそうになったら使徒の周りにATフィールドを展開、絶対力を使って強化すれば使徒には破れないと思う。その後地面まで持っていければ僕が使徒を殲滅すると言う事なんだけど」
「う~ん、そうね~その考えなら私もマグマの中に落ちることもなくていいわね。それにあの使徒って海で倒した使徒に似ているから地上に出れば楽勝かもね。うん、そうしましょ」
アスカはシンジの考えに賛同して答える。もっともアスカは真剣に自分の事を考えてくれるシンジに、逆らうつもりなどなかったが・・・
「じゃあ、いいねアスカ」
「うん、それじゃ私ちょっと行ってくるね(はぁと)」
と言うとシンジに近づき、さっと唇を合わせると発進準備の終わった弐号機に走っていった。シンジもいきなりで恥ずかしかったから顔を赤くするが、火山の上で待機なので初号機に向かって行った。
「アスカ巧い」
使徒をキャッチャーの中にとらえるとミサトがアスカを誉める。
「ミ~サ~ト。私を誰だと思ってんの!私は惣流・アスカ・ラングレーよ!この位当たり前じゃないの」
やはり、多大なるプレッシャーのかかる作業を終え、肩の力を抜くアスカ。しかしこれはシンジとの作戦の初段階でしかない。
「アスカ、気を付けて」
シンジはアスカに注意を促す。アスカもモニターに写った真剣な顔のシンジに頷く。
上にあがる弐号機、やはりその時は来た。
「キャッチャー内の使徒が孵化を始めました!」
シンジとアスカ以外に一番最初に気が付いたのは弐号機と使徒をモニターしていたマコトだった。リツコは自分の計算違いに舌打ちするとすぐさまアスカに指示を出す。
「アスカ、使徒が孵化を始めたわ。そのキャッチャーでは使徒の孵化を止められないわ。早くキャッチャーを破棄して」
リツコはアスカに指示を出すが、アスカは目を閉じたままキャッチャーを破棄しない。
「使徒の周りにATフィールドを確認、使徒は孵化の途中で止まっています」
リツコとミサトはマコトの報告でアスカが何をやっているか気づいた。ミサトはリツコを見ると
「リツコ、もしかしてアスカがATフィールドを張っているの?」
「そうよ、あの状態からATフィールドを張れるなんて思わなかったけど・・・」
「あのまま保つかしら?」
ミサトの淡い期待にリツコは
「無理ね、極限状態で孵化を始めようとする位なんだからあの使徒の成長する力は並大抵のモノじゃないわ。今の弐号機が全力でATフィールドを張っていても上がってくる半分位の所で破られるわ」
ミサトはモニターに写っているアスカを心配そうに見つめた。
しかし、リツコの考えは甘かった。今のアスカのATフィールドは、シンジとの”絶対力”により全力で張ったATフィールドの10倍以上の強度があり、その上張っているアスカの負担にならない程度だった。
「うそ、信じられないわ」
リツコの呟きにミサトは笑顔を浮かべる。とその時、本部から緊急に連絡が入った。
「か、葛城さん、せ、先輩、大変な事になりました」
通信してきたマヤは真っ青な顔をしている。
「どうしたの、顔真っ青よ」
ミサトは通信モニターのマヤに言う。
「あ、あの、あの」
「ちょっと落ち着きなさいマヤ」
「は、はい先輩」
「で、何があったの?」
「は、はい、実は昨日倒した第五使徒(ラミエル)が蘇って、保管庫から直接セントラルドクマに向けて進行を開始しました」
マヤの報告にミサトとリツコは顔を見合わせる。
「そんなハズ」
「今、零号機が迎撃に向かいましたが、長距離砲により近づけずにいます。すぐに初号機をこちらに回して下さい」
ミサトはマヤの応援要請にちらりと使徒の様子を見るとすぐさま答える。
「解ったわ、直ちに初号機をそちらに送り返します。零号機はその場にて待機、すぐにポジトロンスナイパーライフルを用意させて!」
「はい、解りました。直ちに要請します」
通信モニターが切れる。ミサトはすぐさまシンジを呼び出す。
「シンジ君、緊急事態よ、前に倒したハズの使徒が蘇って本部を攻撃中なの。シンジ君と初号機はすぐに本部に急行して」
アスカと同じように目をつぶっていたシンジはぴくっと眉を揺らす。
「シンジ君!こちらの使徒はアスカが居るし大丈夫だから、早く本部に戻って!」
それでも動こうとしないシンジに、ミサトは大声を出そうとする。しかしその回線にアスカが入り込んできた。
「シンジ、行って。ココは私一人で大丈夫。今回はプログも落としていないしヘマもしないから、レイをみんなを守ってあげて」
アスカが言うとシンジは目を開けアスカを見る。その顔は悲しそうな顔だった。
「アスカ」
「大丈夫、たまには私にも見せ場を作りなさいよ」
にこっと笑うアスカ。シンジはそんなアスカを見ると黙って頷き本部に急行する為のSTOLに向かった。
「シンジ君も心配性ね」
自分の予想を遙かに上回るほどの弐号機の力を見ていたリツコは言う。ミサトもシンジ君はアスカに過保護過ぎるのよね~なんて思っていた。
しかし、事態は初号機を載せたSTOLが飛び去った後、急に訪れた。
「使徒、孵化を再開しました。このままではATフィールドが破られるのも時間の問題です」
「そ、そんな」
今まで強化して張ってあったATフィールドによって閉じこめられていた使徒は、急激に孵化を再開する。
「キャッチャーを破棄します」
アスカはすぐにキャッチャーを破棄した。
使徒は押さえられていたモノが外されるとすぐに成長し、完全体になると浮上中の弐号機に襲いかかった。
「シンジも安心してあっちの使徒を殲滅出来る様に、私がすぐに倒してあげるわ」
CGモニターに切り替えたアスカは舌舐めずりをすると、遠くから近づいて来る使徒を睨み付ける。使徒は口を開け、弐号機に迫ってきた。
使徒はアスカの予想通りのコース、スピードで迫ってきた。アスカは慌てずにリツコに言う。
「リツコ、左手のシンクロを切って」
リツコはアスカのやろうとしている事に気が付き、マコトに指示を飛ばす。ミサトは何をやっているのか解らない為、リツコに聞く。
「リツコ、なんでアスカは左手のシンクロをカットするように言ったのかしら?」
「ミサト、気がづかない。アスカがやろうとしている事に」
「全然」
リツコはふ~とため息をつくと解説する。
「アスカがやろうとしている事、それは、熱膨張よ」
「熱膨張???」
「そう、左手のシンクロを切ったのは左手を使徒に噛ませて其処に冷却液を流し込むって事、そうすればあの高圧高温の中の使徒だって、いやあの極限状態だからこそ倒せるハズよ」
「ああ、なるほど」
リツコの説明で納得し、モニターを見るミサト。其処にはすぐ前に使徒が迫った弐号機が写っていた。
「早く噛みつきなさいよ」
アスカの思惑通り、弐号機の左腕に噛みつく使徒。すぐさまリツコはマコトに指示を出す。
「冷却液を3番に回して、早く!」
いつも冷静なハズのリツコが慌てて言う。
冷却液が送られた途端、使徒は熱膨張により殲滅出来た・・・・・・・・・・・しかし、使徒の最後の攻撃は前回同様、またも弐号機を支えている冷却パイプを切断してしまった。アスカは切れたパイプを見るとそっと呟く
「シンジゴメンね、私失敗しちゃった。先にママに会いに行くね。シンジ・・・ゴメンね」
そのままマグマの中に消える弐号機。
その頃シンジは初号機の中でアスカを心配していた。
「アスカ、大丈夫かな。アスカの事だからきっと使徒を殲滅してこっちに駆けつけてくれるよね」
アスカを心配しつつも、これから倒さねばならない使徒に意識を向ける。
「あの使徒は、僕と綾波で一緒に倒した最初の使徒だった。確か前の時は僕の打った2発目が使徒を貫通すて完全に殲滅していたハズだし、あの後も復活しなかったハズなのにやっぱり歴史が変わってきている。僕やアスカの記憶にだけ頼っていちゃ駄目なんだ。僕がもっと強くならないと」
本部に向けてSTOLは飛び続ける。
「シンジゴメンね、私失敗しちゃった。先にママに会いに行くね。シンジ・・・ゴメンね」
本部まであと半分という時、シンジの頭の中に弐号機がマグマの中に消えていくイメージと共にそれは聞こえてきた。
「アスカ、アスカ」
シンジは頭の中のアスカに呼びかける。しかしシンジの声はアスカに届かない。悪い予感だけがシンジの頭の中を支配する。
「もしかしてアスカ、本当に・・・・・・・・嫌だ、アスカ~~、僕は、僕は、アスカを失いたくないんだ!!!僕はアスカを守るって誓ったんだ!!!」
シンジが言った途端、初号機が眩しい光に包まれる。
しばらくたって光が消えた後、STOLには初号機は載っていなかった。
「深度1500・・・か、もうじきね」
もうすでに弐号機の両手、両足は圧力に潰されている。ボディーが潰されるのも時間の問題だった。
「シンジの笑顔、もう一度だけ見たかったな」
すでにあきらめていたアスカは、目をつぶり自分にだけ微笑んでいるシンジを思い浮かべていた。そうすればこれから訪れる死への恐怖も和らいでいく。
機体が潰されていく音がはっきりと聞こえだした。アスカはとうとう来たのねと思った瞬間、ガタッと落ちるのを止めた。はっと目を開け、モニターを見ると、其処には6対の羽を持った初号機が写っていた。アスカは初号機を見た途端呟く
「バカ、無理しちゃって」
シンジからのモニターが開く
「アスカ、アスカ、大丈夫?」
「私は大丈夫よ。シンジ」
思いのほか冷静なアスカを見たシンジは笑顔を浮かべて
「そう、良かった」
「ねえ、アスカ、このまま本部まで飛ぶけど大丈夫?」
「大丈夫よ、早く本部に行かないとレイたちが危ないわ」
「解った。それじゃ行くよ」
D型装備の弐号機でも潰されるほどの圧力にも全く損傷していない初号機、シンジは弐号機を腕に抱きかかえると火山の出口まで上がり、羽を広げそのまま本部に向かって飛んでいった。その速度は目に見えない位だった。
火山から上がって来た初号機を見たミサトとリツコは
「ね、ねえリツコ、シ・ンジ君ほ、本部に向かったんじゃ・・なかったっけ?」
「そ、そうよ。た、確かにSTOLに搭載され・・て、本部に向かっ・・たわ」
「そう・・よね、そ、それにリツコ・・何時の間に初号機って空を飛べる様にしたの?」
「わ、私は、そ、そんな事出来ないわよ」
「じゃ、じゃああれは?」
「ゆ、夢よ。私とミサトは夢を見ているのよ」
「そうか、夢なのね。はっはっは」
現実逃避を始めた二人。
初号機が本部に着くと零号機が待っていた。シンジはアスカの載った弐号機をそっと下ろす。いつの間にか羽はなくなっていた、そしてレイに状況を教えて貰う。
「じゃあ、まだライフルは用意されてないんだね」
「ええ」
「どうしてなのかな?だってアレってあのままネルフで貰っちゃったんでしょ」
「日本中の電力が必要なのよ」
「あ、そうか」
そこにゲンドウから通信が入る。
「シンジ、初号機は電源も付けずに動けるのか」
シンジはゲンドウを見て
「それは父さんの方が知っているんじゃないの?」
シンジの言葉に、普段の冷静な言動からは想像出来ない位、動揺するゲンドウ。
「し、シンジ、お前は知っているのか?」
「多分」
「そうか、ならいい。それよりも初号機にライフルを取り付けろ」
「なんで?」
「今の初号機からなら、電力は間に合うハズだ」
それだけ言うと通信を切る。
シンジはマヤが指示を出し運んできた、ライフルの電源部分に初号機を繋げる。そうすると、すぐさまライフルが撃てる位のエネルギーが溜まった。
「シンジ君、私がMAGIを通して使徒の位置を出すわ。だからシンジ君は其処から壁越しに使徒を撃って」
「解りました」
初号機は撃ちやすい様に寝ころがるとマヤの出す標準に合わせた。レイはあの時と同じようにもしもの時の為に初号機を庇う準備を自ら行っていた。シンジは誰からの命令もなく動くレイに微笑むとレイの零号機に通信を開く。
「綾波、僕の事は気にしないでアスカを守ってあげてよ。あの時と同じように一発目が外れたとしても今回僕は動けるから、けどアスカの弐号機は潰されちゃって動けないからもしもの時は守ってあげて」
レイは頷くとアスカの載っている弐号機の側に行く。
「ごめん、レイ」
D型装備が潰れているので外にでれないアスカは、何時になく素直にレイに謝る。
「貴方が死ぬと碇君が悲しむわ」
レイは自分と弐号機を守るように盾を展開した。
シンジはレイの準備が終わると精神を集中させてモニターに写った標準に合わせると引き金を引く。
陽電子の光は壁を溶かし、そのまま使徒に向かって行く。使徒も迎撃の為に撃ってきた。二つの光は互いに干渉しあうが、シンジの撃った攻撃は、そこまで計算していたのでそのまま使徒を貫く。
しかし、使徒の撃った攻撃は運悪く、アスカとレイの方に向かって行った。
「アスカ、綾波!!」
叫ぶシンジ、レイは展開していた盾で光を防ぐ、しかし今回は距離が短い為に、思っていたより盾が溶けるスピードが速かった。
シンジはモニターのアスカに叫ぶ。アスカもシンジに頷くと、零号機の前にもう一枚盾が出て来た。その盾は使徒の攻撃を受け溶けてしまったがもう一枚の盾のお陰で、レイの持っていた盾も溶けきることなく二人を守り切れた。
「碇、シンジ君はあの事を知っているのか」
「多分な」
「それでは我々の計画も・・・」
「其処までは解りませんよ、冬月先生」
「今更お前に先生呼ばわりされるとはな」
「ふっ」
そのまま二人はモニターの中の初号機を見ていた。
「ね、シンジ君良いだろ」
何故か、体をしならせながらシンジに迫るカヲル。
「えっ、カヲル君困るよ」
顔を赤らめるシンジ。
バキッ
見事にカヲルの後頭部に決まるアスカの蹴り。使徒を殲滅した後ネルフにからの帰り道にシンジが早く帰ってお風呂に入りたいなと言った事から始まった。
「ちょっとカヲル、シンジを変な道に引き込むなって言ってんのよ」
カヲルはすぐに回復するとすくっと立ち上がり、アスカに近づくと
「惣流さん、僕は男同士のスキンシップの為に一緒にお風呂に入ろうって言っただけじゃないか」
「だったら、なんで体をしならせる必要があるわけ!!」
「ふっ、僕には男の子も女の子も関係ないのさ。僕は自分に正直なだけだよ」
「アンタが自分に正直なのは解ったわ。けど金輪際、シンジに自分の趣味を押しつけないで!!」
「シンジ君はどう思う」
急に話を振られたシンジは、カヲルとアスカの顔を見回す。
「え、あの、ちょっと、僕に聞かれても」
「シ~ン~ジ、そんなの断るわよね」
シンジは鬼の様な表情でずんずん近づいてくるアスカにびびり、後ずさる。後ずさりしていたシンジの目にレイが写った。それはシンジにとって女神にも見えた。
「あ、綾波、助けてよ。アスカを止めてよ」
と言うシンジにレイは
「ちょっとシンジ、いい加減にしなさい!」
「「え」」
シンジを睨み付けるレイにアスカとシンジは驚いた。カヲルだけは微笑んでいた。
つづく
後書き
どうもこんにちわ、もきゅうです。
やっと、力の名前が出て来ました。その名も絶対力(ぜったいりょく) 名前を付けて頂いたのは怪作さんです。
この場をお借りしてお礼申し上げます。
ちょっとしか現れない癖に、ゲンドウの言動が怪しい(笑)
レイも変わりましたし?これからどうなって行くんだろう?(無責任な作者)
でわまた第五話でお会いしましょう。
感想、苦情、リクエストとかありましたらもきゅうまでメ-ル下さい。お願いします。
でわでわ
好評連載中、もきゅうさんの「Dream to Eva」の第四話でした!
いやいや本当にすごい執筆ペースですね。もきゅうさん本当に執筆お疲れさまです~(^o^
さてさてこの第四話では……むう、いきなりカヲルがやっちゃってますね(笑)
シンジに絡むカヲルにとにかく嫉妬するアスカ。こうゆうシチュエーションはやっぱ萌えますね(笑) まさに「プリプリアスカでLAS万歳」って感じです(´ー`) ←バカすぎる表現
そんなチルドレン達の前に現れるのは、過去の流れと同じく使徒サンダルフォン。
シンジが居ないってのにアスカが火口に落ちちゃってかなりハラハラしましたが、羽の生えた(!)初号機の活躍により無事救出成功。そして復活した使徒ラミエルも撃破。
うう、よかったよかった。
しかし本編と同じく何でも分っているようなゲンドウの台詞が気になりますねぇ。やっぱこれは今後の為の伏線なんでしょうか…?(^^;
ハイペースで作品をお届けするもきゅうさんへ作品のご感想を!
上記まで是非お願い致します(^o^
おお、遂にシンジとアスカの力に名前が付きましたね。
「絶対力」ですか。なるほど、いいネーミングですね(^^
本編通りですと次はネルフ停電の話なのですが、果たしてどんな展開が待っているんでしょう。もうすっごく楽しみです!
もきゅうさん、くれぐれも無理をなさらず頑張ってくださいね~。