VOL.3 ~蒼空に響く想い~

NEON GENESIS EVANGELION

ANOTHER STORY

 

SAVE THE LOVE !!

 

VOL.3 ~蒼空に響く想い~

 

written by Tomyu

 

「マスタング...マスタング...こちらアップルジャック103...応答せよ。」

「アップルジャック103...こちらマスタング..どうぞ !」

「セクター3通過、間もなくファイナルアプローチに移る。」

「アップルジャック103、了解!」

旧駿河湾上空1万2000メートル...

シンジは愛機を最終着陸体勢にすべく機体を翻した。

6年前に彼が操っていた「エヴァンゲリオン」と比べると、原始的で狭いコックピットに彼は収まっていた。

眼下に広がる青い海原...外洋は既に6年前の出来事などなかったかのように、その営みを続けている。

やがて、彼の操る機体は大きく荒れた大地を飛び越える。

「滑走路視認。エアブレーキ展開。ランディングギア降下...」

エンジンの出力を上げ、機首を引き起こして着陸の体勢を整える。

キュッ!!

車輪が滑走路を捉え、機体は一気に減速しながら滑走路を駆け抜ける。

滑走路の中程で、機体の速度はゆっくりとなり、誘導員の合図に従って向きを変え、所定の駐機スポットで停止する。

エンジンを停止し、キャノピーを開ける。

「ふぅ...」

所定の停止手続きを終了すると、シンジは酸素マスクを外し、ヘルメットをとって一息ついた。

「ご苦労さまです、碇二尉。」

「よろしく頼みます。」

整備クルーが彼の機体の周りに集まり、点検を開始する。

シンジも彼らと一緒に一通りの愛機の点検をすると後は彼らに任せた。

シンジは機体から離れ、遠目から一瞥した。

F―22Cラプター

これがシンジの乗る機体の名前である。20世紀末に登場したこの機体はかれこれ20年近く現役でいる。

度重なる世界の混乱、機体単価の上昇...それらの要因が後継機種の開発を全く立ち行かなくしていた。

そしてシンジはこの機体を運用する組織...航空自衛隊第7航空団...に現在所属していた。

シンジが本当に所属しているのは実の所NERVであり、それはサードインパクト前から変わってはいない。

今、シンジがここにいるのは NERVから派遣されているからであり、

彼自身航空機のパイロットになりたいという一心からに他ならなかった。

「おーい“エヴァ”!!」

彼のコードネームを呼ばれシンジは振り向く。

パイロットは全員コードネームを持ち、基地内ではそのように呼び合うのが慣例となっている。

当然シンジも自分のコードネームを考えたのだが、彼の素性...「エヴァンゲリオン」初号機のパイロットだったこと...は直ぐにばれ、パイロット仲間からは有無を言わせず“エヴァ”と呼ばれているシンジであった。

振り向いた先にはジープに乗ったパイロットの同期生『ムサシ・リー・ストラスバーグ』...

コードネーム“シンデン”がシンジに声をかけていた。

「“エヴァ”!!のってけよ!」

「悪い、頼むよ!」

そういうとジープの後部座席に装備を放り込み、ひらりと助手席に飛び乗った。

シンジが乗り込むと、ムサシはジープを発車させた。

「どうだい?戦闘機にはなれたか?」

尋ねるムサシ...

「まぁね、でも感覚が全然違うんだよ....」

「あったりまえだろ!おまえが乗ってたのはロボットなんだぜ!エヴァと同じ感覚で乗ろうとするから、違和感を覚えるんだ。」

ムサシは苦笑する。

「そりゃそうだな...」

頭を掻くシンジ。

「話変わるけど“エヴァ”、今日は暇か?」

「特に用事はないけど...」

「じゃぁ今日はつき合えよ、街に行こうゼ!明日は地上訓練だしよ。」

運転しながらシンジをみたムサシは陽気に誘った。

「“シンデン”のオゴリかぁ...悪いなぁ...」

シンジもすかさず切り返す。

「オイ!俺は男に奢る趣味はない!!」

「オゴリたいのはあの娘だけだもんな♪」

シンジはかつて自分も好きだった女性のことを思い浮かべていた。

とにかく元気で、清楚で、可憐という形容がぴったり当てはまる存在...『霧島マナ』...の事を

「このっ!」

ムサシはハンドルを素早く切り、車を左右に揺する。

キュキキキキッ!!

「うわぁっ!ゴ、ゴメン!!悪かったってば!!」

ジープから振り落とされないよう、シンジは必死に捕まりムサシに謝った。

「そのマナも来るんだ。ま、楽しくやろうぜ!」

訓練を終えたシンジとムサシは連れだって、新歌舞伎町へと出かけた。

「ムサシ、シンジ!!お待たせぇ♪」

待ち合わせ時間に少し遅れてマナが現れた。

「遅いぞマナ!こっちは腹減って死にそうなんだから!」

「大の男が文句言わないの!ねぇシンジ♪」

パイロットの訓練をはじめてから、シンジが会うのは専らこの二人であった。

ムサシとマナの親密度は増す一方であり、シンジとしても対処に困る時もある。

...生死を共にした仲だもの...無理もない...

シンジは6年前の『あの出来事』を思い出す。

互いに敵同士で戦ったシンジとムサシ...

最終的にムサシを選んだマナ...

大破したロボットの中に消えていくムサシとマナ。

呆然と見守るシンジ。

彼らの上空に飛来する爆撃機...

「シンジッ!!」

その場でただ立ちすくむシンジに必死の形相で駆け寄るアスカ。

アスカはシンジを抱きかかえて、弐号機のエントリープラグに逃げ込む...

爆発するNN爆弾...

「シンジさえ良ければ...アタシが霧島さんの代わりになってあげてもいいのよ...」

それは、アスカの精一杯の優しさ...

アスカに助けられたシンジが再びその場に戻ったときには、溶けた金属の固まりだけが取り残されていた。

その後探しにいくも見付からず、マナとムサシの死を悟ったシンジ。

シンジはマナへの想いを断ち切るかのように芦ノ湖へ向かい、思い出の写真を燃やした。

そんなシンジの傍に言葉少なに佇むアスカ....

そして...急に振ってきた夕立...

雨のバス停で、ぎこちなく抱きしめ合った二人...

お互いの存在を感じるように...

シンジの心の中にアスカが住んだ最初の瞬間...

あれから、数年...

シンジの心の空室には、未だ鍵が掛かっていた....

マナとの思い出は、そのままアスカとの思い出に直結してしまう自分に焦るシンジであった。

それでも、二人のやりとりを見ていると、とても微笑ましくもあり、寂しくもあった。

二人を見つめるシンジ。

「んじゃ、この店入ろうぜ!ここのパスタは絶品だからな!」

シンジの思考はムサシの言葉で中断する。

三人で過ごす楽しいひととき、ビールやワインが次々と現れては消える。

昔話に花が咲く。

「...だから、大変だったんだよ!あの時は...って聞いてるのか?シンジ!!」

「あっ、ああ...聞いてるよ...」

ムサシは酒が入ると必ずと言っていい程、あの時のことを話し出す。

脱出カプセルで三日間太平洋を漂流して漁船に救助されたこと。

マナは一時名前を変えて、九州の方へ移り住んだこと。

ムサシは捕まり、二年間営倉へ放り込まれた上に、配置替えで航空隊に移されたこと。

シンジはもう10回は聞かされている話だった。

「もういいじゃないよ、ムサシ!」

シンジに絡みだしたムサシにマナが割ってはいる。

ムサシはかなり酔っているようだ。

「ごめんね、シンジ。こいつの相手するの疲れるでしょ?」

前後不覚に陥っているムサシを介抱しながらマナがシンジを気遣う。

「いやぁ...そんなことないよ...いつも、こいつには世話になってるし...」

といって、シンジはマナの膝の上で寝ているムサシを見て、マナに微笑む。

「とても...お似合いだよ...」

マナは頬を赤らめる。酒のせいではない事も自覚していた。

マナは慌てて話題を変える。

「...あ、アスカさん...は今頃どうしてるのかしらね....」

シンジの顔に翳りが浮かぶ...

マナは舞い上がってとんでもない事を口走った事を後悔した。

「..........」

「ご....ごめんなさい....わ...私....」

マナは俯いてしまった。

「アスカは...きっと元気に暮らしてるよ!」

「えっ?」

見上げたマナの前に、シンジがこれ以上ないという位の微笑みをたたえて座っている。

「だから、僕はアスカを迎えに行かなきゃならない。そのために....僕はパイロットになるって決めたんだ。」

「...シンジ....」

「アスカがどこに居ようと、どこへでも駆けつけられるために....」

マナはシンジの瞳の中に強い決意を垣間みたような気がした。

「アスカさん...」

マナはようやく口を開く。

「幸せな人よね...だって、シンジにここまで想われてるなんて...」

シンジは嬉しそうに微笑んだ。

「じゃぁ、マナ。ムサシの事頼んだよ。」

「うん!またね、シンジ!」

「おやすみー♪」

笑顔でムサシ達と別れたシンジは酔い覚ましのため、宿舎への道を歩いて帰った。

それほど酒の強くないシンジはちょっとしか飲んでいなかったが、顔の火照りは感じていた。

誰も居ない通り....

月の明かりが煌々と照らしつける。

「空がきれいだよ...」

夜空を見上げ、この世界のどこかに居るであろう存在にシンジは語りかける。

「この空はどこまでも繋がってるんだ。君の所にも....だから...僕は寂しくない...」

そう言ったシンジの視界はどういう訳か滲んでいく。

「...アレッ...何でだろう....おかしいな...」

シンジの言葉とは裏腹に涙が頬を伝う...

...でも....

...寂しい...

...アスカに...

...逢いたい...

...あの時言えなかったことを...

...アスカに...

...伝えたい...

シンジはポケットから、クシャクシャになった煙草を取り出し、火をつけた。

それは、数年前アスカが憧れた男が愛好していたものと同じ銘柄だった。

ポケットに手をつっこみ、月明かりの下をコツコツと歩く音が響く...

たなびく紫煙だけを残して...


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1999-3/22作成
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どうも、こんにちは! VOL.3をお届けしました。

当SSは、シリアスLASストーリーです。

パイロットになったシンジ...想いはアスカの下へ...

でも、暗いですね...

そんなシンジを尻目にイチャつくマナとムサシ...

次話は、現在のアスカにスポットがあたります...

それでは、またお会いしましょう。